第50話 新生

 その頃。

 蒼主院公謐そうじゅいんきみひつの目前に辿り着いた辰真たつまは、封印され眠る彼を見つめる。


「これで……本当に?」


 辰真たつまが渡されたをかざせば、公謐きみひつを封じていた結晶が崩れて行く。同時に、彼の身体もゆっくりと灰になり始めた。


「え!? な、なんで!!」


 驚く辰真たつまに、公謐きみひつが微笑みながら告げた。その声は、何かを成し遂げたと言わんばかりに満足感に満ち溢れていた。


 ――ようやく役目を果たしたからね? 後は、頼んだよ。


 その言葉だけを残して、彼は消滅し……空間の歪みが激しくなり、立っていたはずの地面が崩れて行く。


「うわぁっ!?」


 意識が遠のいていくのを感じながら、辰真たつまは気を失った。


 ****


 空間がされ、崩れた。

 その事実は、すぐに『革命の奏者』である矢成やなり達にも気づかれ、猛攻が一旦おさまる。

 それと同時に、その場にいる全員の意識が……途切れた。


 ****


 視界が白い。

 身体が宙に浮いている感覚に、辰真たつまは困惑する。


(なんだ、この感覚? 一体なにが?)


 意識が朦朧とする中、聞きなれたその声は聞こえて来た。


『タツマ。そして、シズナにトキハにフウカ。感謝している。これにて、神の役目に戻る事になるが、本当に日々が楽しかった。特にタツマ。封印を解き、ライという名をくれて本当に嬉しかった。ワタシは、これから月詠つくよみみこととしてが、それでも……この想いは大切にする』


(ライ……そうだよな。お前は、そういうヤツだよ)


 ライこと、月詠つくよみみことはおそらく……今まで妖魔王と蒼主院公謐そうじゅいんきみひつが担っていた役目を肩代わりして、世界の均等を、ことわりを守るのだ。

 古き役目を解き放ち、新たな役目を神の一柱が担う。

 それは、新たなことわりが生まれると言っても過言ではないだろう。

 別れを理解していた辰真たつまは、静かに呼吸をし、一言だけ伝えた。


 ――出会ってくれて、ありがとう。


 そうして、再び意識を失った辰真たつまは、相棒であった彼の気配が遠のくのを感じていた……


 ****


 歪であった空間は正しく修正され、何度も破壊された古きことわりは、新たなことわりが形成された事でその役目を終えた。

 古きことわりの守護者達は、輪廻転生の輪に入り、新たな守護者の出現により、世界の均等は保たれる。

 そう。

 世界は――新生するのだ。

 破壊を望む者達から、大切なモノを守りたいと願う彼らによって。

 そして、新たな世界において、破壊を望みし彼らの想いは砕かれるのだ。

 何故なら、新生した世界では、彼ら破壊の者達は、排除すべき存在と成り果てたからだ――

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