第108話 風呂に入ろう!
カンディーの風呂屋
教えてもらった場所には、デカデカとそんな文字の書かれた看板に親指を立てて白い歯を見せて笑っている筋肉質な初老の男性の絵が描かれている。
情報量が多すぎるような気もするが、実際にそんな看板があるのだ。目印として非常に有効なのは間違いない。ここまでインパクトがあるのならば記憶にも残るというものだ。
風呂屋の敷地はとても広いく、広さだけならば中央図書館とまではいかないものの、冒険者ギルドぐらいの広さはありそうだ。私にとっては、どのような施設なのかまるで分らない。それ故に期待も大きい。
現在時刻は9時10分くらいだ。周りには、これから風呂に入るために店に来た者や、風呂に入り終わって体から湯気を出しながら満足気な表情で店から出てくる者達が大勢いる。
これはますます期待できそうだな!早速風呂屋にに入ってみよう!
風呂屋に入れば、すぐに看板に描かれていた初老の男性とそっくりな人物が、私を大きな声で出迎えてくれた。カンディーと言うのは、彼の事で良いのだろう。
彼に入浴料を支払い、風呂の使い方を聞くとしようか。
「おうっ!いらっしゃい!こりゃあ随分な別嬪さんが来てくれたもんだ!」
「こんばんは。風呂屋と言うか、風呂自体が初めてなのだけど、使い方を教えてもらって良いかな?」
「おおぅっ!?姉ちゃん、風呂初めてかよっ!?よくぞウチの風呂屋に来てくれたっ!!ウチは王都に5件もある風呂屋の中でも特に湯に気を遣ってんだっ!『
そう言われて指で示された先には、二つ折りにされた厚紙が10数枚、重ねて籠に入れられていた。
手に取って内容を見てみれば、文字だけでなく絵によって丁寧に施設の使い方が掛かれている。これは分かり易くていいな!
「使い方が絵で説明してくれているのは、とても親切だね。」
「だろぉ!?コイツはな、冒険者ギルドのギルマスの提案なんだよ!アイツとは俺が若ぇ頃からの付き合いなんだが、これが色々と便利な事をポンポンと思いついては実行しちまう奴でなぁ!正直、この店がこんなに繁盛してんのは、アイツのおかげだったりするんだよな!」
なるほど。マコトは相当に風呂が好きなようだな。『清浄』を使用すれば清潔は保たれると言うのにもかかわらず、それでも湯につかるという事は、マコトにとっては風呂に入るという行為は体を清潔にするため、と言うわけではなさそうだ。
体が温まってよく眠れると言っていたし、そちらがマコトにとっての風呂の目的なのだろう。
さて、使い方は分かったのは良いのだが、現在私は手ぶらだ。当然、風呂用具などは一切所持していない。風呂用具はこの店で提供してもらえるのだろうか?
「姉ちゃん、風呂用具が無くて困ってんだろ?安心しな!間に合わせのような安物から、金持ちが使うような高級品まで、一通りの風呂用具は販売しているぜ!ま、流石に貴族様が使うような超高級品は置いてないけどよ!財布と相談して好きな奴を選んでくれ!」
至れり尽くせりだな。ひょっとして、これもマコトの助言によるものなのだろうか?どうやらマコトはただの
販売している風呂用品は安いものならば使い捨ての銅貨一枚で一式揃えられる物から、一式揃えるのに銀貨10枚も掛かってしまうような高級品まで多種多様だ。
特に値段が高いのは、洗髪用の液状石鹸だな。これ一つで銀貨7枚もする。
説明にはとても艶やかな髪質を得る事が出来、下級貴族も頻繁に使用していると書かれている。
貴族が使用しているのなら確かに値が張るのも当然だな。一般の人々では、なかなか手が出せない商品だろう。
まぁ、今の私にとって銀貨10枚は大した額ではない。奮発して購入させてもらおう。『収納』から銀貨を取り出してカンディーに渡す。
「では、高級風呂用具セットを一つ購入させてもらうよ。」
「うおっ!?姉ちゃんスゲエな!アイツでもそこまでスムーズに『格納』は使えねぇぞ!?しかも平然と銀貨10枚支払えるたぁ、姉ちゃん、金持ちだなぁ!」
「貴族ほどでは無いにしろ、それなりにお金は持っているよ。冒険者と言う職業は、人によってはとても儲かる仕事だからね。」
「ガハハ!確かにそんだけスゲエ魔術が使えるなら、そりゃあ冒険者の仕事もバリバリこなせるだろうな!」
私が『収納』を目の前で使用して見せた事で、少なくとも魔術師としては相当な実力者だと認識したようだ。豪快に笑って納得してくれた。
購入した風呂用具を受け取り、奥へと進む。風呂は男女別々の場所で入るのか。
ああ、人間達は裸を見られる事、特に異性に見られる事に対して強い羞恥を抱くのだったな。それで風呂も別々、という事か。
奥へ進むと、脱衣所なる場所に着いた。ここで衣服を脱いで鍵付きの棚に仕舞うようだ。周りの利用客を見るに、棚の鍵は紐に括られていて、手首や足首に括って風呂場へと行くらしい。
風呂の利用者は若者から老人まで満遍なく利用しているな。子供がいないのは、遅い時間だからだろうか。
衣服を脱いでいると、妙に視線を感じる。風呂用具を持って風呂場へ向かおうとする際に周囲を見渡すと、大勢が私の事を見ていた。はて、何か気になる事でもあるのだろうか。
いや、この場にいる
風呂場は入ってすぐのロビーよりも更に広々としている。湯に浸かって気持ちよさそうにしている者から、石鹸で体の汚れを洗い流している者まで様々だ。
では、私も湯につかる前にしっかりと髪や体を洗うとしよう。『清浄』を使用すればその必要も無いのだろうが、折角風呂場まで来てそれでは情緒が無いだろう。[郷に入っては郷に従え]、だ。石鹸の効果も試してみたいしな。
石鹸と言うのもなかなか良い物だな。まず香りが良い。甘さと爽やかさを感じさせる香りは気分を落ち着かせるのに役立つだろう。
それに、洗髪料を使ってからというもの、髪がとても滑らかな質感をしていて、触り心地が良いのだ。これは良い。髪を乾かしたらどうなるか、今から楽しみだ。
体を洗う固形石鹸も良い物だ。体を一通り洗い、体に付いた泡を湯で流すと、とても肌がスベスベしているのだ。まさか自分の体だと言うのに、触っていて触り心地が良いと思う事になるとは思わなかった。
髪も体も洗い終わったところで、いよいよ風呂に入る時だ。
周りの客は年齢問わず皆気持ちよさそうにしているので、どれほど気持ちが良いのかとても楽しみだ。
空いている場所に早速浸からせてもらおう。おっと、タオルは湯に入れてはいけないらしい。髪を湯の中に入れるのもどうかと思うので、後ろ髪を持ち上げてタオルで巻き付けて固定しておこう。
・・・・・・・・・・素晴らしい。これはとても心地良いな。体全体が温かさに包まれて、満遍なく温められていく。
「ああぁ~~~。」
肩まで湯に浸かった途端、自然と声が漏れだしてしまった。凄いな、これは。なるほど。マコトが風呂に執着するのはコレのためか。彼には明日、風呂を教えてくれた事に改めて礼を言っておこう。
「おや、ひょっとして、ノアさんですか?お疲れ様です。」
「ん?ああ、貴女もここを利用していたんだね。今日の仕事はもう終わりなのかな?お疲れさま。」
湯の暖かさに身を任せていると、聞き覚えのある声に声を掛けられた。例の四人を捨てに行った際に会話をした女性の門番だ。
髪型が分からないのに良く私だと分かったな。
まぁ、彼女の紙も長かったので、私と同じように後ろ髪を頭頂部で纏めてタオルで固定しているから、お互い様かもしれないが。
「ええ、今日の仕事は終わりです。良いですよねぇ、ここのお風呂は。とても広々としているし、お風呂のお湯もとても綺麗です。私は王都の出身では無かったのですが、この場所の事を知ってからは、毎日通わせてもらっています。ノアさんも、このお風呂、気に入ったみたいですね?」
「ああ、風呂の事は今日の会話の中でポロッと出た一言で知ったのだけど、これほどまで良い物だとは思わなかったよ。私も、可能なら王都に滞在している間は毎日利用しようと思っているよ。」
「会話の中の一言を聞き逃さなっかったのは凄いですね。ふふっ、清潔でいるだけなら『清浄』があればいいですが、やっぱりこの快感はお風呂でなければ味わえませんからね。」
そうか。彼女も風呂にハマった一人なのだな。気持ちは分かる。私も初回で気に入ってしまったからな。
やはり人間と言う生き物は凄い事を考えつくものだ。素直に賞賛を送りたいよ。
そんな風に人間の文化に感動していると、門番の女性が何やら私の臭いを嗅いでいる。
と言っても、あからさまに鼻を鳴らして匂いを嗅いでいるわけじゃない。ただ、呼吸をしている際に、私から発せられている石鹸の香りに意識を集中しているようなのだ。
香りが気になったのか、彼女は私に訊ねてきた。
「あの、ノアさんの髪からとてもいい香りがするのですが、ひょっとしてあのやたら高い洗髪料を買ったんですか?」
「ああ、どうせなら良い物を使おうと思ってね。今の私の所持金は結構余裕があるから購入させてもらったよ。」
「う、羨ましいですね・・・。その洗髪料、香りもとても良いのですが、やはり使用した後に髪を乾かすと絹のように艶やかな質感を持つという効果が、とても評判なのです。すっと昔は、髪が艶やかになるような洗髪料は上級貴族のみが使用していたそうなのですが、隣のニスマ王国のセンドー子爵がお抱えの錬金術師にその洗髪料を開発させた事で、私達にも利用できるようになったんです。尤も、頻繁に使用できるほど安価、と言うわけでもありませんが・・・。」
ならば、そのセンドー子爵と言う人物に感謝しなくてはな。子爵、という事はその人物は貴族か。
庶民に貴族が使うような品を安価で提供する事で儲けを出している、という事かな?なかなか人の需要というものを理解している人物なのかもしれない。
さて、体も十分に温まって来たのか、門番の女性は顔が赤くなっているな。額からは汗も出てきている。
当然だが、私は発汗していない。
だが、湯の暖かさに慣れてきてしまったためか、最初に浸かった時ほどの快適さを感じなくなってきている。
「私はそろそろ上がりますけど、ノアさんはどうしますか?」
「ん。私もそろそろ上がる事にするよ。まったく、これで銅貨一枚とは、安すぎるような気もするね。」
「ええ、本当に。ですが、これだけ沢山の人が利用していますし、このお店、まず銅貨一枚だけで済ませられるようなお店じゃなかったりするんですよ。」
「とても良心的な店だと思うのだけれど、この後何かあるのかい?」
「ふふふ、お風呂を出てからのお楽しみです。」
銅貨一枚で終わらせる気が無いとは言っているが、門番の女性は何かをとても楽しみにしている表情をしている。
つまり、風呂上りにとても良い物を売っている、という事なのだろう。それも、一度知ってしまったら買わずにはいられないほどの商品を。
商売上手な事だな。
湯から上がり、脱衣所に向かおうとしたのだが、この時も周囲から視線を集めてしまった。門番の女性も私を見てとても驚いているな。一体何だと言うのだろうか?
と思ったら、彼女から声を掛けられた。
「えぇ・・・ノ、ノアさんっ、すみませんっ!少し、少しだけで良いので、体を触らせてもらって良いですかっ!?」
「?ああ、構わないよ。まぁ、確かに自分で触ってみても触り心地が良いと思ったからね。好きにすると良いよ。」
「す、好きなだけ・・・(ゴクリッ)で、では、失礼します・・・!」
別に触られたところで害があるわけでは無いので好きに触らせる。そういえば、人間に相手側から触れられたのは、これが初めてか?
門番の女性は真剣な表情で私の首、腕、肩、胸、腰、腹、腿と満遍なく触れている。確かに触り心地が良いとは思ったが、それでもフレミーの作ってくれた布の方が触り心地は上だ。ここまで真剣になるような事では無いと思うのだが・・・。
「な、なんてスベスベで滑らかな肌・・・それでいて柔らかくてハリも艶もあって・・・がさついた部分が一ヶ所も無いし、シミなんてまるで無い・・・こ、こんなに綺麗な肌、どうやって保っているんですかっ!?」
「どう、と言われてもね・・・普段は『清浄』を使って汚れを落としているぐらいだよ?強いて言うなら、ここで売られていた石鹸を使ったからじゃないかな?普段自分の肌に触れてもここまで触り心地は良くなかったからね。」
「一個銀貨2枚っ!くぅっ!とてもじゃないですけど、容易に手が出せる物じゃありませんっ!」
門番の女性はとても悔しそうだ。やはり一般的に銀貨一枚は大金なのだという事を、改めて認識させられる。
この石鹼を頻繁に利用できるとしたら、裕福な商人や成功している冒険者ぐらいか?ああ、自分で作れそうな錬金術師も頻繁に使ってそうだな。
「さて、もういいかな?出来れば、風呂上がりのお楽しみとやらを私に教えてくれると嬉しいのだけど。」
「そ、そうですね。ええ、行きましょう!石鹸には手が出せませんが、アレなら誰でも楽しめますから!」
折角温まった体が冷えてしまってはもったいない。髪と体を乾かして風呂上がりの楽しみとやらを教えてもらおう。
で、体を乾かしたのは良いのだが、ここでも再び視線を集めてしまった。
だがまぁ、今回は流石に分かる。
私の髪がとても艶やかに光を反射しているのだ。しかも私の髪は元々光の当たる角度によって緑と紫に光沢を放つため、余計にその輝きが目立つ形となっている。
「えっちょっ!?ノ、ノアさんっ!?その髪、一体どうなってるんですかっ!?ええ・・・これ、ちょっとヤバいですよ・・・?」
「ああー、コレはかなり目立つね。目立って仕方が無いけれど、触り心地は悪くないどころか、かなり良いね。少々周りからの視線が煩わしくなってしまうけれど、折角買ったんだ。構わず使うとしよう。」
「も、物怖じしませんね・・・。まぁ、大の大人四人を引きずったうえであれだけの速さで走れる人が、今更他人の目なんて気にしないですよね。」
「そういう事。元々似たような視線は浴び続けていたからね。」
同じような視線が今後少し増える、そう考えておけば良いだろう。
脱衣所で脱いだ服に『清浄』を掛けてから着替え、ロビーへと戻るとしよう。
門番の女性はかなりシンプルな服装だな。薄手のシャツとハーフパンツだけだ。体がしっかりと温まっているから、風呂屋の入り口から出てきた客達同様、湯気が立っている。
「おう!姉ちゃん!お帰り!ウチ自慢の風呂はどうだったよ!?気に入ってくれたかいっ!?」
「ああ、とても気に入ったよ!これから可能ならば毎日通わせてもらうよ。」
「ガハハ!そいつぁ良かった!店に入って来た時もえらい美人だったが、更にとんでもない美人さんになっちまったなぁ!」
「いや、カンディーさん、笑い事じゃないですよ!今も男の人達がノアさんに釘付けになっちゃってるじゃないですか!」
「んな事言われてもよぉ・・・いいかい、マーサちゃん。男ってなぁ、美人を見たら振り向いちまう単純な生き物なんだ。大目に見てやってくれや。」
「まぁ、似たような視線には慣れているから、私は気にしないよ。尤も、私を見ていたせいで何かにぶつかってしまったとしても、責任はとれないけどね。」
「ガハハハハッ!そりゃそうだ!おい聞いたかお前等!この姉ちゃんが美人だからって、あんまりジロジロと見続けてたら、どうなっても知らんぞ!?」
豪快に笑いながら話すカンディーは、私の容姿を褒めはするが、見とれているわけでは無いようだな。彼にも、ユージェンのように心に決めた愛する女性がいるのだろうか?
カンディーが周りの男性達に注意を促すも、周囲の視線は変わらず私に向いている。本当に、周りの状況に気がつかず、何かにぶつからないようにな。
少し納得のいかない表情をしている門番の女性、マーサがカンディーに訴えたい事があるようだ。おそらく、風呂上がりの楽しみ、というやつだろう。
「もういいです!それよりもカンディーさん!いつものアレ、お願いします!」
「あいよっ!姉ちゃんもどうだい!?キンッキンに冷えたフルーツミルクだ!湯上りにはコイツがキクぜぇ!?代金は銅貨一枚!値が張るかもしれんが、まぁ、まずは一杯飲んでみな!」
フルーツミルク。名前からして、動物の乳と果物の果汁を混ぜた飲料だという事は分かる。果汁を使っているのならば甘さもあるだろう。
それよりも、だ。かなりの低温で冷やしているという事の方に興味がある。
今、私達の体は温かい湯に浸かって内側までしっかりと温まっている状態だ。普通の人間が厚着をしてしまったら、すぐに汗をかいてしまうほどだ。
そんな状態で冷たい飲み物を飲む、とな!?そんなの、絶対美味いに決まっているじゃないか!?
「いただくよ。湯上りで温まった体にすぐさま冷たい飲料とは、なかなかににくい商売をしているね。これもギルドマスターの提案かい?」
「まいど!実を言うとそうなんだよ!態々自力で飲み物をキンッキンに冷やす魔術具まで作っちまってよ!あんまりにも必死だったから、アイツ、この店の経営を立て直すためとか言って、実際には自分が楽しみたいから提案したんじゃねえかって、思ってよ!思い切って聞いてみたんだよ!ほいっ!フルーツミルク一つな!コイツを風呂上がりに一気飲みするのが、最っ高にキクんだよ!」
代金を支払い、カンディーからフルーツミルクを受け取る。瓶からしてしっかりと冷えている。手に持った感じ、内容量は120ml、と言ったところか。
言われたとおりに一気に中に入っている甘い香りのする飲料を喉に流していけば、温まった体に冷たい液体が流れ込み、急激に体が冷やされる。
~~~っ!凄まじい快感に、思わず目を閉じてしった!
なるほどぉ!これがキク、というヤツか!まったく、言葉通りだな!隣でフルーツミルクを一気飲みしたマーサも御機嫌である。
マコトめ!とんでも無い事を思いつてくれたものだ!クセになってしまったらどうしてくれる!?
「んっ・・・ぐっ・・・ぐっ・・・ぷはぁーっ!やっぱりお風呂上りはコレですよっ!冷たくて甘いフルーツミルクが温まった体を急激に冷やすこの感覚・・・たまりませんッ!」
「ほぁーっ・・・これは、やめられなくなってしまいそうだね。確かに、キク。それで、結局のところギルドマスターはなんて答えたんだい?」
「ガハハハハッ!姉ちゃんもバッチリハマっちまったみてぇだな!これからも贔屓にしてくれよ!?そんでな、ギルマスの奴なんだが、俺が質問したらあの野郎、かなりどもりながら否定しやがったよ!んな反応したらバレバレだっつうの!」
なるほど。何とも欲望に忠実な事じゃないか。だが、カンディーにとってはそんな事はどうでも良いのだろう。友人が自分のためとはいえ、ここまでしてくれた事が嬉しかったようだし、感謝もしているみたいだ。
「それではノアさん、私はこれで。おやすみなさい。」
「ああ、おやすみ。今日は良い事を教えてくれてありがとう。」
風呂屋の入り口でマーサと分かれる。いやぁ、それにしても想像以上に素晴らしい体験だったな!今日はいつも以上にぐっすりと眠れそうだ!
マコトが夢中になるのも良く分かる。あれだけ疲れた表情をしていたが、こんな体験をすれば今日の疲れなど吹き飛んでしまうというものだ。
自分が楽しみたいとは言え、よくこんな施設を用意してくれた!
待てよ?
つまりマコトはこういった施設を、元から知っていた可能性があるという事か?
ん?
だとすると、まさか、マコトは・・・あり得るのか?
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