27
「真澄と過ごした一日は、あっという間に過ぎた。オレはすぐに戻された。このクソッタレな現実に」
才藤の目は虚ろだ。自堕落に弛んだ躰といい、ゼロ課で活躍した彼はもう居ない。
ハナシがどう続くかは想像がつく。才藤は取引を提案され、それに乗った。責める気はない。といって、自由にさせる気もない。
「教団の言いなりになれば、HEAVEN で真澄サンと暮らせるわけか」
「一度あそこで暮らしたら、もう何処にも行けねえ…… オマエも来いよ。一緒に幸せになろうぜ」
そこには家族が居るのだ──とシュウは思う。惨殺された両親と妹が。
HEAVENに転移すれば、きっと彼らは笑顔を咲かせて迎えてくれるだろう。もっとも、こちらは記憶から合成されるイミテーションになるが──
「ビットで組み立てられた家族に、用はないよ。そんな事もわからなくなっちまったのかい、アンタ」
「オレたちはこうして向き合っている。このシーンは現実だと思うか?」
シュウは怪訝に眉をひそめる。
「オレたちは二人とも、既にHELLの側に取り込まれていて、こうして無間地獄の戦いに明け暮れている。その可能性は無いのか? 大いにあり得るだろう。実際、どれが現実かなど、どうでもいい事だ」
「オレは、どの世界に立っていようと、同じ事をする。力で支配するヤツらをぶちのめす。そうしないと気が済まないんだ」
ふっ、と才藤の口が嗤った。「それじゃ生きていけねぇんだよ」
「〈Wake up !〉はどうなった?」
「オレの手引きで、教団から使徒兵団が突入したはずだ」
「公安の仕事じゃないのか?」
「この辺りは法治外だからな、警察は寄りつかん」
皆殺しか。コクマーの顔がよぎった。
「ほら、軽蔑しろよ」
「アンタはもうオレの知っている人じゃない。知らない人のことはどうでもいい」
「そうかい。じゃあ、ボチボチいくぜ、景宮」才藤の目が鈍く光る。
対峙するブーステッドマン二人は、同時に高速の世界へ跳んだ。
空気の抵抗が増し、重く粘る油と化す。認識速度も
才藤もカマイタチの使い手だ。手刀の表面に衝撃波が生まれ、陽炎のように揺らめく。
一直線に斬り込んでくる。防御無用の真っ向勝負だ。最初の交叉で勝敗は決す。
才藤の
──どうして!
心臓を外したはずの突きに、才藤は自ら心臓を差し出したのだ。
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