荒れ地の領主となった悪徳令息に転生した子供はわがままにやりたい事をやる
御峰。
第1話 キャンバル・インハイム
「誰か……水を…………」
熱でうなされている俺様の部屋には誰一人現れやしない。
既に熱を出して二日。
あのゴミのようなメイド達や執事が現れる事はない。
このまま病気で俺様を殺すつもりか…………くそ…………あの親父からこんなクソ田舎に送られて2年。
絶対ここから復讐してやると思ったのに…………俺は何もできずに、配下に見捨てられてここで死ぬのか。
ちくしょ……………………もっと…………優しく…………すれば……よ………………った。
◆
「誠也…………」
「かあ……さん?」
「ええ。母さんよ」
「…………」
息が苦しい……。きっと母さんが言っていた僕の病気が酷くなったんだ。
僕は鈴木誠也。8歳。
幼い頃から不治の病というのに掛かって、ずっと病院のベッドで生きている。
いつか母さんと一緒に公園で遊びたいと思っていたのに、いつになるのか分からない。
「誠也……ごめんね? 丈夫な体に産んであげられなくて…………」
「母さん…………公園…………一緒に…………」
いつもならもっと喋れるのに、今日は声を出すのも難しい。
母さんが言っていた小学校というのにも行ってみたかったし、公園にも行ってみたかったし、一度も行った事がない、うちの家にも行ってみたい。
行きたいところが沢山あるから、病気が治ったら楽しみがいっぱい。
でもどうしてか母さんが泣き始めた。
少しずつ母さんの声が遠くなって――――何も聞こえなくなった。
◆
あ、熱い…………えっと…………布団の中?
なんかいつもの薄い布団と違う分厚い布団を除けて起き上がる。いつもと違ってすんなり起き上がれた。
というか、少し熱いけど、身体がものすごく軽いけど重い。
周りをみてみると真っ白な病院の部屋とは全く違う部屋に移されていた。
あれ? もしかして、ここってうちの家なのかな?
ベッドから降りて起き上がってみる。
いつも腕に繋がれている点滴っていうのがない? あれ? あれ? 簡単に起きられる?
ベッドの下には凄く高そうなスリッパが置いてあって、履いてみると凄く温かくて履き心地は抜群だ。
そもそも普段から少し固いスリッパしか履けなかったので、とても新鮮だ。
ゆっくり部屋を歩き回って思いのは、何だかいつもより視界が広い。というか、高い。
両手も両足もいつもより大きく見える?
部屋中を探索していると、大きな鏡があったから、覗いてみた。
「えええええええええええ! 誰!?」
思わず叫んでしまったけど、鏡に映っているのは、いつもニット帽をかぶってやつれた顔ではなく――――金髪でめちゃくちゃふくよかな――――いや、ただのデブじゃん。
自分の顔を触ってみると確かな感触があって…………僕…………いつの間にデブになっちゃったの?
鏡を見ながら顔やら身体を触っていると、バタバタと音が聞こえて、扉が開いた。
そこには驚く表情のお爺さんとおばさん達が数人、部屋の中を覗いた。
「!? きゃ、キャンバル様…………お、起きられたのですね…………」
「?」
何だか絵本とかに出て来るような執事とかメイドの服を着ているけど、少なくともうちの母さんではないのは確かだ。
「あの~」
「は、はいっ!」
「えっと、うちの母さんはどこですか?」
「えっ? きゃ、キャンバル様? 奥方様は…………」
「??」
「もう亡くなっていらっしゃるのですよ?」
えっ!? か、母さんが…………亡くなった!?
「またまた~お爺さん。うちの母さんが亡くなっているなんて、そんなわけないじゃん~」
「キャンバル様! お気を確かに! 貴方様の母上様は…………貴方を産んだ時に亡くなっております!」
「えっ? キャンバル?」
「自分の名前を憶えておりますか?」
「僕の名前ですか? もちろん――――――
鈴木誠也ですよ?」
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