笑う道化師と死神の鎌
くろねこ教授
第1話 承前=オーバーチュア
男は呆然としていた。
目の前で繰り広げられる悪夢!
「あ、ああああああああ」
前にいた男の頭が斬られていた。
こんな筈は無い。
タフなリザードマンの鱗の着いた頭が、飴の様に切られて地面に落ちる。
そんな真似をしてのけた存在は冗談のような恰好をしていた。
全身を白いタイツで覆い、帽子と腰布は赤い。
身体にピッタリしたタイツから見える体格は小柄だ。
まだ子供なのではないか。
もしくは小型の
そいつが凶器を持ち上げる。
長い柄の先に着いた湾曲した刃物。
大型の鎌だ。
男だって子供向けの絵本くらい見た事はある。
死神が持つような
そんなモノが戦う武器になるかよ。
男はつぶやく。
剣呑に煌めくその刃は使用者の方を向いている。
元来、対峙する相手と戦うための道具では無いのだ。
農夫が草を刈り取るための農具。
ところが、その刃物は兵士の腕を斬り落として見せた。
「てんめぇぇええええ!!!」
仲間を斬り殺された帝国兵士達が吠える。
機関銃を取り出し、狙いをつける。
が、その銃口の先に白いタイツの奴はいなかった。
兵士に向かって銀光が走った。
一瞬後、その頭部は三つに分割されていた。
そして凶器を構えた存在は、こちらへと刃を向ける。
冗談では無い。
地獄の様な戦場を生き抜いてきたと言うのに。
何故こんなところで
そうか!
コイツ……
ウワサは聞いていたが、こんなタイミングで出くわすとは。
隣に居る若い輩。
一見帝国兵には見えない、眼鏡をかけた青年。
これを囮か人質に使うか。
この男を殺されたくなければ、退散しろ。
駄目だ。
そんなセリフにあの
ならば。
突き飛ばして青年が斬られる間に逃げる。
そんな男の思考に気付いていないのか。
青年は白いタイツの小柄な人影を眼鏡越しに見ている。
その口元がつぶやく。
「まさか……ティモシー……!?」
ティモシー?
誰だ?
そんな名前は聞いた覚えが無いぞ。
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