第45話 マリアンとリラSIDE



「リヒト行っちゃったじゃない…」


「そうだね…」


しかし、あれはなんなのよ!


下着姿で居たと言うのに何も反応しないじゃない!


少しは顔を赤くするなり、恥ずかしい顔位しなさいよ。


「しかし、下着姿の私達2人を見て、あの余裕の態度、なんだか腹が立つわね!」


「マリアン、それ仕方ないと思わないの?!」


「何がよ!」


「私もそうだけど? 今迄、自分達がリヒトをどう扱っていたのか考えた方が良いよ…」


確かにそうだわ。


私、リヒトを『男』として扱って来なかったわね。


だってしょうがないじゃない?


あの時は『好きじゃ無かった』んだから。


しかもリヒトは女子力が強すぎなのよ。


料理は美味いし、家事は得意…


ハァ…そりゃそうよね。


下着も洗わせていたし…


トイレも付き合って貰って見張りをして貰っていたし…


更に言うならガイアとイチャついている時に近くに居たし…


今更…よね。


「ハァ~確かにそうよね…元が元だから」


「余程頑張らないと難しいよ…多分女の子として見て貰えてない」


「そうね! リラの言う通りだわ」


「でしょう?」


「まぁ、それは別として、久々のリヒトの料理、堪能しましょう」


「そうね、冷めないうちに食べようか」


「うん」


久々のリヒトの料理…美味しい。


「凄く美味しいね、この料理…」


「うん、リヒトの料理だからね」


まさか、本当に世話してくれるなんて思わなかったわ。


結構、酷い事したし…我儘ばかり言っていたのに…


『幼馴染』だから?


良く考えたら、リヒトにとってあの旅は…何も良い事は無い旅だった筈だわ。


もし魔王を討伐できてもその手柄は四職の物。


しいていえば、ガイアの物だ。


多少のおこぼれはあるかも知れないけど、多分貰える物は少ない筈だわ。


恐らくリヒトは実力的に魔王城まではついて来れない。


下手したら最後まで付き合ってないからと、真面な恩賞も貰えないかも知れない。


そんな何も利益の無い旅にリヒトはついてきてくれた。


実力が劣るから、もし、最初の犠牲者が出るとしたらリヒトの筈だわ。


そんな命がけの旅なのに…


不平不満を言わず、全てを押し付けられてお金すら真面に貰えない、酷い扱いだったのに傍に居てくれたんだよね。


自分だったら…『きっとふざけるな』そう言って飛び出すわね。


どうして付いてきてくれたのかな?


そんな事は解っているわ。


『幼馴染だから』


それ以外ないじゃ無い。


何で気がつかなかったのよ…


『幼馴染が心配だからって危険な場所に無償で付いて来るような人』


それが『優しい人』じゃない訳ないじゃないの?


本当に馬鹿だわ。


そんな事、解っていた筈よ。


ううん、旅に出てから解ったわけじゃ無い。


ずうっと昔。


子供の頃から『解っていた』筈なのよ。


私は、いえ私達は…それに甘えて、色々な事をさせていた。


何も見返り無しに…


「この料理、本当に美味しいわ…うぐっスンスン、ううっ本当に美味しいわ、ううっううっうっグスっ…美味しい」


「グスっううっううっリヒトのだから…ね」


久々に食べた幼馴染の料理は…どんな料理よりも美味しかった。


これは『リヒトが私達に作った料理』だから。







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