第13話 【閑話】 申請
「金貨10枚程お金をおろしたい」
今迄はお金の管理もリヒトだった。
いちいちお金を使う度にとげとげ文句を言ってきたが、これからは使い放題だ。
俺達勇者パーティはリヒトを除き、稼ぐ必要は無い。
教会、聖教国が窓口になり、必要なお金が口座に振り込まれるから、ある意味幾らでも使える。
「すみません、口座にお金が入っていないようです」
「お金が入っていない? 何かの間違いじゃないか?この口座は『希望の翼』の口座だぞ!活動資金が教会から入ってくるんだ、そんなわけない」
今迄こんなことは無かった。
冒険者ギルドの口座にはいつも潤沢なお金が入っていて何時でもリヒトに言えば文句を言われながらもお金を出して貰えた。
それが全く無いなんて可笑しい。
「すみません、調べますので少しお待ちください」
「ああっ、絶対に間違いだ、ちゃんと調べてくれ!」
俺達は勇者パーティだ。
だから、戦いに集中する為に潤沢な資金が約束されている。
口座にお金が無いなんてあるわけが無い。
「あの、ガイア様…やはりお調べしましたが、口座にはお金がありません。正確には銅貨3枚分しかない無い状態です」
「ふざけんな!」
「ガイア、怒ってもしょうがないよ? ただ、どうしてお金が無いか教えてくれる?」
「そうね、今迄お金が無かったなんてことは無かったわね」
「まさかと思うけど? リヒトが持っていっちゃったのかな?」
「リラ、彼奴は真面目だからそんな事は絶対しない」
「ガイア、冗談だって!」
「冗談でも言って良い事じゃ無いわ」
「待ってよ! 今はなんでお金が無いか聞くのが先だって!」
「そうだな」
「「ゴメン」」
「エルザ様ありがとうございます!此処暫く、教会からも何処からもお金が入金されて無いみたいですね」
「その理由は解るか?」
「そこ迄はこちらでは解りません、教会に聞いてみては如何でしょうか?」
「そうだな、悪い邪魔したな」
一体なんなんだ!
すげーかっこ悪いだろうが!
◆◆◆
今、俺は教会の方へ来ている。
「入金がされて無いのですか?」
司祭が驚いた顔で俺を見ている。
そりゃそうだ、普通に考えたらそんな事あるわけないよな。
「そうなんだ、今迄こんな事は無かった、何があったのか調べてくれ!」
「それは難儀ですね、ですが勇者パーティへの支援は最優先事項です。普通に考えてあり得ないのですが、直ぐに調べますから、お茶でも入れさせますので暫くお待ちください!」
「頼む」
司祭は直ぐに調べる事を約束してくれ、俺達は別室に通され暫く待つ事になった。
「しかし一体どうしたと言うんだ今迄こんなことは無かったぞ」
「まぁまぁガイア、落ち着いて、どうせ何かの間違いなんだから直ぐに解決するって」
「そうよ、しかし不格好ですわね、勇者パーティの口座にお金が入ってないなんて」
「此処がまだ序盤の街だから良いけど、より魔族領に近い場所だったら困るよね」
「ああっ二度とこんな事が無いようにして貰わないとな!」
しかし、なんでこんな事になったんだ。
今迄こんな事は一度もなかったぞ。
「ガイア様、今調べがつきました」
「一体何があったと言うのだ? 直ぐにお金は貰えるのか?」
「結論から言いますと、直ぐにお金のお支払いは出来ません」
「ちょっと待て! 俺達は今お金が無い、支援金が貰えなければ今日の宿代にも困るんだ」
「可笑しいよ!僕たちしっかりと活動しているよ!」
「そうよ! エルザの言う通りだわ!」
「支援はしっかりしてくれる、そういう約束をしていた筈です。可笑しいよ。」
「あの、言いたく無いですが、今現在ガイア様達は一体どんな活動をしているのでしょうか? また当座の目標はなんでしょうか?そして成果はどうなっていますか? それらの報告が一切されて無いそうです!」
「「「「えっ」」」」
話を聞くと、どんな活動しているか報告する『活動報告書』と近くの目標を書く『目標設定書』幾ら必要なのか申請する『支援金申請書』そしてどんな成果が上がっているか『成果報告書』と4つの書類を出さないといけないらしい。
「そんなのは初耳だ、皆は聞いた事はあるか?」
「僕は聞いた記憶は無いよ」
「そう言えば、リヒトが何か書いていたかも…」
「うん、言われてみれば、いつも私達が横になってから何か書いていたよね」
「確かに、リヒト様が書かれた物ですが、皆さんのサインも入っていましたよ」
「「「「あっ」」」」
言われてみれば、リヒトに言われてサインしていた記憶がある。
「それが無いとお金が入らないのか?」
「はい、その書類を元に精査しまして、聖教国がお金を立て替え、出します、また各国や団体への請求にも後で聖教国が使いますから、絶対に必要な物です」
「そうか、それじゃリラ悪いが頼む」
「えっ、私?」
「ああっ賢者だろう?」
「そうね、脳筋の僕には無理」
「賢者とは賢き者なのですからリラのお仕事ですわ」
「仕方ない、解ったよ」
「今日の所は、食事や泊るところにご不自由な様子ですから、教会に是非お泊り下さい、リラ様には書類の書き方についてお教えいたします」
「すまないな」
リヒトはこんな事もしていたのか、まぁリラに任せれば大丈夫だ。
リヒトに出来るんだ、賢者のリラが出来ない訳ないな。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます