第107話 貴族?との食事

 フロへの期待を胸に、やや早歩きで"白い顔の青本亭"に戻って来てみれば、食欲をそそるいい匂いが私の鼻孔を刺激した。この宿の夕食は、イスティエスタに負けず劣らずの味が期待できそうだ!


 宿の扉を開ければ、ブライアンが景気の良い声で出迎えてくれた。


 「よう、嬢ちゃん!遅かったなぁ!」

 「冒険者ギルドでちょっとトラブルがあってね、ギルドマスターと長々と話をする事になってしまったよ。」

 「へぇ~っ!嬢ちゃん、やっぱりギルドマスターと会話が出来るぐらい高ランクなのか!?まぁ、あんだけスムーズに『格納』が使えるんだもんな!納得だぜ!」


 イスティエスタの時もそうだったが、『格納』が使用できる冒険者は軒並み高ランクなのだろうな。誤解されたままと言うのも面白く無いし、ちゃんと説明して誤解を解いておこう。


 「実は先週登録をしたばかりでね。私はまだ"中級インター"だよ。」

 「マジかっ!?あー、いや、でも嬢ちゃんは竜人ドラグナムだかんなぁ。人と今まで関わってなかったっつってもおかしくねえのか?」

 「おかしくないんじゃないかな?少なくとも、私が人と初めて会話をしたのは、つい最近の事だよ?ちょっとした事で人と関わる事が出来て、人の生活に興味が沸いたんだ。」


 多少事実をぼかしてブライアンへ説明する。嘘は言っていない。私が人間と初めて話をしたのはつい先週の事だからな。


 「はぁ~、そんな小説みてえな話ってのもあるとこにゃあ、あるもんなんだなぁ。俺達庸人ヒュムスにゃあ、まず縁のねえ話なんだろぉなぁ・・・。」

 「正直、それで良いと思うけれどね。この国に来るまで、私が食べていた物は、肉と魚を生で食べるか焼いて食べるかのどちらかしかなかったからね。まぁ、でも家の周りの果実はとても美味しかったよ。」

 「マ、マァジかぁ・・・嬢ちゃん、大変だったんだなぁ・・・良し!嬢ちゃん!ウチの料理、存っ分に食ってくれよな!味はこの宿の客、全員が保障するぜ!」


 それは楽しみだ。と、言いたかったんだが、今はどの席にも客がいる様で食事を取れそうにないな。誰かが食事を終えるまで、自室で待つ事になるか。

 まぁ、図書館へ向かうだけの時間の余裕があれば問題無い。自室で読書をしながら時間を潰すとしよう。


 「まぁ待ちな。相席で良いなら直ぐにでも食事が出来るぜ?」

 「良いのかい?」

 「嬢ちゃんみたいな美人さんだったら、誰だって歓迎するだろうぜ!ちょっと待ってな!確認して来るからよ!」


 そう言ってブライアンはカウンターから離れて行ってしまった。

 多少せっかちな気もするが、私に美味いものを食べて欲しいという、彼の純粋な気持ちが伝わってきていたので、素直に待つとしよう。


 一分も掛からない内に従業員と共にブライアンが戻ってきた。


 「待たせたな、嬢ちゃん!相席をするなら是非って野郎共が大勢いてよ、時間が掛かっちまった。ま、安心しな!嬢ちゃんに色目を使うような奴ぁ、選んでねえからよ!んじゃ、案内は頼んだぜ!」

 「はい、ではノア様、此方へどうぞ。」


 50秒程度の待機時間を時間が掛かってしまったと判断して良いのかはともかく、邪な感情を持つ相手と相席する事は無さそうだ。


 ブライアンとは対照的に丁寧な言葉遣いをする従業員に案内された席には、妙齢の女性が席に着いていた。種族は庸人。年齢は大体30~40、と言ったところか。

 だが、外見的には20台と言っても通用しそうだな。客観的に見ても美女と呼べる外見をしている。この席に視線が集まっているのは、気のせいでは無い筈だ。

 服のデザインは裕福な平民が着るようなものだが、周りの客と比べてもかなり上質な生地の服を着ているところを見ると、彼女は貴族という上流階級の人間なのかもしれないな。

 そう言った人間が平民が利用する場所で食事を取っても大丈夫なのだろうか?


 それはそれとして、彼女には何処か既視感を覚えるな。思い当たる節は・・・。

 一つある。私の予想が当たっている場合、彼女は一児の母、という事になるな。


 「アイラ様、此方の御方が相席をさせていただくノア様です。」

 「ありがとう。ノアさん、私の事はお気になさらず、好きなように食事を楽しんでくださいね?」

 「そうさせてもらうよ。相席を認めてくれてありがとう。」

 「いいんですよ。ですが、感謝を述べてくれるのであれば、ノアさんのお話を聞かせてもらいたいですね。」


 自分の事は気にしなくて良いと言いつつも、私の事は聞きたい、か。気にするな、と言うのはあくまでテーブルマナーのあれこれ、という事だろうか。ますます彼女が貴族なんじゃないかと思えてくるな。


 まぁ、相手が貴族だろうが何だろうが構いはしない。私にはあまり関係が無い事だろう。そんな事よりも食事だ。机にメニューが置いてあるので、気になった者から適当に5品頼んでおこう。

 料理が運ばれてくるまでの間、アイラと呼ばれた女性と会話をして待つ事にした。


 「随分と沢山食べるのですね・・・。」

 「本当は食べても食べなくても、どちらでも良いのだけれどね。上手い食事だと言うのなら、沢山味わいたいじゃないか。」

 「ふふふっ、面白い方ですね。ねえノアさん?貴女は、今日この王都に訪れたのですよね?」

 「ああ、そうだよ。街の人達が私の事で何か話していたのかな?そうでなくても私は珍しい種族らしいし、貴女の耳には自然と入って来るのかな?」


 彼女が私の想定した人物であるならば、私の事も報告が入っていてもおかしくは無いだろう。

 この宿には騎士のマックスに案内されたわけだが、彼が自分の仕事の内容を真面目に上司に報告をしている場合、私がこの宿に宿泊しているという事実もある程度の人物には知れ渡っている筈だ。

 我ながら少々強引な推測だが、そう言った経由で彼女が私に興味を持って会いに来たと考えても、一応納得は出来る、のか?

 仮にそうだったとして、何故彼女が私に用があるのかなど、まるで分らないが。


 「あら?ふふふ、そうですね。確かに、多くの方々がノアさんの事を話していましたよ。見た事が無いほど美しい竜人の女性が、何も持たずに街を歩いていた。そうかと思えば、ガラの悪い男性達を引きずりながら物凄い速さで冒険者ギルドから外へ向かって走って行ったりと、聞いているだけで愉快な方だと思ってしまいましたよ?」

 「今日はそれ以上の騒動があったようだけれどね。」

 「ええ、まさか巫女様が直接行動なさるほどの天空神様の気配が現れるだなんて、この数十年間全く無かった事ですから。近い内に盛大にお祭りが開かれるかもしれませんね。」


 慕われてるなぁ、ルグナツァリオ。それだけの影響力を持っていながら、何故ああまで安易に他者へと干渉したがるのだろうか?

 初めて会った時は、この星の生命の営みを眺めるだけで満たされていると言っていたが、実際のところはあまり満足していなさそうだ。


 だが、祭りが開かれるのは良いとして、直ぐに開かれるわけでは無いのか。

 私は不思議そうな顔をしていたのだろうな。私の顔を見ておかしそうに笑いながらアイラが答えてくれた。


 「いくらおめでたい事だからと言っても、直ぐにお祭りが開かれるわけではありませんよ?とてもおめでたい事だからこそ、国を挙げてのお祭りになりますもの。準備にはそれなりに時間が掛かりますわ。」

 「それもそうか。普段通りに過ごしていて、急に盛大な祭りを行う、と言われても無理があるのは当然だな。」

 「ええ。何事も、準備は大事なのです。ああ、食事が来たみたいですね。」


 従業員が食事を運んできたようだ。運んできた料理は三品。二つは私の、一つはアイラの食事のようだ。彼女も今から食事をするのだろうか?


 「それではいただきましょうか。相変わらず、この宿の料理は良い香りをしています。夫と結婚する前から、この宿の料理は楽しんでいたんです。近いうちに娘も連れてこようかと思っているんですよ?」

 「とても思い入れがあって、気に入っているようだね。娘を連れてきていないのは、やはり酒を飲める年齢では無いからかな?」


 この国の法律では飲酒は成人とみなされる十五歳までは禁じられている。まぁ、大抵の村では祝い事があると、未成年でも平気で飲ませたりしているらしいが。こういったところでは流石に人の目もある事だし、難しいのだろうな。

 飲ませるなら家の中で少しだけ、と言ったところか。


 「ええ、それもあります。もうすぐ十五になりますので、お酒の味も覚えさせようと思っているのです。少々、夫に似過ぎてしまい、男勝りなところがありますが、私にとって、とても可愛い娘です。」

 「そうか。貴女の娘なら、さぞ周りの異性からの人気が高いんじゃないのか?」


 食事を口に運びながら会話を進める。・・・うん。良い味だ。肉と野菜の旨味を見事に調和させている。この肉の香りと旨味は、取ってすぐに用意した物ではなさそうだな。確か、熟成肉、と言ったか。一定期間、低温で保存して肉の質感と味を変化させたものだった筈だ。

 肉はとても柔らかく、顎の力が弱い幼い子供から老人まで、問題無く堪能する事ができるだろう。

 味付けも絶妙だ。塩味、辛み、そして僅かな甘味。どれもしっかりと感じる事が出来ながらも素材の味を殺していない。見事なものだ。

 あっという間に一品目の料理が無くなってしまった。次の品を頂くか。


 おっと、アイラの娘だったな。食べる事に夢中になってしまっては、折角相席を認めてくれたアイラに悪いというものだ。彼女は私と話をしたいようだからな。


 「ええ、娘はなかなかにモテるみたいですよ?何人かの殿方に求婚をされたんだとか。ふふっそれにしても、凄い速さですね。それでいて食べ方はとても丁寧。娘も少しはノアさんを見習って貰いたいものですね。」

 「私は結構大きく口を開けられるからね。沢山食べ物が口の中に入るんだ。それに歯も頑丈で顎の力も強いから、今まで食べる事に困った事は一度も無いよ。」

 「まぁ!それなら、硬いステーキなどでも簡単に食べられてしまいそうですね?羨ましいです。」

 「私は今までステーキというものを食べて固いと感じた事は無いかな。この宿のステーキもそうだけれど、ステーキというものは柔らかくて美味いものだと思っていたのだけど、違うのかな?」

 「全然違いますよ?固い肉は何度も噛まなければ噛み切れませんもの。そのうえ、そういった肉の味は大抵美味しくないんです。肉そのものの質が悪いのです。」


 なんと。つまり私が今まで食べてきたステーキの肉と言うのはとても丹精込めて育てられた上質の肉だった、という事か。つくづく私は運が良い。

 初めて食べる料理がアイラが言うような料理だった場合、間違いなく人間の料理に対して落胆していただろうな。


 「そうだ。貴女の娘が複数の異性から求婚されていたと言っていたね。本人はどういう反応をしていたんだい?貴方の呆れた表情を見るに、面白い返答をしたように思えるのだけれど。」

 「身内としてはあまり面白くはありませんよ?先程も言いましたが、娘は夫に似過ぎてしまったせいで、自分より強くない人とは結婚しない、などと言うのですから。ええ、求婚してきた殿方皆さん、木剣で返り討ちです。」


 それはまた、苛烈な少女だな。

 まぁ、彼女の父親の事を考えれば納得もできるか。父親は娘を溺愛していたようだし、娘は娘で父親をとても尊敬しているようだ。


 「母親としては、あまり嬉しくなさそうだね。」

 「ええ、それはもう。少しは淑女らしくしなさいと言っても、騎士になると言って聞かない子ですから。行き遅れてしまいそうで今から心配です。」


 アイラの酒を飲むペースが速いな。食事は程々に進めているようだが、酒に関しては酒精の高いものを明らかに料理よりも多く口に運んでいる。


 彼女も、色々と辛い事があるのだろう。健康を害さない範囲でそっとしておこう。私にとやかく言う資格は無いのだから。


 「ノアさん?私の話も良いですが、貴女の話も聞かせて下さい?大の成人男性を四人纏めて引きずり回せるだなんて、とても普通の人が出来る事では無いのですよ?ですが、ノアと言う竜人の冒険者など、私聞いた事がありません。詳しく聞かせて下さいな。」

 「アイラは有力な冒険者に詳しいんだね。まあ、大した事では無いよ。」


 かなりのペースで酒を飲んできたからな。アイラにも酔いが回ってきたのだろう。顔はほんのりと赤くなり、少しだけ微睡んでいるかの表情をしている。

 この表情は男性にとっては危険だな。仮に女好きのダンダードがアイラのこの表情を見たら間違いなくよからぬ事を考えるだろう。尤も、彼の場合、そういった状況になったら彼の妻であるタニアにこっぴどく叱られる事になるだろうが。


 まぁ、今は私と一緒にいるのだ。彼女に危害を加えようとする者がいるのならば、私が対応しよう。


 アイラに私の話をねだられてしまったので、何人かに話した、これまでの私の冒険者になるまでの経緯と、王都に来るまでの活動、それから今日の騒動の内容を説明した。流石に、シセラとの話の内容まではしなかったが。

 彼女は私の話を聞いている間も、先程と変わらないペースで酒を飲んでいる。速いペースで酒を飲んでいたのは喉を潤すためだと思ったのだが、そうではないらしい。彼女は単純に酒が好きなようだ。

 フレミーと気が合いそうだな。会った時点でアイラがショック死してしまいそうではあるが。


 「ああ、とっても楽しい・・・。娘に良いお土産話出来たわ。ノアさん、色々と我儘なお願いをしてしまって、ごめんなさいね?」

 「構わないさ。貴女と話をするのはなかなかに楽しかったし、貴女の娘にも多少興味が沸いたよ。だけど、だからこそ気になるな。どうして、貴女はここで一人で食事に来たんだい?」


 最初から気になっていた事ではある。アイラの口ぶりからして、彼女も父親同様、娘の事をとても愛しているのは間違いないだろう。そんな娘を置いて、こういった場所で食事をしていてよかったのだろうか。


 「ふふふっ、そうですよね。この国に来てすぐでは流石に分かりませんよね。大丈夫ですよ。娘は今、全寮制の学校に通っているので、家にはいないんです。」

 「なるほど。ある程度好きに食事を楽しめるという事か。」

 「ええ。と言っても、こう見えて私にも外聞というものがありますから、あまり頻繁には出かけられないのですけどね。ノアさんがこの宿に泊まったと聞いたので、是非会ってみたいと思ったんです。」


 耳の早い事だ。彼女の夫は、やはり多くの人々から慕われていたという事か。だからこそ、私としては少々複雑気分なのだが。


 それはそれとして、学校か・・・少し興味があるな。どうやらそれなりに身分のある者や信頼のある子供でなければ通う事が出来なさそうではあるが、どういった事を学んでいるのだろうか。

 この国以外にも学校自体はあるだろうし、機会があれば関わってみるのも良いかもしれないな。



 「ノアさん、今日は本当に楽しかったわ。出来れば今度は王都でのノアさんの活躍を聞かせてもらってもいいかしら?」

 「時間が合えば構わないよ。私は今月末まで王都に滞在するつもりだから。その間でよければね。」


 食事が終わり、私達は宿の外にいる。酔いが回っているようなので家まで送ろうか聞いてみたのだが、丁寧に断られてしまった。アイラの顔は確かに赤くなっているが、宿の外に出るまでの彼女の足取りはしっかりしていたので、問題無く家まで帰る事が出来るのだろう。

 もしかしたら近くに護衛がいるのかもしれないし、この時間でも金属が小さくぶつかる音が聞こえる。鎧を着た騎士が巡回している音だ。妙な道に行かなければ治安は保障されているようだし、私が過保護になる必要は無さそうだ。


 「言質、取りましたよ?では、いずれまた・・・御機嫌よう。」


 そう言って、とても丁寧なお辞儀、カテーシーとやらをした後、ふらつく事なくアイラは宿から王城のある方向へと歩いて行った。アレでは[私は貴族です]、と言っているようなものなのだが、そう伝えたかったのだろうか。


 現在時刻は午後8時前。"白い顔の青本亭"にはカウンターに時計が置いてあるので、正確に時間が分かる。有り難い事だ。


 さて、一時間と言えども図書館は利用できるのだ。本を読む余裕までは無いかもしれないが、出来る限りの本を複製してしまおう。


 「やぁ、また来させてもらったよ。少しの間、利用させてもらうよ?」

 「ああ、ノアさんいらっしゃいませ。どうぞ、ごゆっくり。と言っても、閉館時間まで一時間もありませんが。」


 確かに、ここまで来るのに15分近く掛かっているからな。走ってしまえばもっと早く図書館に着くだろうけど、こんな時間に街の通りを爆走してしまえば、間違いなく巡回している騎士に注意されてしまうだろうからな。

 時間に余裕が無いわけでは無いのだ。例え今日、僅かな時間しか図書館を利用できなくとも、明日また図書館に来て好きなだけ本を複製して読書を楽しめれば、それでいい。



 とは言え、やはり閉館の時間が来てしまうと名残惜しく感じてしまうのは、仕方が無い事だ。まったく、本当に素晴らしい施設だよ、この図書館は。


 「あ、ノアさん。お疲れ様です。お帰りですか?」

 「ああ、もう閉館時間になるだろう?続きは明日楽しませてもらうよ。」

 「ええ・・・時計が無いのに、よく時間が分かりますね・・・。あの、ところでノアさん、失礼を承知で訊ねたい事があるんですけど・・・。」

 「良いよ。聞かせてくれるかい?多分、大抵の事には答えられるから。」


 おずおずとした態度で受付が私に訊ねたい事があると話を持ち出してきた。おそらくは本の複製が出来るかどうかの確認だな。

 まぁ、隠す事でも無いし、それで本の複製依頼が持ち込まれたとしても私としては何ら問題無い。快く引き受けようじゃないか。


 「ノアさんって、もしかしなくても、本の複製が出来ちゃったりします?それも、物凄い速さで。」

 「出来ちゃったりするよ。それも、とても物凄い速さで。具体的には・・・こんな感じだね。」

 「っ!?!?え、ええぇ・・・・・・。あっ、いやっ、失礼しました!あまりにも現実離れした現象が起きてしまったので、本当にすみませんっ!」


 予想通りの質問だ。どの程度の速さで複製できるかは実際に見せた方が早いだろうから、この街でも冒険者達に押し売ろうと思っている『清浄ピュアリッシング』の魔術書と魔術言語の本を、彼女の目の前で複製して見せた。

 分かり切っていた事だが、凄い驚きようだな。

 だが、その驚き方が相手にとって失礼な態度だと思ったのだろう。驚いた時と同じぐらいの勢いで謝り出した。


 「構わないさ。それで、本の複製依頼でも出すのかい?私は問題無いよ?イスティエスタでもやった事だしね。」

 「ほ、本当ですかっ!?是非、是非お願いしますっ!あのっ、複製する本のジャンルに決まりと言うか、複製したくない本とかは無いですか?」

 「そちらが複製をしてはいけない本でなければ制限無く複製するよ。まぁ、ついでに私の分も複製させてもらうけどね。ああ、一応、そちらの分の紙はそちらで用意してくれるかい?」

 「も、勿論ですっ!それでは、館長にノアさんの事を伝えておきますので、近い内に指名依頼が出されると思います。その時は、よろしくお願いします!」


 彼女のお願いに快く返事をして私は中央図書館を後にした。冒険者ギルドを出てからここまで、実に有意義な時間を過ごす事が出来ているが、今日の楽しみはまだ終わっていない。


 いよいよ初体験のフロだ!

 フロ屋の位置は当然事前に聞いている。どのようなものなのか、じっくりと教えてもらおうじゃないか!

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