薬草採取家の達人ハーブマスターになりたい!!

滝川 海老郎

1章 少女エミルとハイポーション

1.属性判定の儀

 私、エミル・フォンデートは薬草採取が大好き。

 金髪碧眼のヒューマンの女の子として生まれて8年。

 新緑の春の季節の生まれで、先日誕生日を祝ったところだった。


 えらい人によるとエシスシメシトルという世界のアマリア大陸にある、メッシュリア王国。

 その第3都市エルドリード。


 北半球でも温暖で川もあり草原が広がっているこの都市は薬草の一大産地だ。

 とはいっても有名なのはずばり「薬草」と呼ばれているヒール草だけ。

 この乾燥ヒール草と、それを使用したポーションがこの地域の特産で、周辺都市や一部は国境を越えて、隣の国まで流通しているという話だった。


 そういう話を聞きかじり、ロマンを感じた私はその薬草に興味を持った。

 小さいころからお母さんに連れられて草原の薬草を採取するお仕事も、嫌がることもなく淡々とこなしてきたらしい。

 薬草が好きになった今では、薬草採取が生きがいと言ってもよかった。


「はぁ、今日もいっぱいヒール草が採れたね」

「エミルは薬草採取が得意だものね」

「うん」


 今日もお母さんのメルナと一緒に、背負い籠いっぱいに取った薬草を背負って帰ってきた。

 冒険者ギルドに寄って、薬草を買取してもらう。


「はい、全部で大銅貨5枚です」

「ありがとうございました」


 銅貨1枚100パソ、大銅貨が千パソ。

 半銀貨が5千パソ、銀貨が1万パソ、大銀貨が10万パソ。

 半金貨が50万パソ、金貨が100万パソ。


 一番安いホーンラビットの肉串が100パソ。

 黒パン1つで200パソ。

 ちょっと高級な飲食店の料理が2000パソ。

 安い宿屋、朝夕付きで同じく2000パソ。


 たぶんこんな感じだと思う。

 ちなみになんでかは知らないけど、10パソや1パソという通貨はない。

 半銀貨と半金貨は流通量が少なくて、あまり使われていないらしい。


「エミルは誕生日を過ぎたから、明日の日曜日、属性判定の儀よね」


 お母さんが笑顔を浮かべて確認してくる。


「うん、お母さん」

「それじゃあ、一番いい服を着て、教会に行きましょうね」

「うんっ」


 その日はそわそわしてなかなか寝付けなかったけど、そのうちなんとか眠ることができた。


 日曜日の朝。


 朝ごはんを食べ終わり、お気に入りの一張羅である水色と白のワンピースを着て近所の教会に行く。

 教会の日曜朝のミサに参加する。

 普段はあまりミサには行かないんだけど、属性判定をする子は慣例としてミサに参加することが決まっているのだ。


 お祈りをして、神父様の難しい説法の話を聞く。

 なんとかミサが終了した。


 関係のない普段からミサにくる熱心な信者さんたちは帰っていく。

 残されたのは、子供と親が10組くらいだろうか。


「それでは、今から判定の儀を行いますので、儀式場にお越しください」


 ミサがおこなわれる礼拝堂とは別室に儀式場という部屋があった。

 小部屋で外側の上には明かり取りの小窓がある。

 そして窓の下には、女神様エシス様の立派な像があった。


「この像、素敵」


 エシス様の像は背後からの光を受けて、白いベースに赤や緑の色が塗られていて、とても美しく見えた。

 礼拝堂のほうは、ステンドグラスはあるものの、下にあるエシス様の像は白一色のシンプルな物が使われていた。

 この違いはなんだろうと考えていたら、自分の番になっていたらしい。

 中年の偉いのだろう男性神官にジッと見られていた。


「それでは次の方。お名前は?」

「エミル・フォンデートです。よろしくお願いします」

「それではこちらの水晶玉に手をかざしてください」

「はい――ふぁ」


 水晶玉にかすかに魔力を吸い取られていくのを感じる。


「赤、青、それからおおぉ銀が少し、これは珍しいです」

「そうなのですか?」

「エミル嬢の魔力は多いようです。属性は火が5、水が7、それから、なのですが、聖属性がありまして、それが4といったところです」


 火5、水7、聖4。

 それぞれ適性は0から10の数字で表される。

 水晶玉の中にカラフルな雲が渦巻いていて、その量で決まるのだ。

 他には風、土、闇があるけれど、それは1か2くらい光っているように見える。

 まったくの0という子は少ない。

 1以下は、ないようなものなので、こういう場所では無視される。


「ありがとうございます」

「聖属性を見るのは、そうですね、1年に1、2人でしょうか。それから聖属性とほかの属性両方を持っている子は、ここ5年で1人いるかどうかです」

「そうなのですね」


 男性神官は私を頭のてっぺんから足先まで舐めるように眺めてくる。

 私を品定めしているらしい。


「とても、珍しいです、大事にしてください。教会でもお務めできますよ。是非に。なにかありましたらご相談ください」

「本当に、ありがとうございました」


 さらりと教会でのお仕事を勧められたけど、挨拶だけしておく。

 教会での勤務はあまり、その言いにくいけど、自分の趣味ではないもの。

 やっぱりやりたいことといえば、薬草に関する仕事がいい。

 人を癒やすという意味ではどちらも同じだけど、ポーションなら誰でも使うことができるもの。

 ポーションもお金は必要だけど、ものがあればどんな人でも誰にでも、使えるというのが、私はなんとなく好きなのだ。


 とにかく、こうして私には、魔法の属性があることが分かった。


 お母さんとるんるん気分で教会から帰宅する。


 この国では属性判定は8歳の誕生日を迎えた後にすることと決まっている。

 それ以前でも受けることは可能なのだそうだけど、魔力が安定していなくて、ころころ結果が変わるため、意味があまりないのだそうだ。


 ということで、私の属性は多いほうから水、火、聖だ。


 実はこの結果にはそれほど驚かない。

 水魔法は、こっそり使っていた。

 種火を付ける魔法もすでに使える。


 聖魔法はちょっと意外だった。別に私はドライではないけど、あまり神様、女神様の忠実なるシモベはやってないもの。


 あまりいい顔はされないけれど、属性判定前から魔法を使うことはできるのだ。

 ただ名前のある魔法がその時点で使えなくても、その属性を持っていることもあるので、判定してみない限り、自分の適性ははっきりは分からないということだった。


 ただいい意味で問題は「聖」魔法だ。

 いろいろ使い勝手がよく、重宝する。好奇心には勝てない。

 猫になって殺されちゃわないように、気をつけよう。



□◇□◇□─────────

 こんにちは。こんばんは。

 【ドラゴンノベルス小説コンテスト中編部門】参加作品です。

 他にも何作か参加していますので、もしご興味あれば覗いてみてください。

 よろしくお願いします。

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