第34話 白銀商会の本気
「セバス様。此度は大変申し訳ございませんでした」
ハーミットさんともう一人の男はその場で土下座をして頭を地面に擦り付けた。
「事情はグレインから聞いております。まさかそのような事になっているとは知らず、彼に全てを任せていた私めの責任でございます」
「ハーミット殿。彼は、あろう事かキャンバル様の命を狙いました。この意味分かっていますよね?」
「存じております。アギル」
執事服の人が土下座のまま、小さな宝石箱のような箱を両手を前に出した。
「こちらは商会の権利
権利証!?
爺と頷いてアイコンタクトをしたベリルが箱を開けて中身を確認する。
「間違いない。権利証だ」
「権利証は確認できました」
「かしこまりました。この度のキャンバル様の暗殺を企てを未然に防ぐ事ができず、大変申し訳ございませんでした」
神妙な表情で起き上がった二人は――――懐から短い刃物を取り出した。
そして――――――その場で何の迷いもなく、その刃物を自身の首に突き刺した。
「「っ!?」」
けれど、その刃物は二人の首を貫く事はできなかった。
なぜなら、ベリルの闇魔法によって首に当たる寸前で止まったからだ。
「間違いない。本気だった」
「そうですか。では今回の暗殺は白銀商会ではなく、彼本人が企てたモノになりますね」
二人は目を見開いて、何が起きているのか理解できないように爺とベリルを交互に見つめ直した。
「セレナ」
「はいっ」
セレナがゆっくりと向かい、二人の手から刃物を取り出した。
二人はベリルの闇魔法で全身を動けなくさせている。
「こちらに」
二つの刃物を渡されて、その刃物が本物である事を確認する。
これでハーミットさん達の
「爺。ベリル。もう良い」
「「はっ」」
ベリルの魔法が解けたのか、二人が動き始める。
二人ともその場で何が起きたのか理解できないようにただただ僕を見つめてきた。
僕は深く被っていたフードを取る。
「!?」
「初めまして。俺はキャンバル・インハイムという」
「なっ!? キャンバル様!?」
信じられなさそうに僕を見つめた。
まあ…………凄く痩せているからね!
「今回は白銀商会はインハイム家に背いていたのか試させて貰った。
「い、いいえ! こちらこそ、当社の者があろうことかキャンバル様に刃を向けた事、心よりお詫び申し上げます!」
またもや二人が地面に頭を擦り付ける。
余程驚いたのか地面に頭をぶつけた時、痛そうな音が響く程だった。
「謝罪は受け取ろう。其方達も
「従業員の不徳は私の不徳ですゆえ…………」
「…………分かった。その心意気しかと受け取る。ここから商談としこうではないか。ハーミット」
「!? ……………………一度、貴方様に刃を向けた白銀商会を信用してくださると……?」
「ふふっ。そうだとも。こう見えても俺は人を見る
「っ!? い、いいえ! これから白銀商会並び総帥のこのハーミット。全力で殿下の力になりましょう!」
「ああ。心強い味方が増えたものだ」
僕が手で合図を送ると姿勢を正してゆっくりと僕達の向かいのソファに座り込んだ。
「まず、権利証は返そう」
「っ!?」
「そのような権利証を持っていても、白銀商会を正しく導く事は俺には難しい。その任は――――ハーミット。其方が適任だ」
「かしこまり……ましたっ…………」
ハーミットの目に涙が浮かんだが、決意を決めたように拳を握りしめた。
「では交渉は、こちらのセレナに任せよう」
「初めまして。キャンバル様の財政管理をしているセレナと申します。よろしくお願いします」
「こちらこそ、セレナ様。よろしくお願い致します」
少なくとも、セレナちゃんを一目で
それくらいハーミットさんは優秀だと爺から教えて貰っている。
僕が硬い言葉で話すのも、そんなハーミットさんを騙すためでもあるが、果たしてうまく騙せているかは分からない。
でも爺からのせっかくの提案なんだから、頑張って演技を続ける事にする。
領主たる者。どーんって構えて座っているだけでいい! ね!
それから暫くセレナちゃんとハーミットの交渉が続いた。
全面的にハーミットが折れる形で何でも聞いてくれるが、白銀商会が決して
そうして新しい契約など、ジアリス町と白銀商会の新しい契約の提携が終わり、帰る間際。
ハーミットから小さく「殿下が立派になられて本当に嬉しく思います」と言われた。
最初は意味が分からなかったけど、白銀商会を後にして、都内のお城に向かう間に爺から「キャンバル様の演技。バレましたね」と言われた。
むむむ…………威厳ある領主様って難しいなぁ…………。
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