幕間3
【幕間3】
「どうしてよ」
少女は鏡に向かって嘆いた。
「全ては万事順調ではなかったの? 私を一番にしてくれるというから力を貸していたのに」
「東の少女を甘く見ていました。まさか黒龍を身に宿してなおあれほどの働きをするとは。南の男も私の見込みが外れてしまった」
「黒龍? な、何を言ってるの?」
鏡の中に映る銀髪の女性は、鏡を鷲掴みにする少女を見つめる。
「このままでは私の身体が持たない……我がプリンセス、最後の力を私に」
「どうするつもり?」
銀髪の女性は鏡の裏側から少女の方へと手を伸ばす。
「こうなれば手は一つ。直接東の少女に接触し……必ずやあなたの国の『一番』にして差し上げます。さあプリンセス、手をこちらに」
少女は、鏡の中の女性の目が怪しく光っていることに気づかない。
「一番に……」
それどころかとろんとした目心地よさそうな目になり、鏡の方へと手を伸ばす。
「ブロンドの髪に白い肌……生まれ持った美貌についたあだ名は『白雪姫』。しかしそんな美貌をもってしてもあなたは『一番』になれない」
鏡越しに二人の手が重なる。
「ああ、なんて不幸なプリンセス」
鏡の中の女性が一際低い声で囁いた途端、少女は鏡に手を置いたままガクリと脱力した。
暫く蹲った後、ようやく身体を持ち上げた少女は鏡に映った自分の姿を確認する。
「くくく……」
先ほどまで一切見せなかった、容姿に見合わない不気味な笑み。瞳が一瞬だけ赤く光り、すぐに消える。
鏡の中の女性の姿は消えており、少女は自分の手や顔を鏡に映して確認した。
「この魔力と憎しみに満ち溢れた身体……ゾクゾクする。幼いころから調教した甲斐があったというものだ」
興奮からか涎が落ち、床に零れる。少女はそれを踏みつけるようにして立ち上がった。
「ふふ、お前の望みなど端からどうでもいい。必ずや身体を全て集め……この王国を元の形に戻すのだ」
不気味な笑い声が薄暗い部屋の中に響き渡った。
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