【落零弐】落逸<rakuitu>~はぐれ者達の退魔伝~

河内三比呂

序章 はぐれ者達

第1話 顔合わせ

 日差し照りつける炎天下の中、八月一日辰真ほづみたつまは地図を片手に目的地まで歩いていた。


特殊対妖魔殲滅部隊とくしゅたいようませんめつぶたい……か。ここから……始まるんだな、


 そんな彼の考えを見抜いたかのように、腰に下げた


【タツマ、緊張しているな? お前は人見知りだからな】


「……人見知りなのは、仕方ないだろ……ライ」


 ライと呼ばれたその声のあるじは、辰真たつまの反論を気にすることなく話を続ける。


【どんな者達なのか、少しは気になるだろう? ワタシの事も含めて……受け入れられるかどうかがな……】


 どこか不安げな声色のライに、辰真たつまが静かに答える。


「……大丈夫だろ。式神しきがみ使いやら鬼憑おにつきやら、妖魔ようまと関連した力を持つ人達もいるって聞いたしな……」


 そんな会話をしているうちにあっという間に目的地、特殊対妖魔殲滅部隊とくしゅたいようませんめつぶたい、通称トクタイの本部に辿り着いた。認証カードを見せて敷地内に入り、自分のチーム……Eチーム専用ルームまでひたすら歩く。その胸に期待はなかった。


****


「時間通り。自分があなた達の九十六期Eチームの担当教官、流名和沙るなかずさ。そして、こちらが祓神ふつかみ様の射離薙いりなぎ様……よろしく。じゃあ各自、自己紹介を」


 集合してすぐ黒髪ポニーテールの女性に、右側が黒髪で左側が白髪の和服姿の少女を紹介され、辰真たつまは困惑しつつもチームメイトである他の三人に視線をやった。

 一人は赤髪をハーフアップにした鋭い目つきの少女、一人はゆるふわな薄緑色の髪をなびかせた可愛らしい少女、最後の一人が長い紫色の髪を一つ結びにし不貞腐ふてくされた顔をした青年だった。


 観察していると、ゆるふわな髪の少女が口を開いた。


「じゃあ、ウチから行こうかな! 名前は浮風楓加うかせふうか。年齢は十八歳で、能力は祓力ふつりょく! メインで使う術式は術式じゅつしき~! だから回復が得意かな? あと、ウチよく距離感わかってない言われるから、そこは堪忍かんにんね? よろしく~! 次はトッキーお願い!」


 楓加ふうかは明るく赤髪をハーフアップにした少女の方を向いて話を振った。彼女はそれに対して気を悪くするでもなく、淡々と自己紹介を始めた。


「おれか? おれは初架操姫刃はつかときは。年齢は楓加ふうかと同じ十八だ。能力は祓力ふつりょくと……特異能力があるが説明が難しいからな、使用する時が来たら見せる。武器は伍佳剣いつかのつるぎだ。これからよろしく頼む」


 男勝りな口調であっさりと説明する彼女に、辰真たつまが妙な感心をしていると青年が声を上げた。


「な、なんだよぉ~! 君達そろいもそろって早々そうそうと自己紹介しちゃってさ……。最後が嫌だから言うけど! まず! 僕は前線向きじゃないから! 前に出るとかマジで無理だから! そこ、頭に入れておいてよ!!」


 どんどん声が大きくなっていく青年に対し、操姫刃ときはが冷静に声をかけた。


「で? お前は誰だ?」


「脱線してごめんなさいね! 伊鈴ノ宮志修那いすずのみやしずなだよ! 武器は人造式神じんぞうしきがみの三体だけど……ほんっとうに前線向いてないから! 一応、みず退魔術式たいまじゅつしきとか使えるけど! 僕を頼るなよ! 年齢も言うと十九だけども! 頼るなよ!」


 どこまでも声高にネガティブな言葉を吐く志修那しずなに対し、皆がなにも言えずにいると和沙かずさが静かに辰真たつまの方に視線をやった。


「次は貴殿だ。自己紹介を」


「……はい。俺は……八月一日辰真ほづみたつま……です。けど、苗字で呼ばれるのは好きじゃないので、名前で呼んでください。年齢は十七歳でこの中だと一番下になります。えっと……後は、武器は銀色の魔本である刹歌せつかと能力は祓力ふつりょく。……で……」


 そこで一端言葉を区切ると、静かに三人に向かって告げた。


。よろしくお願いします」

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