第02話 俺とスライム達との出会い
呆気なくパーティーを追放された俺は、何となく冒険者ギルドにやって来ていた――――
特に目的があったわけじゃないが、適当にギルド内を見渡していると、あるモノリスを操作している冒険者が目に留まった。
あのモノリスは、冒険者ならば誰もがお世話になる、ステータス更新・閲覧するためのモノリスだ。
あっ、そういえば。前からちょっとやってみたかったことがあったんだよな……。
何気なくその冒険者を見ていると、俺はふとそんなことを思い出す。
俺はモノリスの前まで来て、操作する。すると、俺のステータスが表示され、その下に取得スキル。そのまた下に取得可能スキルの一覧がある。
俺はその中からあのスキルを探し――――
「あった」
俺の視線の先に表示されていたのは、『テイムスキル』だ。
本職がテイマーならまだしも、エンシェンターである俺がこんなスキルを取得しても、冒険の役には立たない。ただの趣味だ。
勇者パーティーの一員である以上、そんな趣味にスキルポイントを割く余裕はなかった。
だが、もう勇者パーティーじゃない。
加えて、あのパーティーを追放された以上、もう俺には冒険者としてやっていく気力はない。
だからこそ――もう誰にも文句を言われない今だからこそ、趣味に時間と労力を割けるというもの。
俺は持て余しているスキルポイントで『テイムスキル』を取得し、早速街外れの森へ向かった。
◇◆◇
「別に強いモンスターをテイムしたいわけじゃないんだよなぁ」
それに、テイムしたモンスターで戦いたいわけでもない。
ただ、仲間にしたモンスターが徐々に成長していく姿が見てみたいのだ。
ペットを飼いたい感覚に近いのだろうか。それとも、観葉植物を育てたい感覚か。
「どこだどこだ……?」
街から近い森だし、脅威になるモンスターはいないだろう。
いるとしても、小型の虫型モンスターや植物系モンスター、小動物型モンスター、そして…………
「……スライムだ」
茂みの向こう側――ある木の根元に、三匹のスライムが固まってぷにょぷにょしていた。
赤、青、緑……それぞれファイアスライム、ウォータースライム、ウィンドスライムといった、新米冒険者ですらわざわざ相手にするかどうか怪しい雑魚中の雑魚モンスター。
知能を持たず、ただ生存本能だけで行動するモンスターと言われている。
「うぅん……いくらテイムするモンスターは強くなくて良いと言ってもなぁ……」
流石にスライムは……と思ったものの、何だろう。
あの三匹のスライムから目が離せないというか、変に愛着が湧くというか……一目惚れでもしたのだろうか、俺は。
「まぁ、いっか」
今まで相手にすることのなかったスライム。
この際じっくり成長を観察するのも悪くないだろう。
俺は三匹のスライムに向けて手をかざし、テイムスキルを発動させる。
すると、魔力の力線が走り、三匹のスライムの足元――といっても足はないが――に魔法陣が展開される。
テイミング初心者ではあるが、俺はこれでもついさっきまで勇者パーティーの一員だった男だ。流石にスライムのテイムを失敗させたりはしない。
テイムが成功したことは、感覚的にわかった。
これが絆というものなのかは不明だが、そういう類のもので俺とこの三匹のスライムが結ばれたのがハッキリわかる。
その証拠に、三匹のスライムが俺の方を向いて――いるのかどうかは顔がないから判別不可だが、とにかくぷにょぷにょしている。
「さて、テイムも難なく成功したことだし、早速育ててみますか」
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