第47話 辺境伯の跡継ぎ
無事、バルバギア王国と和平条約を正式に提携する事が決まった。
その中でも最も功績を残したと言うべきか、弟のカイルがバルバギア王国に残っている間、バルバギア王国について沢山感じ、沢山学んだ事を、インハイム辺境伯領に戻った際に領民達や貴族、お父様に熱心に説明した事で、今まで冷え切っていた両国の関係は徐々に解け始めた。
さらにジアリス産農作物の流出量が依然と比べて爆増した事により、両国の食卓がますます豊かになり始めた。
ジアリス産農作物は美味しさから考えれば、とんでもなく高額になるはずなんだけど、僕の意向により、価格はぐっと抑えられ誰でも楽しめる農作物になった。
ただ、どうしても全員に渡って欲しいという想いがあるので、購入は一人に付き、点数制限を設けてもらった。
これならより多くの人に渡る事になるからね。
爺の提案で、もし転売をするような輩がいた場合、極刑に近い法律を作り事となり、バルバギア王国も交流を持つために同じ法律を作り、両国が同じ法律を同じに制定し、仲の良さをアピールする形となった。
それから暫く日々が過ぎた。
季節は少し寒くなる冬を通り過ぎる。
雪が全く降らず、ただ寒くなるだけなので、冬の間も農作物を作り続けられた。
ただ、肌寒い日々のおかげで、暖かい食べ物が恋しい時期でもあり、中でもキャベツはスープにする事でとっても美味しい事が発明され、両国に一気に広まった。
ジアリス産キャベツでしか作れないけど、とても美味しくてすぐに大人気となったりした。
そんな寒い季節が数か月で終わり、暖かい日々がやってきた。
そして、我々インハイム辺境伯領では大きな事件が起きようとしていた。
今日はお父様に呼ばれてソウレイン都にやってきた。
「よく来てくれた。キャンバルよ」
「ご無沙汰しております」
「…………息子よ。少し冷たくないか?」
「えっ!? い、いや、こういうのはこんな感じがいいかな~って」
「がーはははっ! 気にすることはない。いつも通りで構わん」
「ほえ~」
さすがにお父様に僕がゆるゆるなのがバレた。
あれから普通に接して欲しいと何度も言われていたりする。
「お父様? 今日はどうしたんですか? それにカイルとカインも」
一緒に呼ばれたのか、僕の右手にカイル、左手にカインも一緒にお父様の前に並んでいる。
「うむ。今日はインハイム家の重大な発表がある」
「重大な発表…………なんだか嫌な予感が…………帰っちゃダメですか?」
「ダメに決まっておろ! キャンバル! お前を――――正式にインハイム辺境伯の跡取りとする!」
「ええええ!? それってカイルにするって言ったじゃないですか!」
そう。
実は辺境伯の座はやっぱりカイルにしてもらうことになった。
元々人気があるし、カイルが戦争したがりだと思っていたから、僕が辺境伯になってもいいなと思っただけで、今のカイルはとても優しくて良い領主になってくれると思う。
これに関してはずっとお父様と相談しているのに、どうしてカイルじゃなくて僕?
「兄上。すまない」
「えっ?」
「実はな。俺には夢ができてしまった」
「ゆ、夢?」
その笑顔。少し怖いよ?
「実はな……恥ずかしい話、俺は…………カトリーナ陛下に惚れてしまったんだ」
「ええええ!?」
「いまでも手紙をやり取りしているのだが…………」
「ええええ!?」
「俺が向こうに嫁ぐことにした!」
「ええええ!?」
驚き、さらに驚き、もっと驚き、次はどう驚いていいか分からない。
「ええええ!?」
大事な事なので、もう一回驚く。
「だから、兄上! すまないが辺境伯になってくれ! 俺はバルバギア王国に行く!」
「そ、そんな! じゃあ、カインは?」
僕は助け舟を弟のカインに送る。
が、その笑顔。少し怖いよ?
「兄上。すまない。俺は辺境伯にはなれない」
「あ、あの、ど、どうしてかな?」
「俺は――――エステル令嬢と婚約したいと思っている。正式的に婚約も申し込んでいて、向こうからも良き返事を貰っている。我が国は隣国から妻を迎えた男は辺境伯になれないという法があるのだ」
「ええええ!? そ、そんな法が!?」
気のせいなのか、カイルとお父様がクスクスと笑っている。
「だから、兄上。辺境伯は任せた」
「そ、そんなぁ…………」
「ごほん。キャンバル。そういう事だ。二人ともバルバギア王国の大事な方々との婚約がある。それに最近は領内の人気はキャンバルが一番人気だからな。ジアリス産農作物が大人気だし、あの地が最近一番行きたいと思う観光地になっているからな。アクア様も見られるし、キャンバルが考えた【りぞーとほてる】は最高だからな~! がーはははっ!」
広くなった土地にお客様が増えてきたから、彼らのためにホテルと作ったんだけど、せっかくならゆっくり過ごせるホテルがいいなと思って、昔、本で読んだリゾートホテルを真似して色々作った。
それが今ではジアリス街の東の山の上に建てられ、中々素晴らしい景色が見えたりする。
アクア様は何故か力が漲るらしくて、もう何倍にも広くなったジアリス街ですら、その力を発揮していて、魔物が一切寄り付かないままである。
「うう…………仕方ない……ですよね…………」
僕がガクッと肩を落とすと、三人ども豪快に笑って僕の肩を叩いて「頑張って!」と言ってくれた。
こうなったら最後の希望、爺に丸投げを発動する!
数分後。
「キャンバル様。これから毎日辺境伯は何か、勉強と参ります」
「はい…………」
どうやらそう甘くなかったみたい。
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