82 テスト後の計画
月曜日のお昼。明日から4日間に渡る中間テストが控えている。
カフェテリアで皆が集まる前、偶然にも水無月さんと二人きりになれた私。
カフェテリアメンバーについて確認することにした。
「ねぇ水無月さん。ひつぐちゃんと鈴置さんを誘ってもいいかな?」
「別に構わないんじゃないかしら? なにか問題があって?」
「いや、みんななにかしら問題があったからさ。それを解決して晴れてカフェテリアの一員になるってのが今までのパターンだったじゃん?」
「そうかしら? 桜屋さんの実家の経営問題はまだ解決したとはいえないわ。
瀬尾さんの場合、まだ男子から注目の的らしいじゃない。針山君も諦めたとは思えないわ。
守華さんだって、香月さんは解決したって言うけれど、いつまた佐籐くんに靡かないとも限らないのではなくて?
本当に解決したって言えるのは天羽さんと神奈川さんくらいよ」
水無月さんはコンビニのビニール袋の中身をテーブルの上に拡げた。
いつものおにぎりとサンドイッチの他に野菜ジュースがあった。
「それはまぁそうかもしれないけど……。じゃあひつぐちゃんだって佐籐の魔の手から逃げられてないし、巨乳の鈴置さんは絶賛彼氏募集中だしで、問題事を抱えそうだからやめとくのが正解? とか思ってた私はバカみたいなのかな?」
「さぁ……その辺りは香月さんの判断に任せるわ。ただ私は別に誘ってしまっても問題は無いように思うだけよ」
「うーむそっかー。じゃあ中間テストが終わったら誘ってみようかな」
そんな事を話していると、続々とカフェテリアメンツが揃ってきた。
そして、全員が集まったところで、桜屋さんがぼそりと言った。
「ねぇ、試験も終わるし、今週末このメンバーでどこか遊びに行かない?」
桜屋さんの唐突な提案にも関わらず、すぐに天羽さんが賛意を示すかのように手を合わせた。
「良いですね。皆さんと外で遊んでみたいです。香月さんもそう思いませんか?」
「うん。まぁ私は賛成かな。水無月さんは?」
「私は別にどちらでもいいかしら。こうしてみんなとお昼を食べるだけでも楽しいし……」
水無月さんがそう言って目を伏せる。
すると守華さんが「私……良い案があるわ……!」とふふーんと鼻を鳴らす。
それに瀬尾さんが「どんな案でしょう?」と興味津々に目を輝かせる。
まだ慣れていないのか神奈川さんは黙って話の行く末を見守っていた。
「多摩とちょっと遠いんだけど、うちの父が投資してるレジャー企業が数年前に屋内温水プールを作ったのよね。招待券もあるし、そこに行ったらどうかなって」
守華さんがそう提案する。
なるほど、海開きにはまだ遠いけど屋内プールならその問題もない。
でも水着……水着かぁ。
私は遠い目をした。
「良いじゃない。異議がなければ決定でいい?」
「はい異議あり。水着は恥ずかしいです」
私が異議を唱えると、桜屋さんが笑う。
「何よ香月さん。水着が恥ずかしいだなんて、水着ないとか? なら買いに行けばいいじゃない私付き合うわよ」
「いや前の高校で授業あったからスク水でいいならあるよ。あるけどさ……。
単純に皆の前で水着着るのが恥ずかしいだけだよ」
統制では保健体育の授業で水泳がない。だから私はほっとしていたのだ。
だってみんなスタイル良かったり、可愛かったり、悪役令嬢だったりヒロインだったりするじゃない。
私みたいなモブ子とは違うのである。
私だけ見劣りしたりしたら嫌だなぁと漠然と思ったのだ。
「もう……じゃあ他に反対の人ー?」
桜屋さんがみんなに聞くが、他に反対の人は見当たらない。
「はい。香月さん残念だけど異議は却下でーす。みんなで温水プール行き決定ね!」
「えー私も行くのー!?」
「当たり前じゃない。神奈川さん今週末の日曜日メイドバイトは入れないでね!」
「うん。わかったけど、私、水着持ってない……。中学の頃のはもう入らないし……」
桜屋さんが強引に話を進め、神奈川さんが水着を持っていないのを恥ずかしそうにお弁当をつつく。
「じゃあそもそも土曜日にみんなで水着を買いに行くなんてどうかしら?」
守華さんがそうみんなを誘うと、みんなは「さんせーい」「異議なし!」と口々に賛意を唱えた。
私は恥ずかしいのはひとまず置いておいて、どうせ行くならとある提案をした。
「じゃあ、他に二人新しい子達を連れてきてもいいかな? もちろん予定を確認したわけじゃないから100%来るとは言えないんだけど……」
私がそう言うと、桜屋さんが「お、前に言ってた人達?」と興味を覗かせる。
守華さんも「何人でも連れてらっしゃい!」と乗り気だ。
「それじゃ誘ってみるね!」
そう言うと私はスマホを開いた。
前にバーガーショップへ行った時にメッセージのIDは交換してある。
すぐに鈴置さんとひつぐちゃんを見つけると、二人へメッセージを送った。
鈴置さんからはすぐに「おっけー!」というメッセージが届き、ひつぐちゃんからも了解しましたというスタンプが届く。
「うん! 二人共来てくれるってさー。
行くぞ水着買いに! そしてプールに!」
私は恥ずかしさを跳ね飛ばすようにそう高らかに宣言すると、皆が「おー!」と心強い返事をしてくれた。
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