幕間


 ──黎明期から数百年の時が経ち、人類は紀元前に誕生して分かれた二つの種族が繁栄していた。

 一つは精神を司る實族しぞく、もう一つは肉体を司る匣族こうぞくである。それらは従来から存在していた人間とは違い、正典に記されている神から生まれた特異的な生命だった。受け継がれた異なる力をふるい、彼らは神に代わって、大地に蔓延る妖魔を討伐する使命を授かっている。

 實族はその命を受けると傀儡師を名乗る。師の清らかな精神は浄化の力を持ち、あらゆる魔を滅することができる。

 匣族はその命によって道化師を名乗る。師の健全な肉体は神獣との交流を赦し、得た幽膜を纏うことによって魔に対抗する。

 これら霊長二種は、足りないものを補い合うように同じ目的、同じ宿命を抱えて生きている。何があろうともその関係が切れることはなく、滅びるまで永遠に繋がり、互いを生きるための糧とする。

 人は、彼らを生ける聖史劇だと言った。神秘のように謎めいて、美しく、激しい、残酷な物語そのものであると。

 誰もがそうだと頷くだろう。長い歴史の中で、数多くの争いを生み、世を守護してきたのは全て彼らなのだから。

 それは終わりと始まりを繰り返すもの。善と悪はどちらかに傾くことはあっても、どちらかに染まりきることはない。だからこそ、神と悪魔は戦争を再演し続ける。

 またこの時、幕間で新たな戦いの発端となる物語紡がれようとしていた。幕が上がる前の小休止。天秤のように揺れ動く彼らの実態はどんなものか。一度見てみると良いだろう。


 決して喜劇だとは、言い難いが。









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