第28話インフラを整えよう上




「確かにその通りかもしれない。他にあるか?」


 意見を求められたので、局中法度をアレンジしたものを提案する。


「騎士道に背く事、軍から脱走する事、勝手に金策をする事、私闘をする事、間者と通じる事、以上をした者は打ち首に処す。などは如何でしょうか?」


 この世界に、軍法が存在するか分からないので心構え程度のモノから始める事を提案する。


「騎や兵士のだけを対象にした法を作るべきと言う事か……これは直ぐにでも出来るな検討しよう……」


この世界はロクな軍法すら無いのかよ……慣例や慣習を法としているのだろうか? まぁソレを乗せ明文化するだけでも幾分か分かりやすくなる。前世でも判例と言う慣例や慣習で、この罪ならこの程度の罰と決まっているのだ。それが出来たと思えば少しは近代化したと言えるだろうか? 三権が分立してないんだ。まだ仕方ないか……


「どうせ他にも意見があるんだろう? もったいぶらずに全て話せ、それで計画を立て予算配分を決める……」


「ありがとうございます。では先ずは商業と工業の発達を促すために道を整備しましょう。道と言うのものは重要で、人の動きは道を必ず用いますから……道路の整備と治水を先ずはするべきかと……」


「治水は兎に角人手と時間と金がかかる……そこはどう解決するつもりだ?」


 当然こういう意地悪な質問が来ることは予想している。

軍隊には、工兵と言う兵科があり、コレは現実世界では歩兵、砲兵、騎兵と並び四大兵科と呼ばれ16世紀ごろ確立したと言われている。

 工兵の主な任務は戦闘前の陣地の建設から、戦闘中における歩兵の支援など多岐に渡り、正に軍の「何でも屋」的な性質が強い存在であり、近代の軍隊にとって重要な兵科である。

 また道路・橋・ダム、城や要塞の建設や維持は、アメリカ陸軍工兵は、ダムや河川の工事が平時における主要な任務となっている。総合建設業者ゼネコンが存在しない発展途上国では、公共施設や道路の建設に工兵が使用される事がある。自衛隊でも、草創初期には部隊訓練の一環として「土木工事等の受託」として頻繁に行われていた。歴史がある。

 ここは俺も先人に習い歩兵にやらせる事にしよう……


「治水も道路工事も歩兵を用いるつもりです。力仕事ですから体力が付き軍の練度も上がります。軍馬も大量に必要になるでしょうが、馬房に入れておくよりは幾分か有効活用出来るでしょう……そして土木工事が得意な兵……工兵を育成でき、城塞を早く仕上げる事が出来るようになれば、軍事的にもメリットが生まれます」


 現代日本人の感性を持つ俺にとっては、騎士の誇りである馬は10人の人間相当の飯を食う割に、戦場でも平時でも役に立たたない生き物でしかない。

 江戸に転生したとしても武士には刀を捨てさせ、火縄銃に銃剣でも付けさせるか槍でも持たせ。スペイン王国の軍事編成である

スペイン方陣テルシオを主にして長薙刀パイク兵と銃兵で軍を組織してやる。それぐらい誇りや名誉よりも実利優先と考えているので、騎乗用の軍馬にも荷物を引かせてやる覚悟だ。

 多少騎士に嫌われようと、早く実績を上げある必要があるのだ。これも致し方のない犠牲だ。


「……」


 父パウルはただ黙る訳ではなく顎に手を当て、瞳を閉じ眉間にしわを寄せて熟慮しているのだ。

 あと一押し、もう一押しでこの政策を押し通すことが出来る!!


「治水には大きなメリットが四つあります。


 まず一つめは食糧確保。

溜め池を作る事で農地を拡大出来たり、日照りが起ったとしても対策がとれます。溜め池で魚を養殖する事が出来れば、安定して新鮮な魚を食べる事が出来き、冬の蓄えも容易になるでしょう……。


 二つめはリスク軽減。

河の氾濫による疫病の蔓延や、死亡するリスクを減らすことが出来るのは、大きなメリットでしょう……


 三つ目は新たな道の形成。

河川を用いれば、より早く大量に上流から下流に物資を運搬する事が出来ます。これは料金を払ってでも商人は利用するでしょう……


 四つ目は雇用の創出。

工事をすれば徴収した税がこの土地に落ちる事になり、経済が活性化します。経済がうるおえば人と物が集まる事になります。そうすると水が大切になる事は明白でしょう」


 ” 古代エジプトのピラミッドは公共事業である” と言う説がある。

農閑期や国家団結のシンボルと言う話もあるが、今回は農閑期に行う公共事業や失業者対策として行われたと言う前提の、少し間違った解釈で進めたい。

 【暗黒の木曜日ブラックマンデー】に端を発した。世界恐慌による大量の失業者をダムや公共事業を行う事で、雇用を創出し乗り切ろうとし、イギリスの経済学者ケインズの思想であるマクロ経済を取り入れ、新規まき直しニューディール政策を行った、第二次大戦時の米国大統領フランクリン・デラノ・ルーズベルトの政策を合せたもので、何の目新しさもない。

 だが、先人の切り開いた後の道と言うモノは歩きやすく失敗し辛い。



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