第74話 【閑話】血のアンスイム② レイスの死



私は魔王討伐の褒賞を『貧乳至上主義』に使った。


かなり無謀な話だけど、その願いは叶えて貰えたわ。


だけど、そのせいで貰える報酬はかなり削られたのよ…


『世界の常識を変える超法規的な事を実現する』女神様の後押があり実現されはしたけど…


この報酬を大きな報酬と見なされ、ほかの報酬はほぼ貰えないに等しかった。


他のメンバーは莫大な報奨金や地位を貰えたけど…私には無かった。


その理由は今となっては良く解るわ。


王女や王妃は物凄く大きいとまでは言わないけど、今思えばそこそこ胸が大きかったわ。


他にも有力貴族の子女でも胸の大きい娘が居たのよ…


今思えば…嫌われても仕方が無い事だわ。


だけど、胸の大きさを馬鹿にされ続けた私には…そこまで考える余裕はなかったのよ…今となっては後悔しているわ。


だけど、もう後戻りはできないわ…仕方ないじゃない。


何故、私はあんな願いをしてしまったのかしら…考えても仕方が無いわ。


『願ってしまった』んだから…


だから、私は生きる為に、働かないとならないのよ。


教会に住み、ヒーラーをしながらの生活。


しかも、教会の中でも、私に敵意を向けてくる存在も多くいるわ。


だけど、それは仕方が無い。


今迄胸が大きく『美しい』と言われた存在が『醜い』と言われる世界に私が変えてしまった。


『貧乳』の女性に好かれる反面…『巨乳』の女性やその身内には嫌われる…当たり前のことだわ。


今の私には周りは敵だらけだ。


味方ともいえる『貧乳』は軽くしか感謝していないわ。


逆に『巨乳の女性』やその家族は…私を心の底から恨んでいる。


でも、それは…仕方ない。


婚約を破棄された者。


女優や踊り子の職を失った者。


社交の場所の主役から引き摺り降ろされた者。


恨まれて当たり前だわ。


そして…その恨みは、一般人や貴族ばかりじゃない。


昔、一緒に戦った勇者パーティ。


その全員に嫌われているわ。


剣聖エリッタに 賢者カトニアは巨乳…その美貌を自慢していたんだから…私を許す筈が無い。


そして、勇者ラルガは今はその二人の夫…二人に比べれば軽いかもしれないが恨んでいないわけは無いわ。


馬鹿な願いをしたせいで…どれだけの敵を作ってしまったのよ…


だけど、もうどうする事も私には出来ないわ。


そんな中で『魔族が活性化した』その調査の依頼が私を含む勇者パーティに来たのよ。


だけど…仲たがいした私は三人と一緒に行動は出来ない。


◆◆◆


勇者ラルガが去った後…ここアンスイムに無数の魔族が攻めてきたわ。



「私の名はレイラ、魔族の幹部…聖女レイスに恨みがある者だ…我らが軍団に蹂躙されたくなければ、聖女レイスを差し出せ」


見渡す位の魔族…あれはサキュバスだわね。


言っている事が正しいなら『幹部』


しかも、私を名指し…出ない訳にはいかないわ。


街を見捨てるわけにはいかないもの。


「私が時間を稼ぐから、誰かラルガを呼びに行って、馬を飛ばせばきっとすぐに見つかるわ。あと援軍の要請もお願い」


「はい聖女様…」


これでどうにかなる。


いや、して見せる。


私は聖女…人類の希望の四人の一人なんだから…


私は杖を持ち出陣した。


「私がでるわ…門を開けて…」


◆◆◆


「私はレイス…元勇者パーティの『聖女』覚悟しなさい!」


「そうですか…貴方が…私は、魔族幹部の一人レイラ…貴方だけは何があっても許さないわ! 貴方が望んだ事で、私もこの子達も全てを失った!この世の地獄を見せて残酷に殺してあげます」


「ふぅ…あんた馬鹿なの? 4人揃えば『魔王』すら倒せるのよ…たかが幹部とその仲間位…私1人で充分…えっ!」


嘘でしょう…なんで矢が私に刺さっているのよ?


「敵は魔族じゃない! 聖女、いやレイスだぁぁぁ射殺せー-っ」


「ハァハァ、何をしているのよ! なんでよ!」


あれは、確か...娘の縁談が破断になった兵士...


「あはははっ!貴方人間にも嫌われているのね? まさか射られるなんて」


何を考えているのよ…私が負けたらこの街は終わるのよ...


恨んでいるのは解るけど...今は止めて...よ


「煩い…煩い煩い」


「貴方は楽には殺さない! 他の人間は誰も私達に手を出さないようね? 寧ろ貴方を憎んでいるみたいね! 皆…聖女レイスを拘束しなさい!」


「はぁぁぁぁー-っ、偉大なる女神…ふぐっげふっ」


「遅いわよ…ノロマ」


「そんな、私が詠唱すら出来ないなんて…一貴方は何者!私をどうするつもりよ…」


「そうね…まずは邪魔な服をはぎ取らせて貰うわ! その後は『死にたくなる位』の地獄を見せてあげる」


「そう…辱める気なのね…」


「あら…そんな事しないわよ? それすら生ぬるい、そう思える程の地獄を与え、絶望のなかで殺すわ!」


服をはぎ取られた私は沢山のサキュバスに押さえつけられていた。


こんな屈辱...女としてもう終わり...だけどこれで終わるわけ無いわ。


それが怖くて声も出ない。


「それじゃ、皆噛みついて良いわ…後の者の事を考えて一口は小さ目に食いちぎって…」


『嘘、まさか…ああっあああああー――――っ痛い!いゃぁぁぁぁぁー―――っ』


沢山のサキュバスが一斉に噛み千切ってきた。


「うふふふっ、幾ら『貧乳』が美女の条件も、体全体の肉が食い千切られた、そんなゾンビみたいな姿じゃ誰も愛してくれないわよ!」


サキュバス達は口から血を流しながらもぐもぐと私の肉を食べているわ。



私は聖女…痛みに耐久があるし…こんな状態からでも魔法で回復ができるわ。


「ハイヒール」


「馬鹿ね…そのままなら、あと数回噛まれたら死ねたのに」


そう言うと頭から足先までまた多くのサキュバスが噛みついてきた。


「ぎゃぁぁぁぁー――っ、嫌、いやぁぁぁぁー――っ!痛覚無効」


「馬鹿ね苦痛が長引くだけだわ」


「はぁはぁ…殺せば良いわ…必ず勇者ラルガが貴方達を…倒すわ」


「勇者って此奴よね?」


そういうと魔族の幹部レイラは…私の方に丸い物を投げてきた。


「嘘…いやぁいやぁぁぁぁぁー―――っ」


丸い物の正体、それはラルガの首だった。


「うふふっ大した事はなったわ…まぁ勇者にはさして恨みが無いから、快楽の中死なせてあげたけど…貴方は別、心から憎いから残酷に殺してあげるわ...皆、直ぐに楽にしちゃ駄目よ」


こんなに多くのサキュバスが居るのに、何も話さずただ頷くのが怖いわ。


こんな状況なのに...街の門は閉められ...街の城壁の上からはまるで見世物を見るみたいに、私を見ている...


気のせいか、笑い声まで聞こえてくるわね。


「私が…ハァハァ、何をしたっていうのよ」


「見て解らないの?」


「そう…解ったわ」


サキュバスの全員が巨乳だった…


私は決して許して貰えない…殺される、それ以外あり得ないわ。


肉の塊になり…死ぬまで私はサキュバスに噛みつかれ続けていた。


そしてついに私は死ぬようね...


「あははははっ、遂に死んだわ、この後は...そうね!貴方が守りたかった、この街の人間も皆殺しにしてあげるわ...悔しいでしょうね?」


別にもうどうでも良いわ...


私は遂に意識を失った。


◆◆◆


アンスイム...ある日突然、住民が全員魔族に殺された街。


その事件で勇者ラルガや聖女レイスが殺されていた事は人間側では誰にも知られていない。














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