第8話 ケルベロスとの戦い
「モンスターの侵攻だ!」
ソニアの町は大騒ぎだった。
町を閉ざすための門であったが、それもモンスターどもの勢いと数の前には役に立たなかった。何人もの町人がモンスターの餌食となっていた。
後手に回ってしまったとはいえ、町の兵士や旅のエクスナイトたちはよく戦っていた。
「怯むな! 武器を手に取れ!」
町民たちは武器を取る。ある者は剣を、ある者は槍を、ある者はツルハシを。それぞれ手にし、モンスターと戦っていた。
たまたまモンスター弱かったのか、それともソニアの町人が屈強だったのか、モンスターが撃退されるのも、時間の問題だった。
すると、門の上に現れた影が。黒いローブの男だった。
「心配で来てみれば……。人間どもめ、なかなかやりますね……しかし、これならどうでしょうか?」
黒いローブの男は、魔法陣を眼下に出現させた。そして呪文を唱えるとその中からモンスターが一匹現れた。
それは三階建ての建物に等しい大きさを持ち、三つの頭を持つ魔物だった。
「ケルベロス! さあ、行け! ソニアの町を日火の海に沈めなさい!」
戦況は一変した。
ケルベロスはその三つの頭から、驟雨のごとく火弾を放った。
「ハッハッハ、そうです。ケルベロス! やりなさい!」
ケルベロスに数機のエクスアーマー「ザルト」が襲い掛かった。しかしザルトが数機程度の戦力ではとてもケルベロスの進行を止められなかった。
火弾の量と威力が尋常ではないのだ。
「クッ、近づけねえ!」
町人たちのだれしもに、「この町はもうダメだ」という諦めの色が見えてきた。その時だった。
雄叫びを上げながら現れたのは、ライトニングブレイブだった。
「うおおおおお!」
そしてライトニングブレイブは、ケルベロスが振り返りきる前に蹴った! その勢いで、ケルベロスはザルトの小隊がいる辺りまで吹っ飛ぶ。
ケルベロスはすぐさま体勢を立て直し、ライトニングブレイブに襲いかかる。ライトニングブレイブは当然のように応戦する。
「おお、あのケルベロスと互角に……」
「よし! 他のモンスターの掃討作戦に移る」
「ケルベロスはどうするんですか?」
「あの青いのに任せとけ!」
ザルトたちは他のモンスターを倒しにどこかへ行ってしまった。
なんと自分勝手なことだろうか? しかしそれどころではないムートは、動きを止めムートのことを見ているケルベロスと対峙する。
唸り声をあげ、こちらの様子をゆっくり旋回しながらケルベロスはうかがっている。
ライトニングブレイブは剣をかまえ直した。
「……来ねえならこっちから行くゼ!」
ライトニングブレイブはケルベロスに向けて駆けた。
背面のスラスターを使っての全力ダッシュ。遅いわけがなかった。
すちがいざま、ケルベロスの首一つを切り落とした。
「ギャアアアアム!」
ケルベロスは思わず悲鳴を上げたが、すぐにそれは怒りとなって戻ってきた。
すると、ケルベロスはライトニングブレイブから間合いをとる。そして残った二つの口でエネルギーを溜め始めた。
「バカ、やめろ! こんなところでそんなものを使うな!」
ライトニングブレイブは跳ぶ! そしてケルベロスは、上空のライトニングブレイブに向け、熱線を放った。
それは浮かんでいた雲を霧散させた。
「アマリ出力ガ出テイナイ」
「ヤハリ頭ガ一ツ足リナイカラカ」
「シカシ、青イヤツハ消シタ」
「無クナッタ頭ハ後デうる様ニ治シテモラオウ」
そしてケルベロスは、じっと町を見つめる。
「サテ食事ノ時間ダ」
舌なめずりしたケルベロスは身を翻し、町の中へと歩き始めた。
次の瞬間だった。
「グギャアアアアアム」
ケルベロスは苦しんだ。背から心臓を通り、腹にかけてをライトニングブレイブが剣を刺したからだ。
ライトニングブレイブの攻撃を、油断しきっていたケルベロスは完全に食らったのだ。
倒れながら、ケルベロスは聞く。
「ナ……ナゼ?」
「我々ノ最大ノ攻撃、「ぺいるふれあー」ヲ食ラッテナゼ無傷ナノダ!」
「空中で姿勢制御して、食らわなかった。それだけだ」
「くそガ……」
「うる様、我々ノかたきヲ……」
そしてケルベロスは絶命した。
「ウル?」
「誰のことかしら?」
「それは後で考える。先にこの町から脱出だ」
ヒナも首肯したので。ムートは急ぎライトニングブレイブを駆けさせ、ソニアの町から出て行った。
黒いローブの男ははその様子を見ながら拳を握り締め、爪が肉に食い込み青い血が流れるほど握っていた。
「私の可愛いケルベロスを……許さないですよ青いエクスアーマーめ」
そしてウルは転移魔法を唱え、どこかに去っていった。
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