3 お熱いのが にがて?
考えあぐねた末、
いつもは
わざわざ、行くよ、と電話して閉店時間に店に行く。奏さんも心得たもので、いつもは閉店前に売り切れるラーメンをちゃんと残してくれている。
ラーメン好きの隼人、サングラスが
「奏ちゃん、ボク、ラーメン。チャーシューいっぱい入れてね」
きっと隼人は、ラーメン食べに来た気になってる。
「ほいさ、隼人。チャーシュー倍量にしとくぞ。バンも同じでいいな?」
「えーーーっ! なに、それ! それじゃ、ボクがバンちゃんと一緒って事じゃん。ボクのほう、多くしてよっ!」
「判った、判った。隼人のはスープ増やしとく」
「やった! 奏ちゃん、いつも気が
……隼人、大丈夫か? そんなに簡単に
食べ終わると
「隼人!
「朔……」
一瞬、隼人の動きが止まる。
「バンちゃん! なんでもう帰るんだよ!?
いや、忘れたのは隼人でしょ?
「それがね、奏ちゃん、聞いてよ……」
座り直した隼人が奏さんに、朔たちの事を話し始める。
「
話を聞いた奏さんも
「だいたい奴らは
ちなみに僕は小動物とか
「
「奥羽ちゃんはカァカァ言ってた」
「バン、なにか聞いたか?」
奏さんが僕に話を振る。隼人じゃ
「なにも……朔たちの異変を教えてくれたのは奥羽さんだもん。心当たりがあれば言うでしょ?」
「バン、甘いな。鳥類を信用するな。ヤツらにとって、あっちとこっちを結びつけて考えるのはオプションだ。言わなきゃしない。言えばするけど、文句も多い。
「奏ちゃん、今、ボクの事、馬鹿にした?」
「まさか、ホルス神を馬鹿にするなんて、
そう言いながら奏さんは冷凍庫からカップ入りのアイスクリームを取り出して、食えよ、っと隼人の前に置く。甘いものを
「んじゃ、隼人をうまく
「いや、奥羽とは俺が話すよ。隼人と奥羽じゃ、
ごもっとも……
「あと、情報が得られそうなのは、
奏さんは車を持っていて、交通の便が不自由な場所は、必ずと言っていいほど連れて行ってくれる。
頬撫ぜには前回もお世話になった。青白い手の妖怪で、冷たい手で頬を撫でる、ただそれだけ。前回は妖怪『
妖怪『小袖』は小袖から手が伸びる妖怪で、僕は追いかけられて酷い目にあった。手だけの妖怪同士、頬撫ぜはよく知っていたらしい。ひょっとしたら友達なのかもしれない。
僕はなぜか頬撫ぜに気に入られていて、行くと顔を撫で回される。
僕の失われた記憶……生きたまま、首を切り落とされた記憶だろうか? 考えただけでもゾッとする。人間だった時の僕の名は『
頬撫ぜは撫でた相手の記憶を食べているらしい。だからと言って撫でられても、その人の記憶がなくなるわけじゃないので、気持ち悪いってだけの妖怪だ。僕の生前の記憶がないのは死んだことによるショックのせいだと隼人は言う。吸血鬼として目覚めてからは普通に記憶が残っている。なにを普通と言うかは不明。便利な言葉だ。
「あとは、そうだな……高尾に行くなら
「天狗さん達、隼人の事、ものすごく嫌ってるよ」
「隼人は天狗を
と、奏さんが笑う。
「それじゃ、風神のオヅヌを探せ。ヤツは
「医神か、頼りになりそうだね」
「だが、取り扱い注意だ。オヅヌとメヅヌは身体を共有しているし、いつも一緒にいる雷神デヅヌはすぐに怒って稲妻を落とす。デヅヌに何か
「なんだか寒いよ、バンちゃん! なんでこんなに冷たいもの、ボクに食べさせたんだよっ!」
隼人がアイスクリームを食べ終わったようだ。
「ほい、隼人、お
「
すぐに隼人がお汁粉に息を吹きかけ始める。これで『そろそろいいぞ』と奏さんが言うまでお汁粉冷ましに夢中になるはずだ。
「奏さんって、隼人の扱いもそうだけど、面倒な相手でも上手に対応するよね」
「そうか? これでも客商売してるからな」
奏さんが照れ笑いする。
「そそ、いい忘れた。デヅヌに貢物する時は、
「気に入らなければ?」
「馬鹿力で思いっ切り張り飛ばされる」
ガハハ、と奏さんが笑う。
「メヅヌは貢物を保管したり運用する係だ。で、デヅヌに命じられて貢物への
「なにをくれるんだろう……受け取らないとどうなるの?」
「今の時期だとなんだろう。たいてい果物とかが多いな。レートは悪いぞ、
「……隼人が、まだマシに思えてきた」
「うん、隼人とキャラがかぶっているかもな。隼人を際限なく強烈にして乱暴にした感じだな。まぁ、メヅヌがいればデヅヌを
奏さんがフーフーしている隼人に声を掛ける。
「わぁい、もう冷めた? 奏ちゃん、ボクのこと忘れちゃったんじゃないかと心配したよ。バンちゃんはすっかり忘れてたよねっ!」
隼人はキッっと僕を睨み付けたが、お汁粉をズズズーーーッと
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます