第75話 変わる。



一体、何が起きていたのだろうか…


見た瞬間、此処に居てはいけない。


そう思ってつい飛び出してしまった。


あの臭いや光景…何となく解った。


あれは、まさに『自分で慰めている状態だ』


前世で俺は母親に見られて凄く気まずい思いをした。


絶対にあの光景は…あの時の俺と同じだ。


『凄く気まずい』


だが、帰らない訳にはいかないよな…


俺は意を決っして帰る事にした。


「あら? リヒトちゃんお帰りなさい!」


「三人は?」


「今はベッドに潜り込んで全員励んでいますね…近づくと襲われかねないから、少し散歩でもしませんか?」


レイラに即されて一緒に散歩に出かけた。


多分、他の人間に聞かれたら不味い事になりそうな話みたいだから、門から出て近くの森迄きた。


「そろそろ、良いか? 一体三人に何をしたんだ? その…様子が可笑しいみたいだけど?」


「うふっ! エルザちゃんは除いて皆さんS級に実力が届かないみたいだし、この際強化を含んでズルしちゃったんですよ!」


ズル? 一体何をしたんだ?


「一体何をしたんですか?」


「あらっ簡単ですよ? 私はサキュバスクィーン…そして魔王…だから三人の種族をハイサキュバスにしたんですよ! これでもうアイカちゃんもロザリアちゃんも、本当にS級以上の力になりましたよ!それにエルザちゃんは…もう勇者より強くなっている筈です。まぁ、暫くは人間から種族がサキュバスに変わるから、性欲が抑えられなくて、まぁ発情しています」


ハイサキュバス?


エルフで言うとハイエルフみたいな存在なのだろう。


「だけど、人間には『鑑定』という能力がある…大丈夫なのか?」


「うふっ、サキュバスは隠ぺいに優れた種族です!通常のサキュバスならいざ知らず、ハイサキュバスならまず、鑑定で看破される事はありません! もしばれたら殺しちゃえば良いだけですよ! まぁ私がいますから、他の魔王以外には遅れをとりません…リヒトちゃんは安心して良いですよ? 魔王は基本的に皆、引き篭もりで魔王城から出ませんから! 安心して生活できます」


これは自分達の為じゃなくて相手の為に『正体がばれないように』しないと不味いな。


「そうなんだ…それで皆はどれ位で落ち着くのかな?」


「そうですね…明日には多分マシになっている筈ですね…それでリヒトちゃんは…これです!」


なんだ、これ…紫色の…心臓?


「それはなんだ?それを俺はどうしろと?」


「あらっ! 私はサキュバスクィーンですよ? リヒトちゃんは結構体力も性欲もありそうですが、私の伴侶になって、サキュバスロード三人が寄生した状態…そして他の伴侶三人もハイサキュバスです…」


三人が寄生?


「寄生?」


「あら、リヒトちゃんの剣も胸当ても収納袋もサキュバスロードですし、リヒトちゃんを気にいっているからもう離れませんよ? 近くに置く事や収納は出来ても…決して離れません! 7人もの上級サキュバス相手…そのままじゃリヒトちゃんは死んでしまいます…それを回避するのがこれです!」


この紫の心臓みたいな物はなんなんだ。


「リヒトちゃん…煩いですね…良いから食べなさい!」


俺はレイラに押さえつけられ、心臓みたいな物を無理やり口に放り込まれた。


「うぐっうううっ…ううっ」


気持ち悪い…こんな生臭い物食べた事が無い。


「うえうえっうんぐっ」


「絶対に吐きださないで下さいね…吐いたら許しませんよ…」


『駄目だ』レイラの力が強く、馬乗りになり押さえつけられた状態から抜け出せない。


口を塞がれ…鼻を塞がれた。


「ふぐぅぅぅうんぐうんぐ…ハァハァ」


「飲み込みましたね…あとは頑張って耐えて下さい」


体が、体が熱い…しかも股間が大きくなり…はじけそうだ。


「うがぁぁぁぁぁー――っハァハァ、ハァハァ…あああっああっ」


体が熱く、多分凄い熱が出ている…性欲が高まり…可笑しくなりそうだ。


それと同時に、剣や胸当て、収納袋が俺の中のナニカを吸い出すようにうねうね動き出した気がする。


最もこの3つは…そう感じるというだけで…目視出来ていない。


「リヒトちゃん、良く飲み込みました…偉い偉い…それはですね、インキュバスキングの心臓ですよ?」


「インキュバスキングの心臓? ハァハァ」


「はい…近い種族の癖に、私達の容姿を馬鹿にするようになったから、種族間で昔、戦争になって滅ぼしたんです…その時の戦利品に私が魔法を組み込んだ物です…私達を好きになるような存在が居たら…死なれちゃ困りますから...インキュバスキングにしちゃおうと思って…頑張って耐えて下さいね…本当に苦しかったら、私やあの子達を使っても良いんですよ?」


ハァハァ、インキュバスに体が変わっていくのか…性欲が増していく。


『抱きたい』


『女を抱きたい』


それで頭が一杯になる。


だが、これは違う…『愛』でも何でもない『本能』だ。


こんな物で…好きな人を抱くのは違う…


「苦しかったら…私を使いますか? 直ぐに楽になりますよ?」


そう言って…レイラは服に手を掛けた。


「ハァハァ…いや、それはしないで良い」


「はぁ?! その状態であっても、まさか私を抱きたくない…そんなに、私には魅力が無い…そう言いたいのですか!」


「はぁはぁ…違う…レイラも皆もそうだけど…魅力的で大好きだ…だから、こんな本能からじゃなく…抱くならちゃんとした愛する心で抱きたい…それだけだ」


「愛ですか…そうですか…リヒトちゃんで良かったです…あはははっ、私何を言っているんでしょう…」


「おい」


レイラは顔を赤くして走って行ってしまった。


こんな状態の俺を森に残して…






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