第9話

「はわぁぁぁ~」


「ぎぃゃぁ~!!来ないでぇー!!!」


 イザベルがディズニープリンセスの如く小動物系魔物に取り囲まれており、思わずルーナはとてもメルヘンな絵面に感嘆の声を上げる。

 しかし、取り囲まれているプリンセス役であるイザベルは貴族令嬢とは思えない声を上げながら青ざめた顔で必死に扇子をブンブン振り回し、1角ネズミやホーンラビットが近付かないように威嚇している。


 パニック状態のイザベルを救うためルーナは1言呟く。


鎌鼬かまいたち


 ザァッと森の新緑の木の葉が擦り揺れる音とともに、風の大鎌が振り下ろされたような巨大な刃が一瞬の内にイザベルを取り囲んでいた魔物に達の首や身体を真っ二つに切断する。


 イザベルとルーナの間に魔物達の真っ赤な血液、身体の一部や首が弾け跳ぶ。


「きゃあぁぁぁー!!!!」


 イザベルが目を溢れる程見開きながら両頬に手を当て、空気を引き裂くような悲鳴を上げた。

 ルーナを視線に捉えたイザベルは恐怖に怯え瞳を揺らす。

 茫然とした様子でポツリと呟いた途端に意識を失い、ドサリと身体が地面に打ちつける前にルーナが飛び込みイザベルをキャッチする。そのまま地面にゆっくりと降ろす。


 暫し、顎に手をあて考えたルーナはある案を閃き、思い付きのままに土魔法でベッドを作成しその上にイザベルを寝かせた。

 イザベルへのせめてもの気遣いとして、ハンカチを頭の下に敷き満足気に何度も頷くルーナ。


 ルーナなりに白雪姫のクライマックスである森で眠るプリンセスな光景を再現した。


 しかし実際は、ベッドの周りは魔物達の遺骸や返り血で真っ赤に染まっており、呪いの儀式と云われた方が納得がいく光景だ。


 ルーナは昏倒しているイザベルに防御力上昇、ルーナ考案結界魔法をかける。

 先程浮上した1つの疑問を頭の隅に押しやり、現在高位魔物と奮闘している2人に向かい再び駆け出していく。


「なんでイザベル様『ヒロイン、ルーナたん』って日本語で呟いたんだろう?」

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る