第30話 修羅場② エルザの秘密



ガイアの前から飛び出してはみた物の三人と何を話せば良いのかすら思いつかない。


だが、それよりも三人を探さないとな。


今の俺が簡単に探せるのは1人。


エルザだ。


エルザは男女を超えた親友だから、こういう時に行く場所は想像がつく。


俺は近くの水場を探した。


大体、彼奴は嫌な事や悲しい事があると水場にいる。


「ガイアの馬鹿ぁぁぁぁぁー―――――っ!」


「ガイアのバーカバーカー――っ!」


やはり居た。


この辺りに湖があるから、そこだと思ったよ。


「いよ!エルザ、さっきぶり!」


「リヒト…あはははっ、いつも君にはカッコ悪い所ばかり見せているね…」


「何時もの事だ気にするな」


此奴は世間では『麗しの剣聖エルザ』なんて呼ばれているが実際は少し違う。



此奴は確かにボーイッシュだ。


世間一般ではエルザは男っぽいというか勇ましく勝気な女の子…そう皆は思っているし、それで通っている。だが、実際は『女々しい少年』っぽい、少し変わった女の子というのが正しい。


それが真実だ。


「気にしない訳ないだろう…いつもリヒトにはこんな姿ばかり見せているんだから…」


「今更気にする必要は無いな。もうそう言う姿は見飽きる程、見たからな」


「まぁ、そうだけどね」


「それで本音で聞くけど? お前ガイアの事本当に好きだったのか?」


「なんで僕にそれを聞くのかな?当たり前だよ…」


俺はエルザの秘密を知っている。


此奴が何故『僕』と言っているのか?


それは、此奴の心が限りなく男に近いからだ。


しかも、良く小説やアニメに出てくるような『カッコ良い奴』じゃなくて『やや女々しい感じの男の子』な…


「此処には周りに誰も居ない!本音で話して良いんだぜ…お前の初恋はマリアンだったろう?まぁあれから随分立つから変わっているかも知れないが、実際どうなんだ?」


事実、マリアンがガイアとべったりとなっていた時…此奴は泣いた。


その時も俺は、今と同じように此奴に付き合った。


「僕はガイアも好きだよ…」


「ガイアもだよな?」


「本音はどうだ?」


「女の子も好き…」


こういう所が女の子…まぁ女の子なんだが『男らしくない』所だ。


大体此奴は『剣聖』なんだ。


そして巷では『麗しの剣聖エルザ』なんて呼ばれている。


なにが言いたいのかと言えば『女の子にも人気がある』


その気になれば幾らでも女の子とも付き合える。


それどころか恐らく本気で口説けば『食い放題』だ。


なのに此奴は実行しない。


何故なら…それが出来る程心が強く無いからだ。


「だったら、これで良かったんじゃないか? お前勇者パーティだからとか、自分が可笑しいとか思い込んで、こんな選択をしたんじゃないか?」


「それは違うよ! 僕はこれでも時間を掛けてちゃんとガイアを好きになるよう努力したんだ…ようやくなれそうだったのに、その結果がこれだよ」


「そうか、それでこれからどうする?」


「どうしようか?」



あはははっ情けない顔。


これが俺の知っているエルザの顔だ。


こんな顔は俺位にしか見せないけどな。


「エルザはどうしたいんだ?」


「…」


「それなら、もう魔王討伐なんて辞めて逃げちゃえ」


「いきなり何を言うんだい…僕がそんな事出来ると思うのかい?魔王討伐は義務なんだよ?出来ないからこそガイアとの関係も構築しようと頑張っていたんだよ!」


果たしてどうだろうか?


魔王を倒すのには三職は絶対に必要だ。


勇者、聖女、賢者は昔から魔王討伐の要だと言われている。


だが、剣聖はどうだろうか?


ちょっと系統が違う気がする、確かにレアなジョブだが『女神の使い』と言えない気がする。


そう言いだすと『賢者』も魔法のエキスパートだが女神と関係があると言い切れない気がする。


賢者はこの際置いておいて『剣聖』はある意味無関係だから、かなり難しいが抜けられる様な気がしなくもない。


だが、エルザが抜けてしまうと益々ガイアの魔王との戦いの勝率が下がる…どうするべきかな。


「それはエルザ次第だな…本気でエルザ辞めたいなら辞める方法を考えてやっても良いよ、その後はお前だってS級なんだから、女の子とパーティでも組んで楽しく暮らせば良いんじゃないかな?」


エルザの好きな様にさせれば良いや。


「あはははっ、それは無いよ、ガイアとだってそう言う関係になる前に本当の所はきっと振られると思っていたんだ、僕はほら? 男みたいだろう?…多分、僕の事を好きになる人は男でも女でも居ないんじゃないかな?」


なんだか…訳が解らない。


「ガイアは兎も角、他の人に振られたりしないだろう? エルザは『麗しの剣聖』なんだから? 男でも女でも選び放題じゃないかな」


「あはははっそうかもね? だけどガイアには振られちゃったし男で興味ある人なんて、もうリヒト位しか居ないかな…」


「女の子ならいけるんだろう? だったらそっちで探しても良いんじゃないか?」


「そうだね」


「とりあえず、皆で集まってこれからどうするか話した方が良いんじゃないか」


「そうだね…話さないとね…うんそうするよ…僕」


まぁ解決はしてないけど、これでエルザは話し合いの席にはついて貰える。






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