第11話 全属性魔法適正
「わああああ! 光がいっぱい! あれ? でも色がいっぱいありすぎて、どういう属性なのか分からないよ~! セバスお爺さん! 助けてぇえええ!」
「き、キャンバル様!!」
ジェラルドさんが持ってきてくれた魔力の水晶というモノで、魔力を流す事で光が出て来て、その色で属性が分かるというモノだ。
光が出て来たんだから、僕も魔法が使えるのかな?
でも色が多すぎてよく分からないし、光が眩し過ぎてどうしていいか分からなくてセバスお爺さんを呼んでしまった。
急いで来てくれて水晶を身体全身で抱き抱え、僕の腕を離してくれた。
ようやく光が消えて、その場に倒れるように座り込んだ。
ポーションの値段を聞いた時もだったけど、
「キャンバル様! どこか痛むところがございますか!?」
初めて見るセバスお爺さんの慌てる顔に、どうしてか嬉しくなっちゃって笑みが零れてしまう。
「驚いただけです! ほら、僕はこんな感じで元気ですよ~」
両腕をぐるぐる回してみせると、セバスお爺さんが安堵の息を吐いてようやく落ち着きを取り戻した。
ただ、隣で何かをブツブツ言っているジェラルドさんが怖い。
「ジェラルドさん?」
「キャンバル様…………ど、どうしましょう…………」
「えっと?」
「どうやら…………キャンバル様は…………全属性が使える……よう……でして…………」
ジェラルドさんは、「いま、俺は何を言っているんだ?」みたいな顔で焦点の合わない瞳をぐるぐる動かしながら震えている。
「ジェラルド!」
「はっ! す、すまない。セバスさん」
「…………ここで見た事は全て秘密だ。いいな?」
「ああ。分かった」
「それで、見られた色はどれくらいの数だった?」
「それが――――――全部だった。9つの色全てあったぞ」
「なっ!?」
落ち着いたセバスお爺さんも驚きすぎて、その場で足を崩して座り込んで、ジェラルドさんも座り込んだ。
何だかみんなで地べたに座るのは初めてでワクワクする!
「キャンバル様…………文献では…………今まで5つの属性を使える人までしかいないと伝えられています。全ての属性が使える人は…………恐らくキャンバル様が初めてでございます」
「ほえ~凄い事なのですか? やった~!」
きっと喜んでいい事なんだと思うから、やってみたかった「やった~!」をやってみる。
「やった~!」
二回目。
そんな僕を見ていたセバスお爺さんとジェラルドさんがクスっと笑った。
その笑いに釣られて僕も笑って、三人で大笑いした。
◇
今まであまり語る事をしなかったセバスお爺さんが、珍しく魔法について色々教えてくれた。
教える事が多いからと言って、数日間勉強会となったけど、その間にジェラルドと一緒に走ったりも続けている。
僕に魔法の適正があった事を知った日から一週間後。
キャンバルさんの太っていた身体が少しスリムになってきた気がする。
セバスお爺さんのおかげで、魔法についてやインハイム家についても色々教えて貰えた。
勉強は想像していた以上に楽しくて、セバスお爺さんが本を読んでくれたり、文字を書いて説明してくれたり、絵を描いて説明してくれたりと、たった一週間だけどとても多くを知る事ができた。
まず魔法。
自分の魔力を感じる事ができて分かった事は、魔力というのは、その人の心臓の部分から溢れるエネルギーみたいなモノで、普段は目にする事ができないけど、不思議と魔力を感じる事ができる。
普段魔力は心臓に集まっているけど、魔法を使う時は腕を通して外に放出される感じだ。
魔法は魔法を放つための呪文があるみたいで、魔力を魔法に変換するための儀式みたいなものだと教わったけど、僕は呪文なんていらずに、好きな感じでポンポン出せた。
セバスお爺さんから「まさか……最初から無詠唱に到達…………」と驚いていたけど、使えるんだからいいか~なくらいしか思わなかった。
最初は簡単な弱い魔法から一通り使ってみて、色々使える事が分かり、回復魔法にも挑戦して見事に成功した。
料理で傷が絶えないアレクお兄さんを実験台に治してあげたら、ものすごく感謝されたんだけど、むしろ毎日美味しいご飯を作ってくれるアレクお兄さんのためになって嬉しい。
次にインハイム家なんだけど、キャンバルさんの実家でいずれ僕もお父さんに会う事になるかも知れないとの事。
この世界には貴族というものがあって、インハイム家はその中でもかなり上の辺境伯という位で、大袈裟に言うと王様の次にお偉いさんで、王様でも自由にできないという意味ではものすごく凄い人との事だ。
そして、貴族位は長男が継ぐのが習わしのようで、このままでは僕がインハイム家を継いで辺境伯にならないといけないとのことだ。
ジアリス町に送られたのも、
バロンくんのお父さんにケガを負わせた事。
今まで町民達が綺麗な服や靴を着れない事。
そのどれもがキャンバルさんに関わっている。
でも僕にそんな難しい事はよく分からないので、これからは僕の魔法とか使って色々手伝いができたらいいなと思う。
これで夢だった母さんの家事を手伝うという事が体験できるかも知れない。
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