11話 団長ロベルト
「この人が王立騎士団長のロベルト・フォスター。」
「ん?この少年は誰だ?」
この人が王立騎士団の団長であることは確かなようだ。
それにしてもルカはさっきロベルト団長をお父さんと呼んでいたけど両親は亡くなったって話だったような。
「私の両親が亡くなったことは一昨日話したでしょ、ロベルト団長は身寄りのない私を引き取ってくれたの。」
「ロベルト団長はいい、パパと呼びなさい。」
だいぶキャラ崩壊している気がするがなるほど、合点がいった。
「あ、紹介がまだだったね。この子はシエル・ベルウッド、先日私を助けてくれたんだ、こう見えてもすごく強いのよ。」
「なるほど、とても戦えるような齢、体つきとは思えぬが興味深い。生まれはどこかね?」
「実は彼、記憶喪失みたいでホロウの森で倒れてるところを私が介抱したの。今は一時的に私の宿舎で過ごしてもらってるわ。」
「…………ほぅ。」
ロベルト団長は俺に視線を合わせるように巨躯をかがめ、俺の両肩をガシっと掴む。
「ルカを助けてくれたこと、礼を言う。しかし……まさかとは思うがルカにやましいことはしてはいないだろうね?」
顔は笑っているが目が全く笑っていない、普通に怖い。
それを見かねたルカが慌てて声をかける。
「ちょっとお父さん!シエルは私の恩人なのよ?変な言いがかりをつけないで!」
「し、しかし……年頃の娘が男と一つ屋根の下ファンタジーが始まれば何かが起こるかは明白じゃないか!!」
「だからまだそういう関係じゃないって!」
「まだ!?まだとはどういうことだ!ルカ、まさかこの男のことを!?」
「…っ!べ、べつに、いいじゃない。お父さんには関係ないよ!」
「いいや!!関係大ありだ!!顔を赤らめて何が関係ないだ!!」
ルカとロベルト団長は俺のことで言い合いを始めてしまった、当の本人の俺が止めづらい状況だ。
しかし時間は刻一刻と迫っている、俺は頃合いを見て話しに割って入る。
「ロベルト団長!今日はとても大事な話がありまして来ました!」
「娘はやらん!かえりたまえ!」
もうやだこのおじさん、話が全くかみ合っていない。
らちが明かないと思い俺はカバンに入れてあったクエスト依頼書と、ホロウの森で見つけた魔術印をテーブルの上に取り出した。
「むっ、これは?」
「ここ最近多数発行されていたクエスト依頼書と森で見つけた罠をいくつか拝借してきました。」
俺はこれまでの経緯やギルドの怪しいクエスト依頼、そのクエストに関する場所に仕掛けられた罠などについて説明した。
「いや、すごいな。確かに考えてみるとこれは冒険者ギルドを狙われている可能性が高い。それに納得いったことがいくつかある。」
「何か心当たりがありましたか?」
「最近、森でゴブリン族の
ロベルト団長は顔をしかめ少し考えると話を続けた。
「このことは他の誰かに話したかね?」
「ミリアには伝えたわ、クエスト依頼書は彼女から借りてきたから。でもお父さん、ミリアは協力してくれてるだけなの!」
「わかっているさ、とやかくギルドに告げ口をしようなどとは考えておらんよ。彼女はお前の姉みたいなものだからな。しかし正直なところこれだけではなんとも言えないというところだなぁ。」
「ロベルト団長、騎士団の王都への帰還を1日遅らせることはできませんか。何かよからぬ動きがあるのは確かだと思うのです。」
そもそもゴブリン族の都市侵攻が確実に行われるのか、俺自身確証は持てない。
証拠はそろってきてはいるが、ゲームでのストーリーと同じようにこの世界の歴史が動くのかなんてわかるはずがないのだ。
「少し考えさせてくれ、残された時間はわずかだろうから返事は近いうちに行う。ただし引き続きあやしい動きには我々も警戒しておこう。」
ロベルト団長はそう約束してくれた。
伝えるべきことは伝えた、あとは団長の判断を信じるしかない。
俺たちもやるべきことが残っているため、駐屯所をあとにした。
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