第EX4葬式 下
「……
数人の坊主の読経と
ギシギシと音を立てて軋む。パイプ椅子に腰かけていた。
棺とその奥にある献花台のような場所には、故人の遺影が飾られている。
満面の笑みを浮かべたアイツを見たのは、いつ以来だろうか? 少なくともここ半年はアイツの笑った顔なんて見ていない。
「
アイツはサブカル系全般に博学で兎に角、歴史と神話が好きだった。
俺がとある
「
「あぁ西遊記の……」
「そうそう、中国の
三蔵法師は正しい
「授業で習ったような……習わなかったような……」
「特撮ヒーローでもあったじゃん」
「え、何それ?」
「レイン〇ーマンのオープニングで
「いつの特撮だよ」
「月光〇面の次だから……1972、3年?」
「古すぎるだろ……」
「何で知ってるんだよwww」
「昔特撮が好きだったんだよ。今は全然みてないけど」
アイツは少しズレた所はあったけど、悪い奴ではなかったし面白い奴だった。
アイツを殺したのは俺達だ。
確かにアイツは音を外すし、下手だったかもしれないけど……誰よりも楽しそうに、嬉しそうにスティクを握りしめて叩いていた。
ライブハウスの空気を、観客を盛り上げているように見えるのは、ヴォーカル《VO》の中村だが、その下地になる雰囲気を作っていたのは、ずっと笑顔でドラムを叩いていたアイツだった。
そんなアイツを直接追い詰めたのは、ヴォーカル《VO》の中村だがその決定に異を唱えなかった俺達は、否。俺は同罪だ。
そんな事を考えていると、般若心経は終わりまじかになる。
「
読経が終わると、金属製の大きな椀のような物を叩く。
ゴーンと言う
読経が終わり僧侶がまず焼香台で香木の破片を掴み炭の上に乗せる。ムクムクと煙が立ち上がり、たちまち何とも言えない匂いが会場を包む。喪主、近親者となり続いて俺達の番が来る。
喪主と僧侶に深く、深く一礼をして、
時期のせいか、ビニール製のケツと背中の部分がヒンヤリと冷たく身震いしてしまう。
俺が出来る事はお前の事を想い。罪を背負って生きていく事だけだ。メジャーの舞台で、いつかお前の遺影でも飾りながらライブMCで笑って話せるようになりたい。
坂本はそう決意して葬儀を終えた。
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