第3話 甘さ、故に

恥ずかしいとはどういう意味だ?

俺は首を傾げながら.....屋上に設置されているベンチに腰掛けながら。

ミクと一緒にご飯を食べる。

一昔前だったらあり得なかった光景だな。


「ねえ。私のご飯美味しい?」


「.....それは.....まあ.....確かに美味しいな。これ.....ミニハンバーグとか」


「全部お手製ですよ〜」


「マジかお前.....頑張ったな」


いつか君に.....じゃなかった。

私が好きなメニューだからね、と言いながら笑顔を浮かべるミク。

しかしコイツ野菜中心じゃ無かったか?

こんなハンバーグとかそんなの.....合わないとか言っていた様な。


「野菜中心だったろ。.....何でこういうの食べているんだ?」


「そ、それは.....ざ、雑食になったんだよ」


「.....雑食になったってこんな中途半端な感じの年齢で?」


「そ、そう。乙女には秘密が沢山なの」


「.....ふーむ。そうか」


そう言われるなら仕方が無い。

というかそういう事なんだろうと思う。

思いながら俺はプチハンバーグや。

煮物、卵焼き、魚。

それを食べていく.....っていうか。


「良いのか?これ食べて。.....俺の冷食ばっかだぞ」


「わ、私はこれでも良いから。全然構わない」


「.....???.....そうか。.....なら良いが.....」


俺はよく分からないな、と思いながらも。

喜んで食べている様なので口出しはしないで居た。

するとミクが、ね、ねえ、と聞いてくる。

今度は何だろうか。


「その。アーン」


「.....は?」


「.....く、口に入れたい。.....その。.....昭仁の.....」


「逆に何でそれをしなくては!?」


「.....な、なんでもいうこときく券.....」


そんな時にも使うって嘘だろコイツ.....。

俺は思いながら赤くなる。

それから真っ赤になっていると。

は、早くして、と震えながら箸でプチトマトを掴んでいる。

俺は、あ、ああ、と言いながらそのまま食べる。


「.....甘いな。このプチトマト」


「庭にあるから。.....じ、自家製だから甘いでしょ」


「そ、そうか」


俺達は赤くなりながらそのまま俯く。

何故ここまでしてくるのだろうか。

俺はさっぱり分からないまま。

そのままミクを見る。

ミクはモジモジしながら俯いていた。


「.....み、ミク。なら俺もしようか?恩返しで」


「しなくて良いよ!?は、恥ずかしい!」


「じゃあ何でお前はしたんだよ!?」


「私は良いの!私は.....良いの!」


「2回も言うな!?」


意味が全く分からない。

俺は思いながらも甘いプチトマトの感触を味わいながら。

そのままご飯を食べ進める。

すると、ねえ。昭仁、と聞いてくる。


「.....お母さん.....帰って来ないの?まだやっぱり」


「.....そうだな。.....失踪したまんまだ」


俺の家は父、妹、俺の家庭だ。

母親が.....失踪している。

1年前からずっと失踪したままだ。


その事をミクは数ヶ月前に知っている。

それは何故かと言えば。

話したく無かったのもあった。


「.....何をもってして消えたのか分からないからな。自転車ごと」


「.....それで.....その。.....料理とか苦手なんだよね」


「まあ変わらずだな。.....俺も妹も父さんも料理しなかったから」


「.....じゃ、じゃあ.....その」


俺になんでもいうこときく券を突き出してくる。

それから、私は貴方のお弁当をちゅくる!、と宣言した。

噛んでいるぞオイ。

俺は目を丸くしながらミクを見る。


「痛い.....!」


「.....ハッハッハ。.....有難うな。ミク。.....でも.....って、え!?俺の弁当をか!?」


軽く聞き流していたけど。

何を、ってかそんな馬鹿な!?

俺の弁当を毎日作るってか.....!?

極端に真っ赤になる俺。

そして慌てる。


「ど、どうして!?」


「私にはこのチケットがある。だから昭仁はその間はキャンセル出来ないよ」


「馬鹿な!?よく考えたが1回限りの筈だぞ!その券は!」


「そんな事は当時聞いてないから。.....だから何度でも使うし作るよ」


「いやいや.....!?」


そして俺に強く宣言するミク。

俺はその姿を見ながら赤くなる。

何でそんな事になるのだ。

考えながら俺は発汗して汗を流す。

ヤバい.....心臓が。


「私の事.....舐めてもらっちゃ困るよ」


「い、いや。舐めてはない。.....だけど冗談だろお前」


「何で?2人分作るぐらい簡単だから」


そ、それに.....出来れば夕食も作りたい.....、と聞こえた気がしたが。

声が小さくて聞き取れない。

俺は?を浮かべながらミクを見る。

ミクは、も、もう!乙女に追及禁止!、と宣言した。


「お、おう?」


「私が昭仁にやりたい事はキャンセル出来ないの!良い!?」


「お、おう.....」


何故?

俺は人差し指を立ててくるミクを見ながら。

そのまま考えるが。

答えはまるで出なかった。

逆に恥ずかしさが増してしまう。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る