始まりの向こう
花楠彾生
一等星
ある遠い空に、一つの星が漂っていました。
その星はとても小さく、とても暗い星でした。
そして、いつも一人でした。
ある日、星はおおぐま座に聞きました。
「おおぐまさん。貴方は何故そんなに大きいのですか?」
おおぐま座は答えました。
「俺は今忙しいんだよ。お前みたいな小さな星に構っている暇は無い」
小さな星は悲しみました。
そして、南の空へ旅立ちました。
またある日、星はさそり座に聞きました。
「さそりさん。貴方はどうしてそんなに明るいのですか?」
さそり座は答えました。
「今はちょっと時間が無いんだよ。君みたいな暗い星に構ってられないんだ」
暗い星は悲しみました。
そして、東の空へ行きました。
またある日、星ははくちょう座に聞きました。
「はくちょうさん。貴女はどうしてそんなに大きくて明るいのですか?」
はくちょう座は答えました。
「さあ。私にも分からないわ。何しろ、神様から与えられた姿がこれだったんだから」
星は聞きました。
「僕も大きくて明るい星になれますか?」
はくちょう座は答えました。
「知らないわ。ただ、私がこんなに明るいのは、神様から少しだけ光を貰っているからなのよ」
そう言ってはくちょう座は目を閉じました。
小さくて暗い星に、少しだけ希望が湧きました。
そして、もっと東に行きました。
ある日、星は月に聞きました。
「神様。どうして僕はこんなに暗いのですか?どうして僕はこんなに小さいのですか?」
月は答えました。
「それは私が君に与えた姿だよ。それに何か文句でもあるのかい?」
星は悲しみました。
でも、諦めませんでした。
「僕も、おおぐまさんやさそりさん。はくちょうさんみたいに大きくて、明るくなりたいです!」
小さくて暗い星は必死に訴えました。
「何度言っても無駄だよ。それが君に相応しい姿なのだよ」
「でも僕はもっと明るくなりたいです!ちょっとでも良いから!」
月に何度同じ様に返されても。何度も訴えました。
星が何十回も訴えた頃、月は答えました。
「分かった分かった。それなら君は私の近くに居ればいい。そうすれば、私が光を分けてやる。大きくはなれないが」
星は喜びました。
「ありがとうございます!」
そう言って星は月の近くに留まりました。
星の体はみるみる輝いていきました。
それは遠くから見ても分かるぐらいに。
星は、一人ではなくなりました。
月と明るい星は、何十年、何百年、何億年も離れる事はありませんでした。
後に、明るく光り輝く小さな星は、「地球」という惑星に住む「人」という生物によって、『一等星』と名付けられ、親しまれましたとさ。
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