第139話 ノアの計画
モスダン公爵の孫娘に魔法を使えるようにする。
彼等の魔法が血筋によって受け継がれているものだとするのなら、エリザベートがモスダン公爵の血を引いているのであれば、必ず彼女にも魔法を使用できる因子がある筈だ。
それを探して表層に浮き上がらせてやれば、エリザベートにも魔法を使えるようになると思うのだ。
〈モスダン公爵。一応確認するけど、エリザベートは間違いなく、貴方の血を引いた子孫なんだね?〉
〈間違いない。モスダンの魔法が、それを明確に伝えてくれている。あの娘は、間違いなく儂の孫だ。〉
〈ほーん、って事は、しょっちゅうお前んとこの息子や娘が、嫁はともかく婿に出てたのは、その魔法とやらが受け継がれなかったからか。〉
ああ、何だ。ちゃんと他にも子供がいたのか。だが、彼等の話しぶりからすると、モスダンの魔法を持って生れて来たのはエルマンだけだった、という事かな?
なるほど。モスダンの魔法は魔法の有無すらも認識が可能、と。だから魔法が使えない者は後継者として認める事が出来ず、他家へと嫁や婿へ出したという事か。
〈そうだ。そうした中、産まれてきてくれたのがエルマンだった・・・。エルマンには、儂が直々に魔法の利用法や戦い方を教えた・・・。十分な才能のある息子だった・・・。いや、あり過ぎたのだ・・・。〉
〈あー、ようやく求めていた後継者が出来たってのに、危険な仕事に就くような騎士にはなってもらいたくは無かったってわけか。〉
〈・・・・・・あ奴には、儂の嘗ての話やこの国の歴史も詳しく教えた。当然、騎士の活躍も、だ。そして、あ奴の世代にはマクシミリアンがいた・・・。〉
〈最強の騎士に憧れて・・・か。若いんだ。当然か。〉
二人とも、エルマンについて思い出にふけっているようだ。やっぱり仲が良いじゃないか。
まぁ、私としてはエリザベートについての方が重要なんだが・・・。久々に本音で話し合えているところ悪いが、話を勧めさせてもらおう。
〈とにかく、エリザベートが間違いなくモスダン公爵の孫娘であると言うのなら、彼女に魔法を習得させる事は可能だと思うよ?まぁ、それにはまずモスダン公爵の魔法を解析する必要があるのだけど。〉
〈マジか・・・。まさか、理解しているのか・・・?あの概念を・・・。〉
〈良いだろう。どの道、儂の代でモスダンは終わると思っていたのだ。貴公がモスダンの魔法を解析できると言うのならば、してみるがいい。〉
許可は下りた。が、今すぐにやるわけでは無い。マコトすら気付けていなかった魔法など、モスダン公爵にとっては秘匿中の秘匿情報だっただろうからな。マコトが耳にしている時にやるべき事では無いだろう。
それに、具体的に私達がすべき話は他にあるのだから。
〈で、悪いんだけど、今はエリザベートの事よりも私達の今後の事を話し合おう。モスダン公爵、結局貴方は私達に協力してくれるのかな?〉
〈唐突に話をぶった切ってきやがったな・・・。まぁ、今一番の問題はそっちなのは確かか。それで、どうすんだ?"氷帝"。提案して来てんのは、国を消せるようなバケモンで、ソイツのおかげで家の存続ができる。選択肢は、あってないようなもんだと思うがな・・・。〉
言いたい放題言ってくれるな、マコト。
まぁ、彼から凄まじく強烈な謝罪の感情が送られてきているので、役作りの一環で敢えてああいう言い方をしたというのは分かっている。
そもそも、人間達の常識で考えた場合、"
と言うか、私の存在は実際に化け物どころの話では無いからな。
何だ、生まれながらにして神として崇められている存在を凌駕している生物って。理不尽にも程があるだろう。
とにかく、マコトが私の事をどう呼ぼうと私は何とも思わない。当の本人も望んで発言しているわけでは無いしな。そんな事よりも、モスダン公爵の返答だ。
〈・・・良いだろう。エリザがモスダンの魔法を扱えるようになるのならば、儂が命を投げ出す必要は無い。エリザを立派な後継者に育て上げなくてはならん。命を投げ出している場合では無くなる。だが、超常なる物よ。約束は果たせよ?〉
〈勿論。では、話を進めようか。貴方には私の今後の予定について話をしておくよ。それと、万一のために、コレをこの屋敷に残しておくよ。〉
幻を一体、モスダン公爵の屋敷に待機させておく事にした。万が一にも彼の事情を気取られてエリザベートを人質に取られでもしたら、モスダン公爵がどういう行動を取ってしまうか、分からないからな。
〈・・・・・・出来れば、撤去してもらいたいのだがな・・・。〉
〈気持ちは分からないでもないけど、我慢してもらえるかな?自分で言うのも何だけど、護衛としてとても優秀だよ?〉
〈ククッ、諦めな、"氷帝"。つーか、護衛も勿論兼ねているだろうが、実際のところは監視目的だろ?〉
まぁ、監視と言えば監視だな。だが、一番の目的は情報収集だ。
基本的にモスダン公爵がどう動こうと、私には関係がない。彼の動向に合わせて自分の行動を変えればいいだけだからな。
彼の元に幻を置いておけば、貴族達の動向も分かり易いのだ。
〈人聞きが悪いね。常に重要人物を見守り続けると言うだけの事さ。私としてはモスダン公爵もエリザベートも危険な目に遭わせるわけにはいかないんだ。まぁ、それを監視と言うのなら、監視で良いよ。間違いない。〉
〈・・・撤去する気は無いのだな・・・。はぁ・・・。で、貴公は今後どう動くつもりなのだ?〉
ようやく話の本筋を進められるな。ここまでに大分時間が掛かった気がする。
〈うん。とりあえず、明日には"
〈最近増長が止まらない宝騎士・グリューナを何とかして欲しいって、ミハイルから依頼が来ていてな。ノアが"上級"に昇級した時点で指名依頼が発注されるようになっている。〉
〈それで、騎士達から信用を得たら、貴族街にある学校へ臨時教師として雇われるのさ。シャーリィ=カークスの護衛のためにね。〉
〈貴公が異常なまでの数の依頼をこなしていたのは、それが理由か。〉
〈ちなみに、その前日は倍の数をこなしていたぜ?常設依頼もやってたみたいだから、確かに明日で"上級"に昇級出来るな。〉
〈・・・最早、何も言わん。〉
ううむ。内容が内容だけに流石に呆れさせてしまったか。重要なのは、ここからなんだけどなぁ・・・。
マックスからは"上級"になって学校の臨時教師をして欲しいとしか言われてなかったし、今後貴族達がどう動くかも把握できていない。
〈で、あまりにも杜撰な計画で悪いのだけど、そこから先は成り行き任せだったんだ。こちらとしては、しばらくは手を出してきた相手を返り討ちにする事ぐらいしか、やる事がなかっただろうからね。〉
〈・・・なんだそれは・・・。計画と呼べるものなのか・・・?〉
〈仕方ねえだろ?思いついたのは若い巡回騎士だったし、どういうわけかノアが乗り気になっちまったんだから。〉
流石にモスダン公爵も呆れているな。殆ど相手任せの行き当たりばったりな内容だったから、彼からしたら計画と呼ぶのも烏滸がましいのだろう。
その事についてマコトも擁護をしてくれているが、若干私の気まぐれも原因の一つと言われている気がしないでもない。
〈そうは言うけどマコト、初対面で仲良くなれるような人物とその娘を気に掛けて欲しいと頼まれたら、引き受けないわけにはいかないと思うんだ。〉
〈アンタも大概お人好しだな・・・。まぁ、俺も人の事を言えねえが。〉
〈騎士だけでなく、アイラ=カークスとまで接触していたとは・・・。儂がどうこう言う以前に、ヘシュトナー卿もフルベイン卿も、詰んでいたのだな・・・。〉
少なくとも、私が王都に来た初日にアイラと私が接触した時点で、二人の侯爵は詰んでいると言って良い。
私はティゼム王国に来る前から彼女の助けになると決めていたからな。手を出すのなら、潰す。
〈私がアイラに会いに行ったのではなく、彼女の方から私と接触してきたのだけどね。で、ヘシュトナー侯爵に先手を打たれないように、彼等の屋敷を探っていたというわけさ。モスダン公爵が騎士に流した情報のおかげで、誰の屋敷を調べるべきかを絞る事が出来たからね。尤も、その結果こうして貴方と会話をする事になるとは思わなかったよ。〉
〈"氷帝"、テメェもテメエで裏で動いていたってわけか。〉
〈お互い様だ。儂のところの手勢まで潰しおって・・・。〉
〈しょうがねぇだろうが、テメェが味方とは思ってなかったんだからよぉ。〉
ああ、マコトはモスダン公爵が騎士達に情報を流している事を知らなかったのか。まぁ、知っていたら敵だとは思わないよな。そのせいでモスダン公爵の部下も二人の侯爵の部下もまとめて処理していたようだ。
モスダン公爵が苦言を言うのも仕方が無いが、そのおかげで二人の侯爵には怪しまれていない事を考えると、結果的には良かったのかもしれないな。
〈話を戻そうか。騎士からの指名依頼の事もあるし、私が学校の臨時教師になるのは、早くても明後日か明々後日になると思う。問題は、ヘシュトナー侯爵が招集をかけたという、"影縫い"とやらが活動する時間とかぶってしまうんだ。〉
〈"影縫い"だとっ!?確かなのかっ!?〉
〈事実だ。方法は分からぬが、ヘシュトナー卿は"影縫い"を従わせる事が出来ておる。それなりに条件はあるようだがな。〉
〈で、マコト。その"影縫い"と言うのは何者かな?驚いているという事は、貴方も知っているようだけど。〉
その"影縫い"とやらはヘシュトナー侯爵の自信の理由の一つだと思うんだ。あれだけ得意げな態度を崩さないのなら、相当な手練れの筈だ。どういった人物か、把握しておきたい。
〈そりゃ、知ってるさ。何せ、直接戦った相手だからな。〉
〈ああ、五年前がどうのこうのとモスダン公爵が言っていたけれど、マコトと戦って負傷して引退。と言ったところかな?〉
〈いや、俺としては生きてると思ってなかったんだよ。本気で殺すつもりで戦ってたし。で、"影縫い"が何者かって話だったな。アイツは、暗殺者だよ。それも、とびっきりのな。〉
ほう。つまり、他人に気取られる事なく行動するにはうってつけという事か。
ヘシュトナー侯爵はアイラもシャーリィも欲しがっていたから、"影縫い"に人知れず拉致させる気なのかな?暗殺者だからと言って、二人を殺害するような命令はしない筈だ。
〈マコトが全力で殺害しようとして出来なかったのなら、相当な手練れなのだろうね。どういう戦い方をするんだい?〉
〈影の中に潜って高速移動をしながら、一度に大量の針を四方から飛ばして来るんだよ。しかもやたら頑丈で貫通力が高いやつ。んで、針にはこれまた頑丈な糸が括られていてな。あらゆる場所に糸を張り巡らせて、足場にするはトラップにするはで、スッゲェ戦い辛かった。〉
ふむ。マコトが頑丈と言うのなら、針も糸も容易には破壊できなかったという事かな?四方から飛ばして来ると言うのなら、針を投擲しているのではなく、魔術か何かで操作していると考えた方が良さそうだな。
〈儂が思うに、最も厄介なのは名前の通りに相手の影に針を縫い付けて動きを封じる点だな。一本でも針が影に刺されば、それだけでかなり行動を制限されると聞いている。〉
〈ああ、俺も対処しきれずに一本食らっちまった事があったが、全身が砂鉄の海に浸かっちまった上で強力な磁石を近づけられたような感覚だったぜ?〉
それでもマコトは動けるんだな。
とにかく、人間から見れば非常に厄介な人物である事は間違いないようだ。
"影縫い"の対応は間違いなく私がする事になるだろうな。
〈ちなみに、"影縫い"の見た目は分かるかな?〉
〈ワリィ、顔全体を覆うような仮面をつけてる上に体型が分からなくなるような服を着ていたせいで、性別も分からねえんだ。〉
"影縫い"の正体は不明、と。ならば、自分だけでなくあらゆる影に注意をしておこう。"影縫い"の拘束がどの程度のものか分からないしな。私ならば大丈夫だとは思うが、警戒するに越した事は無い。
"影縫い"の事も分かったし、私が考えた今後の予定を二人に話しておこう。
〈影縫いの事は分かったよ。で、私は思ったんだけど、臨時教師をしながら、ヘシュトナー侯爵に敢えて雇われてみようと思うよ。〉
〈マジか。〉
〈ふむ。貴公ならば容易だろうが、雇われた後はどうするつもりだ?〉
何せ向こうが私を雇いたがっているのだからな。雇われる事自体は容易だ。それに、私が傍にいる事でアイラとシャーリィの安全も確保出来る。
ヘシュトナー侯爵を騙し討ちにする事はモスダン公爵も分かっているだろうが、具体的な内容が知りたいのだろう。
〈まずは、アイラとシャーリィの安全の確保だね。私が雇われれば、ヘシュトナー侯爵は"影縫い"を保険として扱うだろうから、彼女達の確保も私に要求して来ると思うんだ。実力を証明するためにも、ここまでは無償で行う。〉
〈その後は?〉
〈報酬に無理難題を引っ掛ける。報酬が支払われる前にアイラとシャーリィを確保はするけど、二人をヘシュトナー侯爵に引き渡さない。で、報酬が支払われる前に騎士達の制圧に向かわせる。〉
〈なるほどな。どんだけの力があるかは理解しているから、強引な手段を取れば間違いなく痛い目を見る、と。そいつぁ良いな!〉
〈早めに騎士達の制圧に向かわせると言う事は、貴公、兵力が整う前に騎士達に返り討ちにさせる気だな?〉
二人とも話が早くて助かる。国の防衛力を考えたら、被害は少ない方が良いだろうからな。
私兵の戦力だけでは自殺行為と思えるような兵力で制圧に向かわせたい。
〈私達の目的と言うか、モスダン公爵の計画は、この国の害である増長した貴族達の一掃だろう?だから、ヘシュトナー侯爵達には、私兵の準備が万全に整う前に、さっさと行動に移してもらうんだ。私が彼に雇われれば、戦力を整える必要もなくなるだろうからね。〉
〈で、碌に兵を揃えないまま制圧に向かわせて、迎え撃つ準備万端な騎士達に返り討ちにさせる、と。〉
私兵が少ない事で騎士達が油断する、と思わせてやれば、ヘシュトナー侯爵は直ぐにでも制圧に向かう事だろう。
〈そう。ついでだから、"影縫い"がヘシュトナー侯爵に従う理由も調べて、彼に従う理由を無くしてしまおうと思っているよ。話を聞いた限り、"影縫い"は一対一でも一体多数でも実力を遺憾なく発揮できるみたいだからね。〉
〈だな。アイツには人数差なんて関係ねえからな。インゲインが自棄になって"影縫い"を暴れさせたら、どれだけの被害になるか分かったもんじゃねえ。〉
〈それが叶えば我等に大きな利点になるが、可能なのか?〉
〈そこは本人次第だね。でも、多分大丈夫だと思うよ?ヘシュトナー侯爵も言っていたけど、彼に従う事を渋っていたようだったからね。従う理由を教えてくれると思う。それさえわかれば、後はどうとでもなるんじゃないかな?例えば、身内が人質に取られているとかだったりした場合、その人質を解放してあげれば良いのだから。〉
〈アンタなら余裕で出来るってわけか。あー、こりゃエルガーが言ってた通り、インゲインの奴ぁ詰んでるな。ちっとばかし、同情するぜ・・・。〉
しなくて良いと思うよ?今まで他人に恨まれるような事を事をいくつもやっていたと思うし。
ああ、そうだ。モスダン公爵が正式に味方になってくれたと言うのなら、アレも彼に渡しておこうか。私よりも有効に使える筈だ。
ヘシュトナー侯爵の屋敷から回収した証拠書類を『収納』から取り出して、モスダン公爵に差し出す。
〈モスダン公爵、密会の最中にヘシュトナー侯爵の屋敷を物色していた時にこんなものを見つけたんだ。彼を追い詰めるのに利用できるんじゃないかな?〉
〈何?ヘシュトナー邸の物色だと・・・!?貴公、一体今晩だけでどれだけの事をすれば気が済むのだ・・・!?〉
〈はぁっ!?ちょっ!ノアッ!それは初耳だぞっ!まさかそのブッ壊れ魔術、複数同時に使用できるのかっ!?〉
〈えっ?ああ、そうだよ。そうだね、マコトには教えてなかった。済まない。まぁ、とにかくここ以外にも二人の侯爵の屋敷を物色していて、その際にヘシュトナー侯爵の屋敷から彼とナウシス騎士団との癒着と汚職、それから横領の証拠書類が見つかったから、複製した物と入れ替えて回収してきたよ。有効に使ってくれ。〉
〈・・・・・・・・・・・・受け取っておく・・・。〉
〈・・・これもう、積んだとかそういうレベルじゃねえな・・・。絶対敵に回しちゃ駄目な奴だ・・・。その時点で色んな意味で終わる・・・。〉
二人とも震え上がっているが、今回は状況が状況だったからこんな泥棒まがいの行動をとっていただけに過ぎない。そこまでドン引きする必要ないと思うんだ。
〈余程の事態にでもなければここまで強硬手段はとらないから、安心して欲しい。さて、話を戻すけど、ヘシュトナー侯爵の屋敷からは、他にも大量の犯罪や不正の証拠があると思うんだ。見つけ次第モスダン公爵に渡すから、それを用いてヘシュトナー侯爵達を裁く材料にして欲しい。ああ、勿論、そう言った書類はフルベイン侯爵達の屋敷にもあると思うから、そっちも見つけ次第貴方に渡すよ。〉
〈つまり、貴公の計画は、貴公と言う力をヘシュトナー卿達に一時的に持たせて増長、暴走させ、返り討ちにした後、その場でこれまでの罪の証拠を叩きつけて法律の下、裁かせる、という事で良いのだな?〉
〈うん。それで合ってる。〉
モスダン公爵が私の計画を簡潔にまとめてくれた。だが、彼には疑問に思う部分がある。
先程まで何も説明していなかったからな。聞かれなければ、後で説明するつもりだったのだ。
騎士達の制圧に向かう際の、モスダン公爵の動向である。
〈それで?ヘシュトナー卿達が騎士を制圧に向かう際、儂はどうするのだ?貴公は儂を生かしたいのだろう?希望が見えた今、儂も死ぬつもりは無い。〉
〈制圧には不参加という事で。どちらかと言うと、貴方には彼等に罪の証拠を叩きつける役をやってもらいたいんだ。あくまで貴方は増長した貴族達の象徴的な扱いだったのだろう?二人の侯爵も不参加には納得すると思うし、むしろ参加しない事で手柄を奪われないと思うだろうから、安心するんじゃないかな?〉
〈そこまで考えての事か・・・。良いだろう。貴公に協力しようではないか。貴公が持ち込んでくれたこの書類に関しては、任せてもらおう。〉
さて、モスダン公爵の協力も取り次ぐ事が出来たし、これで会話は終わりかな?
エリザベートに希望を見出したようで、やる気になってくれて良かった。
時刻は午前3時45分。大分話し込んでしまったらしい。そろそろ『通話』を解除して解散するとしよう。やれやれ、これではもうベッドで寝る事は出来そうにないな。日が昇るまでは読書にいそしむとしよう。
と思ったのだが、どうやら彼等はまだまだ話し足りないらしい。一通り話が済んだら、またしても二人が罵り合い始めてしまった。
〈ハッ!エリザに魔法が使えるようになるかもしれないと分かった途端、やたら生き生きとしやがって、ジジ馬鹿がよぉっ!〉
〈ほざけっ!その年にもなって後継者はおろか身を固める事も出来なかった貴様に、儂の気持ちなど分かるまいっ!それと、貴様がエリザを愛称で呼ぶなっ!〉
〈残念だがそいつぁ無理だな!何せ、エリザ本人から直接そう呼んで欲しいと頼まれてっからなぁ!〉
〈なっ、何だとっ!?貴様いつの間にっ!?お、おおぉ、エリザよ・・・!何故このような男に気を許してしまったのだ・・・!?〉
〈ガッハッハッ!これでもこちとら生ける伝説!腐ってもこの国の英雄様だぜ!?子供に好かれんのは当然だろうがよっ!〉
〈お、おのれぇえ・・・!〉
マコトはモスダン公爵をジジ馬鹿だと言っていたが、マコトも大概だと思う。正直、私から見ればどっちもどっちだ。
まったく、二人とも年齢は70を超え、
まぁ、マコトの場合は正確には庸人では無いので、もっと長生きするだろうけど。
それはそれとして、やっぱり二人とも仲良しじゃないか。
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