平民の俺がこっそりつよつよモンスタを狩り続けていることがバレて、貴族や王族の美少女たちが寄ってくる件

なるとし

第1話 兄妹の会話は新たな嵐を引き寄せる


夜明け




 住んでいる家から少し離れた海辺で俺は狩をしている。


「むうううう!!!」


 上級モンスタである王タコが雄叫びをあげ、俺を飲み込もうとその巨大な触手を伸ばしてきた。


 でも、


 俺は簡単にその攻撃を避ける。


 月明かりだけが唯一の光である今、普通は王タコの猛烈な攻撃を躱すことなどできまいが、俺は、


 ナイトビジョンゴーグルをつけているから奴の動きは全部把握することができる。


 そいて、


「タンクブレイカー召喚」


 そう唱えた俺の目の前に武器が現れた。


 これは、転生前の世界の武器に魔力を込めて改良したモノだ。


 俺は、早速それを掴んで、


 王タコの頭を狙って、


「食らえ!!!」


 俺の大声と共に放たれた魔力を帯びる砲弾が凄まじいスピードで王タコの頭を直撃して、そのまま沈む。


「ぎゅううう……」


 俺は周りに人がいないことを確認してから、飛んできた王タコの肉の塊を千切ってため息混じりにいう。


「平民が上級モンスタを倒したとなると、どえらい騒ぎになるからな。ギルド協会には持っていけないか……クエスト受ければ結構なお金がもらえただろうに……」


 と、俺は自嘲してから、家に帰る。


X X X


 翌日の夜


 ボロすぎる家


「お兄様!!ただいま!!ええ?なんですか!?この丸っこい食べ物は?」

「ああ、これはタコ焼きという食べ物だよ」

「またお兄様が新しく開発された料理ですか!?」

「ま、まあな」

「はあ……美味しそうですね……(じゅるり)」


 魔法学園から帰ってきた妹は俺が作ったタコ焼きを見て、目を光らせる。


 タコ焼きは日本、特に関西を代表するソウルフードだが、ここは異世界だ。当然タコ焼きなど存在するはずがない。


 だから、日本人には申し訳ないが、ここは俺が作った体にしてもらうぞ。


「昨日、王タコをやっつけたから、記念に持っきて、このタコ焼きというものに入れてみたんだ。美味しいよ」

「ひゃ、ひゃい……いただきます!」

「おい、リナちゃん!手洗ってから食べなよ」


 本当にリナ、大丈夫かな?


 リナが通っているセントラル魔法学園は、この世界で最も有名な名門学園である。

 

 魔法のみならず、あらゆる学問を研究し、一流の人じゃないと、絶対入学できない最難関学園という認識だ。


 最難関ゆえに、赤ちゃんの頃から、徹底的に仕込まないと一次試験もパスできないらしい。


 だが、俺は日本で死ぬ前までは塾講師をやっていたし、この世界の学問レベルは正直日本の中学生が習うようなレベルばかりだ。


 それにリナは魔法も使える(俺もだが)。


 異世界小説が大好きだった俺は、ありとあらゆる魔法にも精通。


 おかげで、昔から、リナに色々教えていくうちに、彼女はセントラル魔法学園に入学できるほど優秀で強くてとても可愛い女の子になった。


 なんせ、平民があの学園に入学すること自体初めてだもんな。


 リナは

 

 一番優秀な成績で入学した。


 公爵令嬢も王族の血を引き継ぐ王子も彼女には敵わなかった。


 実技においても、理論においても文句なし。


 面接官の話を完全論破し、戦闘能力を測る実技テストでは、学園側から選ばれた上級騎士と戦うことになる。


 が、その騎士とやらはリナに傷ひとつ与えられなかった。


 平民の小娘に負けてたまるかと、セントラル学園所属のその騎士が怒り狂ってリナに襲いかかるも、


 その騎士は、


 リナの魔法によって、一生消えない傷を負ってしまった。

 

 学園側は、俺たちにその騎士の暴挙に関して謝罪をし、学費を割り引いてくれた。

 

 それでも、めっちゃ高かったんだよな。


 俺が感慨深げにリナを見ていると、


「あ、あの……お兄様」

「ん?」

「おかわりを」

「お、おう。俺の分まで全部食べちゃったな」

「お兄様の作るものがあまりにも美味しくて……」

「まあ、育ち盛りだもんな。んじゃ、持ってきた王タコ、全部使っちゃおっと」

「ふぁい」


 俺とリナはタコ焼きをたらふく食べた。


「ごちそうしゃまでした……」

「ふふ、明日も学校あるし、ゆっくり休みな」

「あ、そうだ」

「?」


 リナは何か思いついたらしく、急に暗い顔で横にある鞄をガサゴソして、紙を一枚俺に渡した。


 それを受け取った俺は、書かれた内容を確認する。


「えっと、来学期の学費についてのお知らせ……な、何!?」


 入学時に払った学費より2倍高い。

 

 セントラル学園は一流たちが集いし学びの場。

 

 当然学費も超一流だが、今回はさらにそれの2倍である。


「えっと……来学期は実技科目が多くて、高いらしいです」

「うん……わかった」

「や、やっぱり私、学園やめます!」

「え?どうしたリナちゃん!?」

「お兄様には苦労をかけたくありません!この学費分のお金があれば、私とお兄様は幸せに暮らせるのに……」


 俺は落ち込むリナの頭を優しく撫でて口を開く。


「そんなの、気にせんでいい。故郷にいる父さん母さんも一生懸命リナちゃんを応援してくれてるから」

「……でも、お兄様はそれで満足ですか?」

「ん?」

「私より賢く、お強いのに……レベル4以上の上級騎士や魔法使いじゃないと倒せない王タコだって余裕で倒せるのに、私の学費をのためにいつもいつも一生懸命働いて……」

「なんだ。それを心配していたのか」

「……」


 リナは目を少し潤ませて、俺を上目遣いする。濡羽色のサラサラした黒い髪に透き通った鮮やかな紫色の瞳。


 そして、


 女であることを強く主張する巨大なマシュマロ。


 俺はそんな彼女の瞳を真っ直ぐ見つめて口を開いた。


「俺はリナの輝く姿を見ることが好きなんだ。もっといろんなことを見て、いろんな事を学んで、強くなれ。そのためなら、俺は努力を惜しまない」


「っ!!お兄様……」


 正直若干の罪悪感はある。


 もちろん、99%は本音だ。


 俺はリナを溺愛している。


 だけど、残りの1%。


 俺はスローライフを送りたい。


 前世での俺は塾講師として働きすぎて過労死してしまった。


 確かにチート級能力をもらったが、俺は胸躍る冒険がしたい訳ではない。


 俺はリナにとってのいい兄いれば、それで十分だ。


 リナよ、前世での俺は本当に辛かったよ。


 だから、こんな目立ちたがらない格好悪いお兄ちゃんを許してくれ。


 だから、俺は隠れてつよつよモンスターなどを駆りながら妹とスローライフを堪能しているわけで(学費超高いが……)。


 俺の気持ちを知ってか知らずか、


 

 リナは、急に俺の胸に飛び込んだ。


「り、リナ」


「お兄様……」


「ど、どうした?」


「私、今日も汚されてしまいました」


「……」


「公爵家の御子息、王家の王子様……どの方も私の胸ばかり見て……幸いなことに、私に優しくしてくださる高貴な女性の方が、守ってくださるのですが……」


「……」


「獣の視線によって汚された私をどうか、綺麗にしてください。お兄様」


「わかった。仕方ないな」


「ふふ、お兄様、に行きましょう」


 最近、俺の妹のヤンデレ具合がやばくなりつつある。


 俺たちは、早速俺が作った露天風呂へと向かう。


「はあ……気持ちいい」

「まあ、ボロくて狭い風呂だけどな」

「でも、お兄様と一緒だから私、幸せです……」


 俺たちはタオル一枚をつけた状態でくっついている。


 うん。


 リナが一方的に俺に自分の体をくっつけているだけなんだが。


 リナの爆のつく真っ白なマシュマロが俺の素肌に触れた。


 でも、


 仕方ないことだ。

 

 リナはセントラル魔法学園の中でも一番優秀な貴族たちが集うクラスで勉学に励んでいる。


 一流貴族だらけの空間に平民が一人。


 リナがそんなプレッシャーに耐えて学年一位のままあり続けているのは、この風呂のおかげとも言えよう。


 さすがに兄弟でこれはないと一度断ったが、その時リナの成績が急に落ちてきて、学校側から三者面談を迫られたことがある。なんとか誤魔化せたがあの時は本当に大変だったな。


 こんなボロすぎる小さな家に二人だけで暮らしていることがバレれば、あまりよろしくない。


 よし、

 

 リナがもっと胸を張って学業に専念するために、お兄ちゃん人肌脱ぎましょうか。


 と、思いながら俺は、濡れたリナの頭をなでなでした。


 リナはまるで子猫のようにふにゃふにゃしながら大人しく俺の手を受け入れる。体と表情にギャップがありすぎるな。


 風呂を済ませた俺たちは牛乳を勢いよく飲んでから部屋に戻った。


 すると、濡れた髪を揺らした寝巻き姿のリナがはたと目を見開く。


「あ!そういえば、通話魔道具を切るのを忘れてました!」

「通話魔道具?」

「はい!いつも親切にしてくださる方からいただいた高いもので、離れているところからも音声でのやりとりができる不思議な魔道具です!」

「お、おお……」


 リナはいそいそと鞄の中に手を突っ込んで光り始める石みたいなものを握り込む。妹がその魔道具に力を入れると、やがて光が消えた。


 俺は心配になり


「もしかして、俺たちの会話、あの方に流れたんじゃないのかな?」


 すると、妹は顔を左右に振って口を開く。


「大丈夫です!エレナ様の通話魔道具からの接続は感知されてませんから」

「お、おう」


 いつも俺の妹に親切にしてくれる人ってエレナ様って言うんだな。


 うん?


 エレナ?


「エレナって、王国一強いと言われるあのフィーベル家の公爵令嬢?」

「はい!」

「……」


 お兄ちゃんちょっと不安になってきたかも。








X X X



リナに親切にしてくれる人(エレナ)side



「……バレるところだった」


 エレナは息を弾ませていそいそと通話魔道具を切った。

  

 綺麗な模様が刺繍してある高級寝巻きを着ている彼女は驚いたように呟く。


「平民なのに王ダコを倒せて、妹の学費を稼ぐなんて……しかも、リナよりも強くて賢いか……」


 彼女は、好敵手を得た狩人のように口角を吊り上げて、








 

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