2022.11.15


 走れーーーーっ!!

 あと少し、たった少しだ!

 あの三八度線を越えれば、俺たちは帰れる! 片足を失くしても止まるな! 生きて帰って、ソウルで買わされたよくわかんねえこの美顔石鹸持って、彼女にただいまって言うんだ、俺は……俺は……!



 愛の不時着って見たことないんだけど、落ちた飛行機が貧乏っちい日本人しか乗ってないジェットスターだったらこんな感じだろうか。


 貧乏なのでトイレットペーパー買いに行く道すがら、星空を見上げてお金に関する哲学みたいなものに思いを馳せていた。ちなみに私が漫画アプリで眺めてる異世界は資本主義的な世界が多そう。

 いうて大半は主人公が王族貴族の豪奢なお城で生活するので実際のところはよくわかんない。別に資本主義でも社会主義でもないけど、たまたま主人公の住んでるお城は特別で、古井戸に供物を投げ込むと湯水のように金が湧く設定なのかもしれない。そんな世界もまたよきかな。



「使い捨て」と呼ばれて自分に自信がないプリペイドカードちゃん。

「つーか、あたしお金じゃないし!」が口癖の陽キャだが、周囲から期待されアイデンティティを見失いかけている交通系電子マネー(兄弟が沢山いる)。

 文武両道の天才だが、天才すぎてなかなか他人に理解してもらない寂しがりやで、エネルギーが切れると突然無能になってしまうペイペイ&LINEペイ兄弟。

 バイト先でのレジ締めが速いことくらいしか特技はないが、なんだかんだ唯一無二の最強の存在、現金。


 笑って泣いて青春するついでにお金について真面目に考える、熱血お金学園を思いついたのに、推しメンコンテスト昨日で終わってた。でも相変わらず前向きな気分ではないんだ。だいたい万が一こんなのを長期連載化しろって言われても困るよ。


 以前からたまに思うこと。ちな、カウンセリングで相談しそびれたやつ。私はあんまり自分のことが大切じゃないのかもしれないということ。

 いや、それはそう。

 一体これまで何度死を覚悟したと思ってんだ。「命捨てるぞ!」つって。

 毎回生半可なやり方だったもんでたまたま生き残ってるけど、この世への未練を断ち切るって言うのは確実に何度かやってるから「よーし今日こそ死ぬぞ! えいっ」って実行に移した分だけ魂的な何かが減っちゃって、実はもう魂あんま残ってないのかもしれない。そういえばビルボが「パンに薄く薄く塗ったバターみたいな生」とか言ってた。それな。


 たぶん何でも死ぬ気でやるとダメなんだな。仮にそれでうまくいって生き残っても、意外とどっか死んでんだぜ。人間は生き物だから、生き伸びる気でやらないとダメなのよね。しらんけど。


 もしや自分のことがどうでもよくない人、こんなにあけっぴろげに日記とか書かないのだろうか。

 私は優しい人の真似をして人間社会を綱渡りしている。でも自分のことを大事にするというのは他人がどうやってんのだか見えないので、真似できないしうまくやりようがない。きっと誰よりも自分に優しくするのが一番難しい。


 あと好きな人を大事にするのも難しいな。

はい、ここにあらかじめ家族から沢山貰っといた愛情があります。これを真似して大事な人に降りかけたら大惨事である。日本人しか乗ってないジェットスターの旅客機が北朝鮮に不時着するレベルの大事故。

 で、こんなこと考えてたらいつの間にか愛の不時着日本版の妄想が始まったってワケ。


 それにしても「不時着」って漢字、意外と見慣れなくてびっくりしたんだが。私にとってはこんなん普段から書いてるでしょ~なんてフレンドリーな単語でもないし、思わずこの変換で合ってるのか別窓開いて確認しちゃった。

 不時着、もし突然手で書かなきゃない事態に陥ったら、たぶん「時」が書けなかったと思う。「不時」と「着」で分けて考えたことなかったけど、言われてみれば「不時」の「着陸」だからそれはそうなんよ。



 さっき、友人が絵を描く用でiPadを買うというので久しぶりに少しだけ話した。まあやっぱりApplepencilをぶっ刺す話は避けて通れないわけだけど、ジョブスはやっぱり機能美の感覚が鋭かったよね、て。


 私は昔から「無駄な部分こそが愛すべき美」という感覚があるので、モダンで洗練されたデザインが嫌いだけど、好きか嫌いかを抜きにして「なんでココこんな無駄なの!? 機能美って言葉を知らねえのか!!」てブチ切れワンダフルエモーショナルエクスプロージョン起こすことは多々ある。これは物理的ではないけど、コスモの規模で言えばアテナエクスクラメーションくらい強い。「ちくしょう、なんでだよ!!絶対こうはならんやろ!!」って気持ちはまあ誰しも強いものじゃん。


 天才的な便利道具を発明できないまでも、日本人は全体的に「普通こうだろ、だってこうしないとどう考えてもここが不便じゃん」という感度が高い。昔から傷みやすい木造住宅に住んでることや、家事に時間をかけること、平均的に生活空間が狭いことなども関係してるのかな。職場や工場ならともかくだけど、キッチンの動線とかめっちゃ気にするしな。


 機能美の感度が高い文化、世界的に見ればまったく当たり前に備わってる感覚ではないんだよね。ジョブスは環境からではなく、自分のイデア界から機能美の姿を引っ張ってきたと思うの。それは最初から見えていたのかな。それとも良いものと美しいことについて、昔は全然わからなかったのかな。

 まあ今のところ伝記をポチるほどではないが、今まで気に掛けたことがなかったものについて少し考える機会にはなった。

 栗が付いてる羊羹あるから、今日はジョブスにもお供えしてあげるね。お茶しようぜスティー!

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る