05 入学式、校門での出会い

「じゃあ、行ってくるよ、母さん。 そして、陽愛達」


「ええ、行ってらっしゃい」


「にーたま、いってらっちゃい♪」


「にーに、がんばえー」


「がんばって、おにいたん」


「ああ、新しい学校での学生生活を頑張るから、陽愛達も頑張れよー」


「「「あい!」」」


 由佳理母さんと天使な三つ子の幼い妹達に見送られながら俺は自宅を出る。

 

 父さんと由佳里母さんが再婚してから時は過ぎ、今日は4月8日。

 今日は俺が通う『私立あいの山学園』の高等部に入学するのだ。

 なお、今日は入学式とホームルームを終えた後、部活見学となる。

 部活は入部必須ではなく任意なので、俺は既に陽愛達の為に部活はやらないと決めていた。

 父さんは、朝早くから事務所に行っているので、家にはいない。

 一方で陽愛達は、近くの『あいの山保育園』に後で由佳理母さんと行く事になるようだ。

 なお、あそこには事前に挨拶をしたから、俺が陽愛達を迎えに来る事もあるという事も理解してくれた。

 費用は父さんの稼ぎがデカい為に、割高になったが、これも問題はないと父さんは言ってたな。

 さて、『あいの山学園』は自宅からはやや近めだ。

 あの幼馴染みが合格した公立校は、鉄道を利用する必要があるが、それがないのは今となってはありがたい。

 陽愛達を迎えに行きやすくなるからな。

 ついでに言うと、『私立あいの山学園』は小等部、中等部、高等部とあるように小中高一貫校であるのだが、中等部からや高等部からの入学も可能である。


「ここか……」


 自宅から出て徒歩20分。

 俺は『あいの山学園』の高等部の校門の前に着いた。

 私立かつ一貫校であるためか、学校の規模はかなり大きい。

 にもかかわらず、一年間の学費が高い私立の中では学費が安い方なのも驚きだ。

 それでも公立校に比べたら割高だが。


(今日からこの学校で新しい学園生活が始まるんだな……)


 公立校の試験前に、幼馴染みがイケメン男と付き合っている所を目撃し、その翌日に幼馴染みに振られたショックで公立校は不合格になったが、父さんの再婚の際に可愛らしい三つ子の幼女の兄になってからは、三人の天使の笑顔のおかげでその心の傷も癒えた。

 それによって気分良く新しい学園生活を送れそうだなと思いながら校門をくぐった時だった。


「やあ。 君もこの学校に入学したのかい?」


「んあ?」


 突然後ろから誰かに声を掛けられた。

 そのせいなのか、俺は変な声をあげながら、後ろを振り向いた。


「やっほー」


 そこにいたのは、小さく手を上げながら俺に笑顔を向けた茶髪のセミロングかつボブカットの少女だった。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る