第17話 説得
僕は2人にどう説明すればいいかわからなかった。
若き日の父が仲間たちと別れる原因になったのは父のせいではないだろうか。とすれば、僕の家に来るように説得するのは難しそうだ。
当初父も心酔していた徐福計画は邪悪なものなのだろう。
美由紀や丈がいる寮は強大な力を持つようになった元部下の支配下にあるのだろうか。佐藤の説明だけでは僕自身も現状がつかめなかった。
美由紀や丈は学校と寮の往復しか認められなかったと言っている。説得するなら、現実的な説明が必要だ。
僕は佐藤に向かって言った。
「父は不老不死という途方もない目的をもって徐福計画を進めてきた。15年程前から、間違いに気づいた父は徐福計画を阻止しようと動いている。
計画を進めてきた父の部下は今では協力者を得て強大な力を持っている。かつて父と事業を始めた鈴木グループ創設者の縁者である美由紀と丈のいる寮にも彼らの力が及んでいるから、僕の家に来るんだ。そういうことだろう。
こんな説明をいきなりして、説得なんてできないよ」
佐藤はじっと僕を見つめると、少し唇の両端を上げながら答えた。
「その通りです。お父様にお話してきます」
30分ほどしてもどってきた佐藤はいくつかの画像を見せた。
「15年前、少年の頃の私です。もう一人は双子の弟です。僕たちは同じ代理母から生まれたクローンでした」
佐藤の声ははっきりとしていた。
「20体ほど作られた胚のうちまともな5個が代理母に託されました。そして生まれたのは僕たち2人だけでした」
他にも4人の代理母いて、それぞれ5個ずつ胚が入れられました。そして少年になるまで成長できたのは僕たち2人だけです。クローンを作るのは今もたやすい事ではない。そして15年前、弟は臓器提供者となって逝ってしまったのです」
佐藤が見せた画像にはクローンを作るために作業している研究者達の姿があった。そして人として形を成さない生物達が廃棄されていた。
陸と僕は事情を説明するために動画や画像を選んだ。
「今までの様な、何もなかったような日々は戻らないな」
一真がつぶやいた。
「遅かれ早かれ、皆様の協力は必要になると思っていました。クローンの権利は限られています。これからの事は皆様にたくされています」
大人たちはいつも未来は若者に託されていると無責任なことを言う。
僕達は身勝手な大人たちが腹立たしかった。
「あかりを巻き込みたくはなかったが」
少し沈黙してから一真が続けた。
「あかりのおばあちゃんにも協力してもらわなければ」
あかりの祖母は創設期のメンバーの一人だった。
「さくらは?彼女だけつまはじきにはできないだろう
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