第3話 昔の聖女の罠…だが居た。
俺は、自由だー――っ!
パーティからの脱出、本当にラッキーだ。
正直言えば、余り居たくなかったから、これで良い。
勇者パーティだから最後の一線は超えられないとはいえ、毎日さかりのついた猫みたいに煩いし、しかもイチャつく時間が欲しいからなのか雑用を全部俺に押し付けてきた。
うんうん、『追放最高だ』
大体、好みでも無い女や俺を見下している『親友』の為に身を粉にして働く、そんなのやりたいと思っている奴は余程のマゾだ。
飯作って、女物の下着まで洗って、夜の見張りは基本俺…何処のブラック企業だよ。
そして最悪な事に、その状態で金は貰えないんだからな。
ブラック処の話じゃ無いよな。
雑用全部押し付けられた挙句『自分の食い扶持は自分で稼ぐ』酷いなんて物じゃない。
魔法戦士でそこそこ強いから、一人で狩に出て稼いでいたから金に困らなかったけど、精神的に凄く疲れる。
もしパーティメンバーに、自分好みの女が居て付き合っていたのに寝取られた挙句追い出されたなら『ざまぁ』してやるとなるが…
3人とも、ナイナイペタペタで俺の好みじゃない。
だからガイアを恨む事も全く無い。
しいて言えば家事や雑務を押し付けやがってと多少はムカつくが『ざまぁ』する程の事じゃない。
幼馴染だから、4人とも嫌いではない。
ただ、魔王討伐等、俺はしたくもないから追放は寧ろラッキーだ。
此処迄ついてきたのは仕方なく、彼奴らの家族に借りがあったからに過ぎない。
親が亡くなってから、俺の面倒を見てくれたのは『彼奴らの家族』だ。
そんな借りの有る状態で
「息子を頼むよ!リヒトくん、彼奴そそかっしくて見てらんねーから」
「リヒトくん、娘を頼むわよ!」
なんて言われたら断れないだろう?
だから、ついてきただけだ。
流石に俺からなら兎も角、ガイア達側からの追放ならもう義理は果たしたよな。
◆◆◆
さてと、俺の好みは、スタイルの良い胸の大きなグラビアアイドルみたいな女の子だ。
そこに顔が童顔で美少女系だったら最高だ!
俺の前世には『イエローカー』という巨乳でスタイルの良い女の子が沢山所属していた芸能事務所があって、ああいうのが好みだ。
アニメとかだと、赤い服着た怪盗の彼女とか?自由に変身できるアンドロイドみたいな感じだ。
ただ、これをどうやって探すのかが問題だ。
ただ綺麗な女の子が欲しいなら高級な奴隷商人の所に行けばお金さえ払えば買える。
だが、この世界で俺の好みのボンキュウッボンはデブと同じ扱いになるから、何処を探して良いのか解らない。
安い奴隷商から地道に見て行くのか?高級な奴隷商で安価な奴隷を見て回るか?どっちが良いのだろうか?
まぁ時間は幾らでもある。
適当に見て行くか?
この街には 安い奴隷専門のオルド商会、中級奴隷を扱っているゼス商会、そして高級奴隷専門店のエース商会と三店舗ある。
お金には余裕があるから、最初はエース商会から見て回った。
「これは、これはリヒト様、勇者パーティの貴方様がどういったご用向きでしょうか!」
「もう、勇者パーティは抜けたんだ、それで将来的に奴隷が欲しくて、今日は冷やかしだけど、見させて貰って良いか?」
「どうぞ、どうぞ見て行って下さい」
こういう所は元勇者パーティだと得だよな。
普通に奴隷商に冷やかしなんて言ったら、決して見させて貰えない。
見た瞬間から俺の頭には…
『駄目だこりゃ』が頭に浮かんだ。
屋敷みたいに凄い環境なのは良い。
奴隷エリアに入ってすぐに豪華な客室みたいな檻が広がっているが…
エルフのナインペタン。
ダークエルフのナインペタン。
そんなのばかりしか居ない。
確かにエルフやダークエルフって美人だけど貧乳ばかりだよな。
「どうです? うちの奴隷は美人ばかりでしょう! リヒト様のお目にかなう至高の奴隷も居る筈です」
心が躍らない。
少なくとも『これは買うしかない』と思えるタイプは1人も居ない。
令嬢エリアの部屋にも平民の家事奴隷のエリアにも居なかった。
此処は高級奴隷店。
一番下が平民の家事奴隷エリア。
此処から下が無い。
「胸が大きい女の子は居ないんだな」
「何を言われますか? 男性が嫌う化け乳女等、当館にはおりません! 安心して見られますでしょう! それでは次回のお越しをお待ちしております」
多分、此処にはもう来ることは無いな。
◆◆◆
しかし悩むな。
最高級店には『貧乳』しか居なかった。
『化け乳』とまで言うんだから、あの店では扱わないって事だ。
次はオルド商会とゼス商会どちらに行くかだな。
安い奴隷を扱うオルド、中級奴隷を扱うゼスどちらから回ろうか?
時間はたっぷりある。
まずはゼス商会に行ってみた。
「リヒト様? 此処はゼス商会ですよ?リヒト様ならエース商会に行った方が良いんじゃないですか?」
「ちょっと特殊な奴隷が欲しいんだ…所謂、化け乳タイプだ」
「あははっ『化け乳』ですか? 流石にあれは嫌われるからうちでも置かないですよ? 顔が多少醜く特技がなくても買い手はつきますが化け乳は無いですよ」
いや、巨乳が嫌われているのは知っていたけど…此処迄とは。
だけど、巨乳だって普通に生まれてくる筈なのになんで居ないんだ?
「だけど、実際の女性には化け乳は居ますよね?」
「リヒト様は田舎の村出身だったのでしたっけ? 昔に聖女のえ~と誰だったっけな、その方が『貧乳は正義』と言い出して化け乳の駆逐に乗り出したんですよ! 当時は今と違い普通に胸の大きい化け乳が好きっていう男性もいたらしいですが、魔王討伐をした、当時の勇者パーティの自分の分の報酬で『貧乳は正義で化け乳は悪』そういう世界観を作らせたそうです。更に貧乳魔法や貧乳になる薬を開発し、今ではBカップになると希望すれば教会で処置して貰えるのでBカップ以上の女性は皆無なんです。都心では常識なんですよ、うちにも稀にB+カップ位なら入りますが捨て値で販売していますよ」
マジかよ。
貧乳でチビで痩せている女。
鑑賞用なら最高だけど、抱いたら飽きるだろう?
前世で、有名なモデルで肉体関係になったら数か月で捨てられるなんて言うのを幾つか知っている。
それはこれのケースが多いと聞いた。
モデルの服を脱がせたら貧乳鶏ガラ女だから、萎えるなんて話も聞いたぞ。
自分の経験では、ある程度の肉付きが無いと抱き心地が良くないと思った事が沢山ある。
やってくれたな、謎の聖女。
「オルド商会なら…化け乳居ますかね?」
「あそこは、何処も扱わない様な奴隷を扱う店だから居るかもしれませんね…ですが、リヒト様、なんで化け乳を? もしかして見世物感覚でみたいんですか?」
「そんな所です」
「随分、悪趣味なんですな」
「邪魔をした」
思った以上に『貧乳は正義』手ごわいな。
◆◆◆
結局、俺はオルド商会に行く事にした。
「化け乳女が見たいのか? 居る事は居るが銅貨3枚貰って良いかい? もし奴隷を買ってくれるならその分は引くから」
禿げ頭の筋肉ムキムキの奴隷商人がサムズアップしながら手を出してきた。
「あ~はい!」
「リヒト様、悪いな、化け乳女なんて買い手もつかなーし、見世物感覚で見られても困るから、見物料だ」
「納得したから大丈夫だ!」
銅貨3枚(約3千円)なら別に全然痛くない。
「まぁ、折角だから全部見て行ってくれ!」
「ああっそうだな、頼むよ!」
入った瞬間から違うな。
獣を入れるような檻。
前世で言うなら動物園かサーカスみたいな感じだ。
『人間動物園』
それが一番近いのかも知れない。
臭いし、汚い。
檻の中の男はまるで浮浪者だし、女も結構な年配だ。
まぁ胸は貧乳だけどな。
顔はまぁ二つの商会に居た女性とは比べられない。
良くてモブ、悪ければブス。
恐らく此処で一番高い奴隷でもゼス商会の安い奴隷と変わらない。
『化け乳』とはこれ以下なのか?
「どうだい? 見た瞬間から驚いたろう? これがオルド商会なんだ! 此処には鉱山送りになるような最底辺の奴隷が集まってくるんだ、此処はまだ真面な方の奴隷だぜ」
「これより酷いのか?」
「此処から先は、片手や片足、火傷を負っている者、ますます酷くなるぞ」
「良く此処で生活出来るな?」
「商売だからな! 代々このオルドを継いでいるんだ!もう慣れたよ」
吐き気がする程臭い。
此処に居る奴隷でも酷すぎる。
まさかと思うが化け乳って乳もでかいが腹もでかい、デブスって事は無いよな?
カーテンの様なボロキレが吊るしてある。
「此処から先が、リヒト様が見たがっていた、化け乳女が居る場所だ。よくもまぁ、あんな脂肪の塊をつけたもんだ、吐き気がするほど気持ち悪いぜ!」
まさか…顔がブサイクという事は無いよな?
もし、そうなら、別の街にでも行ってゆっくり探せば良いか。
「解った」
「俺は見たくないから此処で待っているからな…本当に気持ち悪いからな、吐いても知らねーからな」
なんだか不安になってきたな。
俺はカーテンをめくり中に入っていった。
更に凄い汚臭がすぐに鼻についた。
なんだ、これは…まず、入り口に居たのは確かに巨乳だがババアだ。
しかも腹まで出ている。
勝手に名前を付けるなら『三段腹デブ子』だ。
碌なのは居ないな。
今現在、此処に居るのはただのデブだ。
まさか、本当に居ないのか?
俺は勇者パーティに居たから複数婚が可能。
とはいっても勇者みたいに見境なくでは無く数に限度はある。
だから数人、最悪1人で良い。
入って居る檻を見る度に、絶望に陥る。
顔も知らない聖女が『貧乳は正義』と腹が立つ顔で俺を見下してくる気がした。
もう覗ける檻は2つしかない。
これもハズレ、あと一つ。
嘘だろう…
居た。
大きな胸を持ちながら、お腹は綺麗に引っ込んでいる。
お尻も適度に大きくまさにボンキュッボン。
顔は、顔はどうだ…此処迄きたんだ。
祈る様にして顔を覗き込む。
汚れている物の綺麗な黒髪に大きな綺麗な瞳。
童顔の凄い美少女だ。
『会えた』『居た』
「助けて…」
かなり衰弱しているようだ。
「解った、すぐに助けるからな!」
俺は走り奴隷商人を呼びに行った。
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