第3話 把握テスト①

 訓練場に到着した一行は、和沙かずさの指示で戦闘能力把握テストの順番を決めることにした。


「よし、そこの……なんだったか? お前のを見せてみろ」


 そう言って操姫刃ときは志修那しずなゆびさした。


「なぁ!? ちょっと失礼な文言もんごんじゃあないかなぁ君ぃ! まぁ……最後にされるよりマシだけどさぁ!」


 愚痴りながらも志修那しずなは前に出て、戦闘体勢に入ったようだった。呪文だろう模様が描かれた、手に収まる程度の長さの鉄の棒を取り出すと、構えた。


「では、伊鈴ノ宮志修那いすずのみやしずな君。準備はいい? ……いいみたい? では、模擬戦闘……開始」


 和沙かずさの合図で土偶どぐう型の人造妖魔じんぞうようま射出しゃしゅつされた。それを確認した志修那しずなが手にしていた棒を宙に投げる。


「……来い! 武律ぶりつ!」


 彼が呼び出したのは、二メートルくらいの大きさの、メカメカしいトリコロールカラーの式神だった。


武律ぶりつ! とにかく敵を倒しまくってくれよ!!」


 武律ぶりつはサムズアップすると、飛来してくる人造妖魔じんぞうようま達を手当たり次第に破壊して行く。あっという間に倒し終えると、和沙かずさが止めた。


「そこまで。……皆、どうだった?」


「しずなん、弱くなんかないじゃない! ぶーちゃんめっちゃつよつよだったよ~!」


 楓加ふうかの言葉に志修那しずなが大声で反論する。


「よく見てたのか!? 僕自身は一度も攻撃してないだろう!? そういうことだよ!!」


 あだ名の部分はスルーして、自身の弱さをアピールする彼に操姫刃ときはが口を開いた。


「お前、なんでそんなに自分を卑下ひげするんだ? 非合理的で生産性がないが?」


「ごめんなさいね! でもなでもな!? 僕自身の戦闘力を考えると、どうあがいても前線向きじゃないんだよ!」


 情けない声を上げると志修那しずなが顔をおおいながら次の人を指名した。


「次はそういう君でどうだ! めちゃくちゃ強そうだけども!」


 指名された操姫刃ときはは答えるかわりに前へ出た。それを受けて、和沙かずさが右腕を上げる。


「では、次は初架操姫刃はつかときは君。準備はいい?」


 和沙かずさかれた操姫刃ときはは無言でうなずき、腰に下げていた伍佳剣いつかのつるぎを抜刀した。そのやいばは不思議な形状をしていた。


(なんというか、メカメカしい……? いや、近未来的な造形? とにかく独特だ)


 辰真たつまがそう思っているあいだにも、操姫刃ときはのテストが始まった。彼女は剣を構え、飛来してくる人造妖魔じんぞうようま達を斬って行く。


きん術式じゅつしき壱銘いめい斬葬ざんそう


 遠距離にいた人造妖魔じんぞうようまへ向かって操姫刃ときは退魔術式たいまじゅつしきを発動させた。回転しながら、舞うように。操姫刃ときはの動きは美しく、そしてしなやかだった。


「……やめ」


 再び和沙かずさの合図が飛ぶ。人造妖魔じんぞうようま射出しゃしゅつが止まったのを確認すると、操姫刃ときはは剣を鞘に納めた。


「じゃあ~どうしよっか、たっくん? ウチが先かそっちが先か! じゃんけんする?」


 辰真たつまの方を見ながら尋ねる楓加ふうかに、困惑しながら返す。


「……えっと……じゃあ、それで……」


 曖昧な辰真たつまの態度を気にすることなく、楓加ふうかは朗らかな笑みを浮かべてピースサインをする。


「オッケー! じゃあウチね!」


 その明るさが、辰真たつまには眩しかった。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る