レンタル家族
連喜
第1話 きっかけ
俺は一人暮らしの暇人だ。親族とは絶縁状態で友達も彼女もいない。土日も平日の夜も何の用事もないから、副業を始めた。副業と言っても、普通に生活するくらいの金は十分稼いでいるから、普通のバイトは考えなかった。
コロナのせいか、最近は働き盛りの40代くらいの男性が、ファストフードやスーパーのレジをやっていたりする。想像するに自営などがうまくいかなくて、空き時間に働きに来ている気がする。俺は普段はサラリーマンだから、不特定多数の人に顔を見られたくないし、俺はレジ打ちなんかをやるタイプじゃない。実は管理職だから、偉そうに見えて、浮いてしまうだろう。実は自分で言うのも変だが、俺は典型的なエリートサラリーマンなのだ。
他所の会社でちょっと働いてみるのも面白いし、もしくは、後で話のネタになるような仕事がよかった。話のネタと言っても誰に話すわけでもないが、自分で思い出してあれは面白い経験だったと思えればよかったのである。
それで、エキストラ、結婚式の代理出席などに登録してみた。結婚式では新郎の上司として、スピーチを何度かやったが、原稿の準備やスーツをクリーニングに出したりなどで手間がかかり、割に合わないと思った。次に中年男性レンタルのバイトをやってみた。バイトと言っても給料をもらうんじゃなくて、お客さんからお金をもらって、その1割を運営会社に納付するという、まるでネットオークションのような仕組みだった。
依頼内容は、中途採用の就職面接の練習とか、不動産を見に行く時に、父親のふりをして見に行ってほしいとか、一緒にデパートの買い物に付き合ってほしいなんていうものだった。どれも、顧客に恵まれたおかげで、楽しい仕事だったと思う。俺は土日オープンにしていて、依頼がくればどちらかで対応していた。
そのうち、俺もおじさんをレンタルしてみようかなと思った。なぜ、そうなったのかはわからない。飲食で働いてると、店のメニューを食べてみたくなるのと同じ理屈だろう。自分がその仕事が好きだったこともあり、どんな人が来るかが楽しみだった。
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