4話 1日の終わり
食事を終え、俺は先にお風呂に入らせてもらいルカの替えの服を借りて部屋の床に座り込んでいた。
さすがに一つしかないベッドを無許可で占拠するわけにもいかず、入浴中のルカを待つ。
「ふぅ、いいお湯だった。」
風呂上がりのルカは濡れた髪やボディラインがよく見える寝衣がとても魅力的に見えた。
あまりジロジロ見るのはいけないと思い、早速本題を切り出す。
「ルカ、俺は床で寝るから毛布か何かあれば借りてもいいかな?」
ルカは一瞬考えるようなそぶりを見せつつも、ベッドに横になると「おいで」というかのように自分の隣をパンパンと手で叩いている。
「今の季節は冷え込むんだから床で寝たら風邪をひくわ。遠慮しないで、こっちに来て。」
ご本人からの許可がおりましたため、俺はベッドの前で深々と一礼し「失礼致します」とささやきながらルカの毛布に侵入した。
その様子を見たルカは声を出して笑っているが、俺は真剣そのものだ。
こんなに緊張したのは、弓道の全国大会で一番手として大前で弓を射った時以来である。
女子と1つのベッドで就寝するなど、男としては戦場に赴く戦士となった心持ちなのだ。
そんな馬鹿なことを考えていると、ルカは俺に毛布を優しくかけ直すと、ぎゅっと抱き寄せる。
高鳴る心拍に震えながら俺はルカの顔に目をやると、彼女は涙を浮かべていた。
「今日はありがとう、本当に怖かった…。」
その言葉を聞いて俺は我に返った。
そうか、俺は自分のことで精一杯だったけど、彼女も暴漢に襲われたのだ。
彼女もまだ15歳だ、そんな少女を俺は自分のせいで危険にさらすところだった。
(ルカは命の恩人だ、君のことは絶対に守ってみせるよ。)
言葉には出せなかったが、心の中でそう呟いた。
これからどうなるかはわからないけど、ルカはこの世界で初めて手を差し伸べてくれた人だから俺のできる限りのことはしたい、そう思った。
目が合うとルカは、俺に優しくほほ笑み返した。
長い1日が終わり、ようやく安寧の場所を見つけることができた。
「シエル、かっこよかったよ。」
薄れゆく意識の中、俺は額にやわらかい感触を感じながら眠りについた。
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