ある騎士の話
中世欧州・・
クリスマスの祝いで 聖歌隊で歌う愛らしい少女
目を細め 微笑む壮年の男性
騎士団の衣を纏う 聖ヨハネ騎士団(マルタ)の一員
少女は彼にとって 義理の妹の娘
誰よりも美しかった義妹
位の高い金持ちの老伯爵に 望まれ 嫁いで行った義妹
娘である歌っている少女は・・ あの子は愛の証 私の罪の証…
義理とはいえ恋こがれた相手は 妹
望まぬ婚姻とはいえ 人の妻
私は、妻をめとる事を許されない修道僧であり騎士団の人間
恋こがれ恋こがれて
結ばれた・・
義理の妹は 黒髪をしていた・・灰緑の瞳
あの子の金の髪は私と同じもの
灰緑の瞳は義理の妹と同じもの
歌がすみ・・少女は駆け出して私の元へ・・
おじさま!
嬉しそうに駆けよる・・
少女の笑顔に妹の顔が重なる・・
「おじさま? 」
「マリアンヌ 誰より綺麗なお姫様
今日はよく頑張っていたね・・。」
「有難うございます! 嬉しいですわ! 」
「ロルシュタインおじさまは今晩は私の家に来て下さるのでしょう!
今日はクリスマスの祝いのご馳走を用意してますわ
私の作りましたシュートレインを食べていただきたいです! 」
「すまないマリアンヌ
今晩の船でマルタ島に戻らねば・・ 」
「そんな・・」
悲しそうに表情を曇らす少女
「家まで送ろうか・・
途中の広場のクリスマスマーケットで買い物をするのかい? 」
「えぇ!少しだけ クリスマスツリーに付ける丸いお菓子を 悪戯な飼い犬に食べられてしまったから・・ お店で買う事にしたの 」
「クリスマスの祝いに
髪飾りとドレス用の生地を姫には差し上げようか」
「おじさま!本当に!」
そして・・
可愛らしいという言葉が似合う
柔らかな色とりどりな色彩の街並の広場に雪が舞う
綺麗に飾ってある小さな露天の店がひしめきあう・・。
街に灯かりがともされ
店の灯かりも色も鮮やかに飾られて
祭の宴 人達と子供達の笑う声がしている
雪の・・
灰色をおびた暗い空の下
ちょっとした夢のような綺麗な風景
鮮やかな色の切り彫りの細工のろうそく・にこれまた美しい細工のろうそく入れを
手にとり これも良いかな・・などと 呟く・・・小さな宝石の首飾り
それから
「ああ・・オルゴール・・これも良い 」
可愛らしい少女の為のささやかな幾つかの贈り物
「おじさま!そんなに持ちきれないわ」
しばらく お会い出来ない 麗しいお姫様への貢ぎ物・・
何卒 納め下さいませ
ぎょうぎょうしく
騎士の仕草をして それからウインク(^_-)
愉しげ笑う・・
家の扉まで送り
また・・お会い出来る日まで・・姫様・・
「おじさま・・? 」
ゆっくりと思う
これまでの楽しい時間 密やかな胸の痛む恋の記憶
マルタ島での戦いは激しいものになるだろう
以前のロドス島の包囲戦や多くの戦いで 全滅のうきめにあった騎士の部隊もあったのだという
「手紙をくれると嬉しいな 私のマリアンヌ姫 」
私は心の中で呟く
幸薄かった・・あの人の分も 神の祝福と 沢山の幸運
幸せがある事を・・私の‥ 愛しい娘よ
手を振り 、無邪気に微笑む可愛らしい少女に 手を振る
クリスマスの夜の空 に雪が 静かに降りしきる。
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