第70話 S級5人
「なぁ、レイラ、まさか、お前これを狙っていたのか?」
「はて?なんの事でしょうか? 私は知りませんよ!」
昨日のワイバーンの計算が済んだとの連絡をギルドから受けた。
そして、その連絡の際に『希望の翼、5人全員で来るように』その様に言付けがあった。
要件は大体解っている。
レイラは『そうですよ? 希望の翼で狩ってきたんです!』そう言った。
だから、きっとギルマスは『希望の翼全員』で狩ったと思っている。
ワイバーンを狩ったのだから…恐らくレイラ、アイカ、ロザリアの昇格の話だろう。
まぁ…『こうなるだろうな』そう思っていたのに、レイラが話していたのを止めなかったのは俺だ。
「リヒト、なんで僕たちもギルドに行かないといけないの? まさかやらかした?」
「リヒトさん…」
「リヒト様」
エルザは兎も角、アイカもロザリアも人前は嫌いだ。
顔が青い…
俺は何があったのかを三人に説明した。
「リヒトがついていながら、何故止めなかったのさぁ」
「最初は止めようと思っていたんだけどな…止めない方が良いと判断して止めなかったんだ」
「リヒト…なに考えているんだよ! まったくの素人がワイバーンを狩ったなんて可笑しいじゃないか」
「まぁな、だけど、昇格だけ受けて俺達がアイカやロザリアを戦わせなければ良い。それだけだ!」
「リヒト…それは不正じゃないか」
「あら? 違いますよ! 私もリヒトちゃんも『嘘』をついてませんよ! ただ向こうが勘違いした、それだけです!」
「そうそう、俺もレイラも嘘はついていない」
「そうですよ!うふふふっ」
「そうそう」
「僕の純粋なリヒトが悪い顔している…なんだかレイラの性格に影響されている気がする」
「そんなことは無いよ」
確かに良い事では無いが、上手くやれば、揉めなくなるチャンスだ。
だから、此処は目を瞑る事にした。
◆◆◆
「リヒト様…いらっしゃいませ!ギルマスのスベンがお話があるという事ですので、すみませんがこちらへお願い致します」
多分、支払い関係の話と昇格の話だな。
あらかじめ打ち合わせをして今回の話し合いは『俺だけ』が代表して話、他の皆には口を出さないようにお願いしてある。
特にエルザはボロをだしそうだからな…
特別室に案内され、そこにはギルマスのスベンが座って待っていた。
「それで報酬なんだが、済まない計算してみたところ大型が結構混ざっていてな全部で金貨1900枚(約1億9000万円)なんだが、流石に払ってしまうと他の仕事に支障が起こるから、済まないが素材の売却が終わるまで、5日間程待ってくれ!」
「別にお金に困ってないから問題はない、良いですよ…パーティ口座に振り込んでおいてください」
「ああっ、ありがとう…助かる」
「ああっ構わないよ…それで他には?」
「ああっ、それでな『全員』で倒したのなら、他のメンバーもS級相当という事になるな…大体S級でワイバーン1羽で苦戦するんだ、そこから考えると『希望の翼』は全員がS級冒険者の上位、下手すれば『勇者』以上の化け物という事になる…どういう事か詳しく教えてくれないか?」
「『希望の翼のメンバー』が倒した、それ以外は黙秘します」
レイラが倒したんだ『希望の翼メンバー』が倒した。
そこに嘘はない。
嘘でないなら騙した事にならない。
「いや、どういう方法か俺はな…」
「黙秘します! 冒険者は実力のみ示せば良い筈だろう? こちらの情報が知られたら、この先不利になる事が多い。もし開示しないと昇格が無理なら、今回は見送りで構わない。但し、その場合は報酬が払われ次第、この街から出て行って、他の街で一からやり直すよ」
「ふぅ…確かに冒険者なら奥の手は隠したい…それは誰しも同じだ。無理に聞こうとした俺が悪かった…これ以上詮索はしないから、この街から出るなんて言わないでくれ! ファルハン伯爵もリヒト達を気にいってな…今回の三人のS級昇格もすんなり通してくれたんだ。その期待も解るだろう?」
「そうか…まぁ良いや、俺達は冒険者だ。騎士や衛兵じゃない!楽しければ何時までも此処に居るし、詰まらなくなればすぐに出て行く! それだけだよ」
魔王討伐の任務も無く...今の俺達は本当に自由だ。
魔王討伐と折角縁が切れたんだ…永住の地を探すのも悪くない。
「それはどういう意味だ?」
「俺は今迄、勇者パーティで旅から旅だっただろう? そのせいか…家や土地に関心があるんだ…折角旅をしないで済むのなら、これから先は永く居つける場所を探そうと思っている」
「そうか…もしその事で、何か相談したければ何時でも言ってくれ」
「解った。もし何かあったら相談させて貰います」
「何時でも相談してくれよ」
ふぅ、これで全て丸く収まったな。
複雑な顔をレイラ以外はしていたが気にしても仕方が無い。
形だけでもS級になっていれば、幾ばくかは批判もやわらぐだろう。
これで良いんだ。
だが、リヒトが思っていた以上にこの話は大事になっていた。
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