第12話  ハートマーク



しかし驚いたな。


まさかキスされるなんて…


あんなスタイルの良いアイカを腕枕した状態で眠れるわけがないだろう?


二つの胸がピッタ押し付けられているんだから無理だ。


結局、俺は眠れないまま、悶々と一夜を過ごした。


アイカも結構起きていたようだけど、今はもう寝ている。


寝顔を見るだけで癒されるな。


凄く可愛いしスタイルの良い…うんうんナインペタンのガキ女と違う。


まだ、随分早いな、俺はジョブのおかげで数日間寝ないでも大丈夫だ。


朝市でも行ってくるか…


◆◆◆


しかしこの世界の宿屋はキッチン迄ついていて便利だ。


「ふんふふんふーん」


相手が違うと此処迄やりがいが出るのか。


いやいや作るのと全然違うのな。


久々にオムライスを作ってみた。


中身はチキンライスで前世で俺が食べていた物を再現。


この世界には転移者が居たから外食で食べられなくもないが、さして美味しく無くて高い。


ガイア達曰く、俺が作った物の方が美味しいそうだ。


ハートマークをケチャップで書いて、はい完成と。


これに買ってきた野菜からサラダを作って、買ってきたマヨネーズモドキを掛けて出来上がり。


異世界に転生するなら、もう少し一生懸命家事を覚えるべきだったな。


あとはスープをつけてこんな物で良いだろう?



「さぁ、アイカご飯が出来たから起きて」


しかし、幾ら見ても見飽きないな。


今は毛布を抱え込む様にして横向きで寝ている。


こういう姿一つでもスタイルが良いと絵になるな。


ちなみにこの世界に写真機も無いから目に焼き付けるしかない。


「う~んむにゃむにゃ…あっリヒト様、すみませんすぐ起きます! 奴隷の分際でスミマセン!」


「別にゆっくりで良いよ、奴隷だから早く起きろなんて言わないからゆっくりで良いよ、朝食が出来たからね、あとハーブ水も用意したから顔を洗って、さっぱりするよ!」



「あの…」


「どうかしたのか? とりあえず顔を洗おう、ほらさっぱりするから」


「リヒト様、私奴隷ですよね?」


「立場上はそうなるな!」


「普通は奴隷って色々仕事をしてこき使われたり、食堂とかでは床に座っていたりする…存在ですよね?」


「一般的にはそうなるのかな?」


「それなのに…なんでリヒト様が働いているのですか?」


「そうだな? 昨日聞いた話だとアイカって家事が出来なさそうだから、俺がご飯を作った、それだけだ、それに俺は結構家事が得意なんだ、ほら顔を洗って」


「はい」


しかし、アイカは見ていて飽きないな。


顔を洗うしぐさでも、前世の洗顔剤のコマーシャルを思い出す位絵になる。


屈んで顔を洗っている姿を後ろから見るのも、案外良いもんだな。


まぁ相手がアイカだからだな。


「はい、タオルをどうぞ」


「あっありがとうございます…」


「それじゃ、冷める前に食べようか?」


「あの…奴隷は普通は床に座って食べるんじゃないですか…」


「そんな事しなくて良いから、椅子に座って一緒に食べようか?」


俺は椅子を引いてやった。


「本当に良いんでしょうか?」


「良いから」


「はい」


この辺りも少しずつ決めていかないとな…


俺は奴隷としてアイカを扱う気は無い。


相手は奴隷だから自由に出来る。


そういう考えもあるが、俺はそうは考えない。


ただ、『他の男を見ないで俺だけを見て貰える権利』を買った。


そのつもりだ。


少なくとも、そこから努力しないと本当の意味で愛して貰えない。


これはこの世界でついタイトルで買ってしまった。


『奴隷冒険者オークマン、奴隷の嫁を娶る為には』という本にも書いてあった。


結構、俺には納得できる内容だった。


金貨1枚もしたけどね。


「どうかな? 結構自身があるんだけど?」


「美味しいですよ…凄く美味しいです…だけどどうしてこれを作ってくれたのですか?」


「昨日も何回も言っただろう?俺にとってアイカは凄く可愛い女の子にしか思えないってな」


「それは何回も聞きました…だけど、本当に私がそうだとしても…私はリヒト様の奴隷ですよ…殺さなければ何をしても良い存在だし…万が一殺してしまっても国に罰金を払えば許される存在ですよ…そんな私に何かする必要なんてないですよ…いえばリヒト様になんでもしなければならない奴隷なんですから…」


「確かに命令には逆らえない、それは良く解っているけど、そう言うんじゃないんだよ! 俺はアイカの笑顔が見たいからしているだけだ…本当の笑顔や心からの好きという物はそんなんじゃ手に入らないからね、そうだな奴隷と考えないで友人って考えてくれれば良いよ、そして俺を好きになってくれたら、嬉しい、それだけだ」


「ヒクッグスッ…本当にそれで良いんですか? 私化け乳で気持ち悪い存在ですよ…」


「ああっ構わないよ、だけど一つだけ命令させて貰うな…卑屈になるの、禁止」


「だけど…私『化け乳』ですから…無理です」


「それじゃ直ぐには無理かも知れないけど、少しづつなおしてね、それじゃ冷めないうちに食べよう」


「はい…リヒト様、これ凄く美味しいです! 所でこの卵の上のマークなんですか?」


「ハートマーク...好きだよという意味のマークだな」


「リヒト様、本当に私が可愛く思えるのですか?」


「ああっ、本当に可愛いし綺麗だと思うよ…」


「そうですか…そんな事言ったら…私調子に乗っちゃいますからね…信じて良いんですか?」


「ああっ信じてくれ」


「解りました」


アイカは安心したのか凄い勢いでご飯を食べ始めた。


確かに今迄粗食で我慢していたんだから…こうなるか?


俺も現金なものだな。


あの4人に作っていた時には嫌々だったのにアイカ相手だと料理が楽しいんだから。


そう言えばあいつ等大丈夫かな?


まぁ追い出された俺が考える必要は無いよな。




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