第24話 プリンスエドワード島4

 9月1日。

 再び同メンバーでレンタカーで島巡り。今日は昨日とは逆に南東の海岸沿いを走る。ドライバーは引き続きJanis である。

 昨夜の一件で私が Janis に気がある事が分ってしまい、気を利かされて2人に助手席を譲られたのは嬉しいやら恥ずかしいやら。まあ好意には甘えよう。それにしても、昨夜パンチを食らったのは頬あたりかと思いきや口付近だったのであるとみえ、昨夜以上に歯にダメージを感じ食事時歯を嚙み合わさないよう気を使う。たまに油断をすると激痛が走る。この状態が1か月近く続いた。


 途中の海岸を歩いたが昨日のキャベンディッシュの海岸のように楽しく盛り上がれない。みんな昨夜の事が頭にあるようだ。特に Janis が静かなので、歩きながらさり気なく言ってみた。


"Janis is quiet."


Janis が反応する。

"Sometimes, bright. sometimes, quiet."


Janis らしくないおとなしさだ。でも私の精か。酔っ払いに顔を触られた事より、気楽な同宿者だったはずの日本人が自分に気があると分かった事の方が空気が淀むのであろう。牧師さんも教会での説教と違って、具合が悪そうだ。参った。

 ここでは、20枚ほど写真を撮った。


 ゲストハウスに戻ったら車庫が空いてなかった。取り敢えず外に停めたが、このまま外に停めて大丈夫だろうか? Gary が宿主に聞きに行ってくれた。帰って来て、私の方には見向きもせずに、ドライバーの Janis に一言。


"No Problem. Rai is staying here ... all night."

"No, Gary.”


 Gary のジョークで少し和んだようだ。


 

 9月3日。

 今日は寂しい日だ。

 Janis, Sharon はトロントへ戻り、日常生活へ。私は旅の継続で、キャベンディッシュへ。


 朝、ちょっと驚いた事があった。

 Janis からキャベンディッシュへは観光バスで行けると聞いていたので、さよならの前にコースを確認しておこうと思い、洗顔後2人の部屋を訪ねた。ノックしたらいつものJanis らしい声がした。

"Yes."


 ドアーを開けて中に入ろうとして足が止まった。何とJanis は下着一枚だけでメークしながら、微動だにせずにこちらを睨んでいた。


"Sorry."

 即、部屋から出た。

 こんな時、 "Wait." とか言わないのだろうか? 日本人だったら、”ちょっと待って” とか言うと思うが。お国柄か。そもそも、鍵を掛けずに裸になるかな⁉ 女性部屋も鍵は無いのかな?


 午前10時発のバスで2人は出発するので、Gary と2人で見送りに行った。これでもう逢う事はないと思うとJanis との別れはすごく寂しかった。

 その後、今度はGary に見送ってもらって、私はキャベンディッシュ行きの観光バスに乗った。

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