第6話 エクスアーマー補給センター

「ソニアの町、近くで採取できる魔導水晶のおかげで繁栄している」ヒナは持っていたハンドブックに書いてあることを読み上げつつ、ムートの後について行く。

 差し当たって、ムートがしなくてはならないのは、エクスアーマーの補給だ。

 しばらく補給を行っていなかった上、アムルの町で戦闘まで行った。エネルギーはカツカツだった。

「燃費が悪いのが問題だよなあ」

 なんて言いながら、エクスアーマーの補給センターを見つけたムートはセンター内に入っていく。

 大きめな町なら結構ある補給センターだが、このソニアの町にもあって、ムートはちょっとホッとした。

 カウンターには受付のお姉さんが立っていた。

「いらっしゃい。ソニア補給センターへようこそ」

 ムートはカウンターによじのぼり、ライトニングブレイブが入った筒を渡す。

「頼むよ」

「はい。少々お待ちを」

 お姉さんは筒を機械にセットし、カバーをかけてボタンを押す。

「ペンペンペロリン」

 なんて機械は音を立てると、補給は完了したらしい。

「はい、またのお越しをお待ちしています!」

 渡された筒をしまい、ムートはセンターを出ようとする。

「随分はやいものなのね」

「こんなもんさ。ってか、まだついてくるのな」

 ヒナが「そうね」なんて言おうとしたところで、二人に話しかけた人影があった。

「色気づいたガキがこんなところで何してんだよ」

「ヒャハハ。ガキは帰って勉強でもしてるんだな」

 チンピラだった。これ以上ないほどのチンピラだった。

 ビビり上がっているヒナは、ムートの後ろへ隠れる。

「ったくよ……。オレたち忙しいんだ。また今度な」

 手をヒラヒラさせながら振り返り、外へ出ようとするムートに、チンピラは蹴りを入れた。

「ッテェな! 何しやがる!」

 蹴られたムートに駆けつけようとするヒナの手を、チンピラは掴んだ。

「痛い! 離して!」

「よっしゃ! 美幼女ゲットー!」

「ヒャッハー! お兄ちゃんたちといいことしようぜー!」

「大人のおはじきとか、大人のあやとりとかよぉ」

 ムートは一瞬だけ考えた。あえてこのままヒナを連れ拐わせようかと。面倒ごとはもうこれ以上ゴメンだ。そう考えていたのもある。しかし……!

「ぶべら!」

 跳び上がったムートの拳が、ヒナを掴んでいるチンピラの顔面に埋まっていた。

「ヒャハハハ、顔に拳が埋まっている!」

 そしてチンピラは腰のナイフに手をかける。しかし振り返ったムートの顔を見て思いとどまった。

「おいおい怒るなよ。ただの遊びじゃねえかよ……ヒャハハ」

 次の瞬間ムートの蹴りがチンピラの胴鎧に刺さる。

「効かねえなあろぱるぱ!」

 吹っ飛んだチンピラは、最後まで言えずに壁に埋まっていた。

「フン」

 ムートは何にか知らないが、結構な勢いで怒っていた。

「ごめんなさいムート」

「おいヒナ」

「はい」

「そういう時は、「ありがとう」ってんだ」

 ヒナはたんぽぽのような素朴な笑顔を浮かべ、「ありがとう」を言った。

 それだけ聞くと、ムートはセンターを後にした。

 ムートは考える。「これでよかったんだよな? そうだよなアマレ」なんて考えながら、トボトボと歩く。

「ムート?」

「なんだ?」

「とってもさみしそうな顔をしていたから」

 ムートは顔を両手で二度叩くと、普段の顔に戻してヒナにもう一度むく。

「戻ったか?」

 ヒナは少しだけ考え、「そうね」と答える。

「さあ行こうぜ」

 ムートは食料や水の補給も済ませるため、市場へ少し行って買い物を済ませる。

「よし、この町での案件終了だ」

「情報収集はいいの?」

 ムートは手を叩いてからヒナに言う。

「冴えてる」

 しかしソニアの町でもあまり有益な情報は集まらず、ムートとヒナは結局町を出ることにした。

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