少女は異形のものとともに

正体不明の素人物書き

第1話 私の最愛の彼は異形のもの

「温かい…」

19歳の私は今、地下にあるお風呂場で愛しい彼を抱いている。

彼は私と一つになっている。つまり、私は彼と愛し合っているのだ。

「いいよ…もっと私のこと、抱いて…」

彼の手は、常に粘液でべとべとしていた。

でも、そのべとべとした手は、私の体に巻いたタオルの上からでも暖かくて、本当に気持ちよかった。

「遠慮しなくていいのよ?私は、あなたを愛してるから。だから、もっと私を求めて…」

言いながら、彼を抱き寄せて、両手だけじゃなく、両足でも抱き寄せて離れないようにした。

「異形の者だからって、気にすることないのよ?」


そう。私が愛しく抱いている彼は、人間ではなく、例えようのない異形の者なのだ。


彼はずっと、タコみたいにねちょねちょした手で、私の体をべとべとにしている。

普通は嫌なのかもしれないけど、私はこの感触がたまらなく好きなのだ。

私はまた、ぐにょぐにょしてる彼を抱き寄せた。

彼は手だけではなく、全身が常に粘液でべとべとだった。

でも、そのべとべとも愛しく感じる。

私は毎日、お風呂で彼を抱いている。それでも足りないぐらいだ。

「もっと抱かせて? キスしよ?」

言いながら、彼の頭を両腕でがっちり固定すると、私は彼の口に、深い愛情を込めた熱いキスをした。

彼は4本の腕を私の背中に回し、私を温かく包み込むように抱いてくれた。

「温かい…そのまま抱いてて…」

そしてまた私は、彼の口に熱いキスをした。


気が付いたときには、私はいつの間にかバスタオルにくるまった状態でベッドにいた。

それも、愛しい彼と手をつないだ状態で、そのまま寝た。


翌日の晴れた朝。

起きて着替えた私は、彼に会いに行った。

「おはよう。あなた」

言いながら、抱き着いてキスをする。

「…愛してるわ…」

これが私の毎朝の習慣だった。

私の愛情を表現するには、これでも全然足りなかった。


ふと私は、小さい頃のことを思い出した。

彼と初めて会ったのは、私が6歳になる少し前だった。

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