第17話 新しい住民?住神?
「アクア様。もう一つ食べられますか?」
「うん! 食べる~!」
噴水の中から身体を半分外に出して、キラキラした瞳でもっと魔石を頂戴という視線でセレナちゃんに訴えているのは、真っ白いクジラのアクア様だ。
僕が初めて会った時はものすごく大きな身体だったけど、今は僕の腕くらいの大きさしかない。
そんなアクア様が開いた口の中に、セレナちゃんが魔石をひょいと投げ込むと、パクっと食べてむしゃむしゃ食べ始めた。
ごりごりって魔石が粉砕される音が響くけど、アクア様が可愛らしいのであまり気にならない。
「アクア様。外に出て良かったんですか?」
「う~ん。おいらも初めてやったけど、本体を残して分体で出て見たんだよ~ちゃんとできた~!」
「それは良かったです。これから魔石を食べたくなったら出て来てくださいね?」
「わかった~でも暫くここにいるのだ~」
「噴水で住まわれますか?」
「うん~!」
そんなアクア様の頭を優しく撫でるセレナちゃん。
その姿を見て、セバスお爺さんの顔が真っ青になるけど、当のアクア様本人は気持ちよさそうに笑う。
クジラって…………笑うとあんな感じになるんだね。
「アクア様」
「お~バルちゃん~魔石ありがと~」
「いえいえ~! セレナちゃん。これからアクア様の魔石食べさせる係する?」
「えっ!? やります! やらせてください!」
セレナちゃんもいいみたいでよかった。
「アクア様~? 魔石ってどれくらい食べられるんですか?」
「う~ん。今の魔石なら毎日20個くらい食べたいかな~」
「それなら今日の分は間に合いそうですね」
昨日は魔石30個集めているから十分そうだ。
そういえば、特別個体の魔石もあったね。
「アクア様。この魔石も食べられますか? ジェラルドさん曰く、数年に一回しか取れないみたいですよ~」
「おお~! 皇魔石じゃ~! 食べたい!」
他の魔石よりも大きいし、光り方も違うので特別な魔石なのは一目で分かる。名前は皇魔石と言うみたいだ。
「アクア様? 約束は守ってくださいね!」
「いいよ~でも一つだけ条件があるよ~」
「条件?」
「実は神というのは、自らの意志で恵を与えることはできないんだよ~だからね。君達が祈りを捧げてくれないと恵を与えられないから祈りを捧げて欲しいのだ~」
祈りって手を合わせて神様にお願い事をするあれか。
よく母さんもやっていたっけ。
「分かりました~それって僕だけでもいいんですか~?」
「そうだね~必要な人が必要なモノを祈ってくれればいいよ~この町はバルくんの町なのでしょう?」
「そうです~」
「ならこの町の町民達の祈りは聞いてあげるね~」
「ありがとうございます!」
これなら僕だけでなく、町民達が必要な時に、必要なモノをお願いできる。
アクア様がジアリス町に住んでくれるのは、とても嬉しい事だ。
「じゃあ、さっそく…………アレクお兄ちゃんが話していた美味しい果物を育てられる土地が欲しいです~」
「わかった~! その願い、聞き届けよう~」
アクア様の全身から淡い青色の光が周囲にあふれ、まるで水の中にいるかと錯覚するように広がっていく。
数秒後、光りが止むと、ジアリス町の至る場所が土地が目に見えて凄く元気な土地に生まれ変わった。
「元々良質な土地なんだけど、水がなくて枯れてたみたいだね~これなら町を少し広げられそうだよ~」
「どれくらい広げられますか?」
「あそこの岩くらいまでなら~」
アクア様が指差す…………ヒレ指す? 場所に大きな岩があって、大体町が倍くらい大きくなる感じだ。
「分かりました! 壁を向こうまで広げますので、その時はお願いします!」
「あいわかった~」
「それとこれ、特別な魔石です」
「わ~い~! 皇魔石なんていうご馳走なんて凄い久しぶりだ~!」
皇魔石をアクア様に食べさせると、嬉しそうに尻尾をぶんぶん回して喜んでくれた。
ただ、おかげで周囲が水浸しになったけど、嬉しそうなアクア様を見て、僕達もどこか幸せな気持ちになった。
それから僕は魔法を使って元々あった壁を囲む形で壁を立てた。
セバスお爺さんから教わったいろんな魔法の中でも、大地魔法は六大属性の中でも珍しい属性らしくて、こういった建築によく使われてるそうだ。
習った通りに、土を盛り上がらせて硬く凝縮させてブロックにしていく。
本来なら作ったブロックを組み立てる必要があるんだけど、僕は壁を作るついでにブロック状にしているので組み立てる必要はなく、ただ時間をかけて壁を作るだけだった。
その日は僕が使える魔力の量でできる範囲で壁を作った。
こんな感じからすると、あと100日もあれば壁が完成しそうだね!
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