オカルト研究部の『人生暴露ゲーム』

「勝負の内容は簡単。人生暴露ゲームで先にゴールした人が勝ち」

「じ、人生暴露ゲーム?」


 暴露がついていない方は知っているけど、なんだそのパチモンみたいなボードゲーム。ていうか、オカルト研究部なんだよな……?


「そ。これを見てごらん」


 机の下からボードゲームを取り出す天笠さん。

 確かにタイトルは【人生暴露ゲーム】と書かれていた。


 ちゃんとスゴロク仕様であり、マスには“〇〇を暴露しろ”など書かれている。結構過激そうだぞ。


 けど、待てよ。


 これで天笠さんの秘密を知れたり……なんなら、オカルト研究部の石黒さんや二条城さんのことも知れるかも。

 更に参加すると思われる菜枝のことも。


 いやま……菜枝のことは大体知っているんだが、それでも秘密はあるだろう。この機会に話してもらおうか。



「面白そうだね、天笠さん。でも本当にいいのかい? 知られたくない秘密とかあるだろ」

「そうだね。聞かれると困るな~。スリーサイズとか」

「そ、それは男としては知りたいけど……」

「セクハラかな」

「冗談だって」

「うそうそ。でもね、この人生暴露ゲームはルール上、マスに止まったら必ず秘密を言わなきゃならないんだ。事細かにね」


「なるほどね。言わなかった場合は?」


「人生が終わる。つまりリタイアだね」



 なんだかシビアなゲームだなぁ。

 どうしても答えたくない場合は棄権するしかないようだ。



「じゃあ、準備するね」



 石黒さんが人生暴露ゲームのパッケージを開け、テーブルに必要なボードやら駒やら並べていく。

 この手際の良さ……まさか、経験済みか?



「あ、あの兄さん。わたし、がんばりますねっ」



 菜枝はやる気満々だ。

 いいのかなぁ……秘密を明かさないといけないのに。


 いざとなったらリタイアしてもらうしかないけど。


 いよいよ準備も終わり、駒がスタートに置かれた。


 順番をじゃんけんで決めた。


 天笠さん→二条城さん→菜枝→石黒さん、そして俺という順となった。


 五人でのバトル。

 いよいよ始まるぞ。



「じゃあ、私のターンだね」



 いつものダウナーな感じで天笠さんは微笑む。

 手には六面のサイコロ。


 ゴールマスまでは五十マスほどある。

 到達までには、えげつない暴露内容が多い。なるべく踏まないよう進みたいところだ。

 天笠さんはサイコロを握り、手慣れた手つきで転がした。


 サイコロはコロコロと回転して【2】の目を出した。


 駒を進める天笠さん。

 そのマスは『将来の夢』と書かれていた。さすがに最初は緩いか。


「さあ、天笠さん。将来の夢を暴露してもらおうか!」


「神堂くん、なんか気が強いね。これくらいなら構わないさ。うん、そうだね。将来は神堂くんの愛人かな~。ほら、キミといると退屈しないし、人柄が好きなんだ」


 冗談交じりに笑う天笠さん。

 俺は思わずドキッっとした。

 ついでに菜枝の目が死んでいた。


 やばいって!!



「……兄さん」

「菜枝、落ち着け。俺はなにも言っていない!」

「そうですけど、むぅ」



 このゲーム、初っ端からカロリー高いぞ。

 最初は緩いと油断していると、結構痛い目を見そうだ。


 次は二条城さん。


 素早くサイコロを投げ――【4】が出た。


 ぽんぽんと駒を進めていく。マスには『初体験はいつ?』とあった。


 その瞬間、二条城さんは顔を真っ赤にして固まった。


 い、いきなりこんな暴露マスがあるとは……結構鬼畜だな、このゲーム。



「二条城さん、初体験を話すかい……?」



 一応、仕切り役として天笠さんが進行してくれた。しかし、男の俺がいる目の前で果たして言えるかどうか。



「……う。は、はい……。えっと……ないです。なので詳しくは話せません」



 な、なんと!

 凄く恥ずかしそうに答えきったぞ。

 今にも顔から湯気がでそうだけど……いや、出てるな。



「分かった。二条城さん、セーフ」



 と、天笠さんは審判を下す。

 なるほど、これがこの人生暴露ゲームの本質か。……恐ろしいな。


 さて、次は菜枝のターン。



「では、わたしですね」



 サイコロを手に持ってためらいなく投げる菜枝。その目は……。



「ちょ、菜枝」

「に、兄さん……わたしも【4】です……」



 二条城さんと同じマス!

 よりによって!!


 これは……菜枝の初体験とかそんなのダメだろ!!

 しかも詳しく答えなきゃならないらしいし……早くも菜枝は脱落か!?

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る