第4話 サンシャイン・スキー場

 バンフには3つのスキー場がある。サンシャインスキー場、マウントノーケイスキー場、それにレイクルイーズスキー場である。

 最もポピュラーなのはサンシャインスキー場だ。マウントノ-ケイは小ぢんまりしたスキー場でスキー客も少ない。一方、レイクルイーズはバンフの街から50数キロ離れたところに位置しており、少し遠いが一番大きく自然味のあるスキー場だ。


 スキー道具一式は日本から持参したので買い足すものは何もなかった。北海道で買ったものが全てだ。

 記念すべき海外での初滑りはサンシャインに決めた。当初は1か月の予定だったから1日券とか1週間券とか1か月券とかがあれば良いなと思っていた。ヒロのお陰で1日の生活費が4分の1ぐらいで済みそうなので4か月ぐらい滞在しても大丈夫である。いやあ助かる。

 躊躇なくシーズン・チケットを購入した。40日ぐらいで元が採れるが、シーズン・オフまで3か月ほどある。しかも3スキー場共通券になっている。


 バンフに到着した翌日早速カナダの初滑り、まずはサンシャインから。街からスキー場までバスが出ている。30~40分で到着する。バスの中から山羊が1頭見られた。後で聞いたら羊だそうである。その後毎回のように、羊の集団が見られた。大きな角を有しているのは雄だ。一見、山羊のように見えるのは雌だそうだ。野生の羊・大角ヒツジ〔Big horn Sheep〕であった。


 サンシャインはその名の通り、割と天気に恵まれる事が多いようだ。カナダのイメージとは逆に暖かくて気持ちが良い。ゴンドラはなくすべてペアーリフトだ。日本の場合、相手がいなければ一人で乗ることが多かったが、流石にカナダは違う。必ず相手を見つけて一緒に乗る。

 様子を見ていると、"Single?" と言って近くの1人らしき人に声をかけ、そうであれば、一緒に乗る。あるいは、"Single!" と大きな声で意思表示をし、近くの人に見つけてもらう。

『郷に入っては郷に従え』だ。若干勇気が要ったが、チャレンジすることにした。流石にいきなり、"Single?" は無理だった、気の弱い私。先ずは勇気を出して、"Single!" と意思表示。何と一発で成功。近くに居た若者が  "Single" と言って声を掛けてくれた。『シングル』でなく、『スィングル』と上手く発音できたようだ。2~3度頑張っていれば2mぐらい離れたところからでも声を掛けてくれる。カナダ人は明るくって良い。

 慣れっていうのは恐ろしいもので2日目ともなれば、若い一人らしき女性の近くに行き、"Single!" と声を出す事ができるようになってきた。やがて、誰に対しても "Single?" と声を掛けら

れるようになった。

 

 日本では知らない人とペアーリフトに乗った時は、無言のまま過ごす事が多い。ここでは必ず相手から話しかけてくれる。"DO you speak English?" と言わないで、いきなり英語で話しかけてくる。バンフや周辺に住んでいる日本人が多いのであろう。基本的に、日本人は英語が話せると思っているようだ。日本からのスキーツアーもあるが、彼らは彼ら同士でリフトに乗ることだろうし。


 いろんな人とペアーリフトで英会話を持ったが、"Do You speak English?" とは殆ど訊かれなかったが、"Are You a Japanese?" と訊かれる事は時々あった。その後、よく訊かれるのは、"Have You climbed Mt. Fuji?" だ。『日本と言えば富士山』のイメージがあるようだ。『ああ、一度ぐらい富士山に登っておけば良かったなあ!』とその都度思ったものである。 


 日本語で何と言うか訊かれる事も何度かあった。"Good by"、"Thank You"、"Japan"、"Snow" 等。ハワイかどっかから来ていた50代ぐらいのオッサンは、何度「サヨナラ」だと教えても「タヨナラ」としか発音できなかった。もしも"Sun Shine" を日本語で『サンシャイン』だと教え、発音を求めたら何と発音するのだろう? 「サンシャイン」か? それとも「タンシャイン」か? 

 ある若者には、普通は「アリガトウ」、でも関西では「オオキニ」だと教えたら、「オオキニ」が気に入ったとみえ、盛んにそれを繰り返していた。


 ランチは日本のスキー場ではほぼ豚汁定食だったが、ここではサンドイッチ・コーヒーが殆どだった。意外と飽きない。

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