閑話 "彼女"に対する反応8

 日が変わり、早朝から早速ノアと冒険者達との間で一悶着あったようだ。

 昨日注意したにも関わらず、相変わらず不衛生な状態で冒険者ギルドに訪れた連中に対して、頭に来たのだろう。珍しく声を荒らげて、冒険者達を叱りつけていた。


 それはそれとして、昨日の今日で既にノアは二種類の本を大量に複製し終わらせていて、格安で冒険者達に魔術言語と『清浄ピュアリッシング』の魔術書を売りつけていたらしい。しかも購入する気のない者はギルドに入れさせないつもりだったようだ。

 結果として全員代金を支払い購入する事になっていたのだが、彼女は余程不衛生である事や悪臭が嫌いなのだろうか?

 まだ所持金が少ない"初級ルーキー"達には、銅貨二枚というタダ同然の価格で売りつけてすらいた。

 更には、文字の読み書きが出来ない者達に対して、積極的にそれを覚えるように勧めていたのだ。


 有り難い事この上ない事なのだが、なぜ彼女がそこまでするのだ?まさか、本当に冒険者達の悪臭や汚れを根本的に取り除こうとしているとでも言うのだろうか?

 だが、キリの無い話だぞ?どうしても辺境の村から冒険者になるために街に訪れて来る者達は、文字の読み書きが出来ないのだ。

 一時的には問題が解消されるだろうが、何か策でもあるというのか?出来るものなら是非やってもらいたいものだな。


 相変わらず朝っぱらから騒ぎを起こしてくれはしたが、今回は昨日の点を反省したのか『清浄』の範囲は冒険者達だけに収められていた。

 エリィ曰く、ノアはかなり街の人々に対して友好的らしい。筋の通った要求ならば素直に了承してくれるのだそうだ。


 早速指名依頼を片付けに行ってくれたようだな。順番としては図書館、魔術師ギルド、商業ギルドの順に回るらしい。あらかじめ依頼人達に連絡しておくとしよう。


 そういえば、本を複製する魔術に関しても、魔術師ギルドの職員達の中には興味を示した者達がいたな。後で感想を聞いてみよう。

 エリィから聞いた話では、大量の魔力を消費する魔術らしく扱える者は少ない、との事らしいが・・・。その大量に魔力を消費する魔術を使って、大量に二冊の本を複製したんだよな?どういう魔力量をしているんだ?

 初対面の時に気付いてはいたが、彼女は普段は魔力を抑えて行動している。それこそ、一般人よりも少し多い程度の魔力しか把握できないほど少量だ。


 非道いなんてものじゃないだろう。今のところ、ノアが人間達にとって非常に友好的だからいいものの、現実は国を容易く滅ぼせるような神話級のドラゴンが、こちら側の警戒網や防壁を全て素通りして街の中枢にいる状況なのだ。

 彼女がその気になれば容易に国の中枢まで人知れず入り込み、そこで力を開放して暴れる事すらできるのだ。


 もしそんな事が現実に起きようものなら、その時点で国全体がパニックになる。


 こうなればもう、彼女の性格、人柄を信用するしかない。情けない話だが、彼女の機嫌をなるべく良くして、この国を好いてもらう以外に、この国が助かる方法は無いだろう。



 ・・・あまり悲観するものでは無いな。現状は友好的な関係を築けているのだ。私はこの状態を維持し続ければ良いのだ。

 さて、図書館が出した本の複製依頼はそう時間を掛けずに終わらせてしまうだろう。のんびりとしていては例の魔術の解説に立ち会えなくなってしまう。

 魔術師ギルドの職員達が図書館まで移動するのに多少の時間がある事だし、私も今のうちに魔術師ギルドへと移動しておこう。


 ミネアの影響からか、魔術師ギルドの職員からは私がミネアの夫である事はほぼ全員に知れ渡ってしまっている。

 おかげで魔術師ギルドは顔パスで最上階まで移動できるのだが、私が冒険者ギルドのギルドマスターである事まではあまり知れ渡ってはいない。バレたら面倒臭い事になるのは必須なので、バレないように毎回ここでは気を遣わされる。


 最上階に到達してギルドマスターの執務室へと入室すれば、すぐさまミネアが駆け寄って来て私を抱きしめてくれた。

 ミネアの胸はとても大きい。彼女が私を抱きしめれば私の顔のほとんどが埋まってしまう。


 「ダァ~リーン、いらっしゃ~い!こうしてぇ~、仕事中に会えるのはぁ~、久しぶりねぇ~。」


 完全に顔の前面が彼女の胸で埋まってしまっているため、声を発する事は出来ない。首を縦に動かす事で私は彼女の意見に同意した。


 「ダーリンから聞いた話だとぉ~、図書館からの指名依頼はぁ~、あぁ~っという間にぃ~、終わっちゃいそうなのが残念ねぇ~。じっくりとぉ~、時間を掛けてくれればぁ~、この時間をじっくりと堪能できるのになぁ~。」


 それに関しては私も同意だが、ノアは私達の関係など知らないだろうから気を遣ってゆっくりと本を複製する事も無いだろう。おそらくは魔術師ギルドへと移動する最中に私とミネアの関係ぐらいは耳にするとは思うがな。

 さて、ミネアはノアに対してどのような感想を抱くのだろうな。



 想像していた以上にノアが使用した『我地也ガジヤ』なる魔術は驚異的な魔術だった。

 私の感覚として術者を一時的に極めて強力な魔法が使える状態へ変えているように感じられたのだ。

 

 どおりで魔術を使用した際の消費魔力が少ない筈だ。本当に魔力が必要なのはそこから先だったのだからな。これでは、大抵の魔術師はこの魔術を使いこなす事は出来ないだろう。当然、私も使用できそうにない。

 ミネアならば、発動させる事自体は可能だとは思うが、この魔術を十全に使いこなすには、操作する物質を深く理解している必要があるというのだ。人間にまともに扱えるような魔術ではない。

 ノアは、事前にそれが分かっていたからか、別の魔術を開発してきていた。今回の依頼では、この魔術を私達に教えてくれるようだ。


 我々に『我地也』が使いこなせないと事前に分かっていたからと、ガラスを生み出すための魔術を開発するとか、もう少し自重して欲しい。

 昨晩も聞いたが、何故たったの一日で新しい魔術を開発できてしまうのだ?

 しかもしっかりと目的に沿った魔術をだ。やはりノアの知能は、我々人間を遥かに凌駕しているとしか思えない。


 それはそれとして、この魔術はこの魔術で問題があるぞ。


 事の重大さをミネアもいち早く理解したようだ。このままこの魔術を魔術師ギルドで広めた場合、職人ギルドからどのような苦情が来るか分かったものでは無い。いや、苦情どころの騒ぎでは無いな。間違いなく争いが起きる。


 だが、そんな懸念もノアは想定済みだったようだ。彼女はガラスを生み出す魔術はおろか、ガラスの製法を詳しく知っていた。

 しかも『我地也』を用いてゆっくりと、そして詳しくガラスが出来上がる様を見せながら我々に説明してくれたのだ。

 ただし、その仕組みや製法を十全に理解した後に職人達にそれらを説明してやって欲しいと言われてしまった。


 無茶ぶりにもほどがある!流石のミネアも困ってしまっているじゃないか!

 だがしかし、職人達に先程の知識を教えれば、問題無く高品質なガラスを生産してくれるだろう。この街の住民ならば、この街の職人達の技術力がどれほど高いか理解しているのだ。

 ノアからの説明を受けて確信したが、彼等が品質の高いガラスを作れなかったのは、単純に知識不足なだけだったのだから。


 問題はその知識を国中の魔術師ギルドと職人ギルドに伝える事だ。一体この国にどれだけのギルドがあると思っているんだ彼女はっl?

 通信機を全力で作動させなければとてもでは無いが国中のギルドに拡散させる事など出来ないぞ。

 それに口頭だけでは伝わらない様な知識だってあるのだ。知識を伝えるために出張をするのは必須となるだろう。


 仕事が・・・仕事が山積みになっていく・・・!

 ただでさえ、アンタの事で仕事が増えているんだから、もう少し手加減をしてくれないか!?


 ああ、駄目だ。このドラゴン、手加減してコレだった。そして手加減の範囲はコレが下限らしい。後は私達で頑張れ、とでも言うつもりか!

 彼女が今日の指名依頼以降この街で依頼を受注する気が無いと言ってくれて本当に助かった。こんな調子で一週間活動を続けられでもしたら、私はストレスで倒れる自信がある。というか、その前にギルドから逃げる!


 ともかく、五時間にもわたる長時間、私達に丁寧にガラスを生み出す魔術とガラスについての知識を教えてくれたおかげで、今回の説明に参加した全員がガラスを生み出す魔術を習得することが出来た。勿論、私も習得できたとも。


 毎回心臓に悪い事をしでかしてくれはするが、基本的にやっている事は私達にとって極めて有益な事ではあるのだ。

 ただ、規模が大きすぎるせいで処理が追い付かないのだ。しかもそれを短いスパンで行ってくる。辟易とするのも当然だろう。


 依頼は達成扱いとなり、各々解散し始め、私がミネアと少し話をしようと思ったところでノアから声を掛けられた。


 「ユージェン、今晩時間をもらえないかな?冒険者達の衛生観念と識字率について話したい事があるんだ。」

 「分かった。時間を作っておくとしよう。」


 心臓に悪いから、本当に急に声を掛けるのは止めてくれ。跳び上がってしまうところだったぞ。とにかく、今晩もまたノアと対談する必要があるようだ。

 それも冒険者達の事についてだ。衛生観念はともかく、識字率は魔術言語の本を読ませるためだよな?つまり、『清浄』を習得させるためだ。彼女は余程、不衛生で悪臭を放つ冒険者達が気に食わないらしい。

 まぁ、この問題も片付けられるのならこちらとしても有り難いのは確かだが、彼女には既に何か案があるのだろうか?


 まぁ、今夜になれば分かる事だ。今はミネアにノアを見た率直な感想を聞くとしよう。ミネアがノアの正体に気付いたのであれば、周りに吹聴しないように注意しておかなければ。


 「ダーリン、お疲れ様ぁ~。ノアちゃん、凄かったわねぇ~。」

 「凄いの一言で片づけられてしまうミネアもなかなかだと思うよ。それで、ミネアは彼女をどう見る?」


 ノアに対する率直な意見を訊ねればミネアは周囲を確認して私たち以外に人がいない事を確認すると、先程までのにこやかな表情から、瞬時に深刻な表情へと変えて、静かに語り出した。


 「かなりヤバイわね・・・。ダーリンがあの娘の事を喋れない理由が、良く分かったわ・・・。」

 「口には出さないでくれよ?彼女は今のところ、私達に極めて友好的なのだ。可能であれば、このまま友好的な関係を築いていくべきだと私は考えている。」

 「そうね。アレ、人類が総力を掛けても無理じゃないかしら?怒らせたら、その時点で終わりね。」


 ミネアも私と同意見のようだ。ノアの戦闘力はハッキリ言って人類が何とかできるような存在では無い。それこそ、彼女一人で五大神の一柱と互角に戦えてしまえるんじゃないかと危惧してしまえるほどだ。


 「厄介な事に何がきっかけで逆鱗に触れてしまうのかが皆目見当がつかない。彼女は滅多な事では声を荒らげる事すらしていないんだ。」

 「声を荒らげた事、あるの・・・?」

 「早朝、ものぐさな冒険者達にな。どうも彼女は、不衛生な者達や約束を守らない者に対して辛辣らしい。」

 「なら、良い事じゃない。少なくとも、善良な性格であるのは間違いないんじゃないかしら?」

 「だからこそ、彼女の不興を買いたくはないんだ。ミネア、済まないが職人ギルドへは・・・。」

 「ええ、そっちは任せて頂戴。しっかりと彼等にも今私達が得た知識を披露して来るわ。ふふふっ、この国の文化レベルが一段上がりそうね。」


 それ自体は喜ばしい事なのだがな。ガラスで儲けを出しているのは職人達だけではない。

 職人達の中でも、特に優秀な職人達を抱える貴族もまた、ガラスによって利益を得ている者達なのだ。

 容易に高品質なガラスを生産できるとなれば、そういった貴族達の利益はがた落ちするのは、火を見るよりも明らかだ。


 確実に一悶着あるだろうな。尤も、ノアならばそんな貴族の介入など意にも介さないかもしれないが、周囲にいる者達はかなり気苦労を背負う事になるだろう。

 まぁ、単一の利益だけで生計を立てるような貴族など、底が知れている。いっそのこと、ノアに盛大にシバかれてしまった方が国のためになるのかもしれない。



 その後、ノアは商業ギルドの指名依頼を受けているわけだが、移動時間があるためか、結構な時間が掛かっているらしい。

 あのスケベ窟人ドヴァーク、結局彼女を食事に誘うらしいからな。昨日のうちにミネアを通してタニア女史に報告しておいたとも。せいぜい、痛い目に遭うがいいさ。


 そんな事よりも、だ。冒険者ギルドに帰って来てみれば、とんでもない事態になっていた。

 街の南側から大多数の魔物の大群が、この街に向けて進軍してきているらしいのだ。"上級ベテラン"冒険者の斥候が、先行して帰還して来てくれたおかげで知る事が出来たようだな。良くやってくれた!

 残った彼の一行パーティは、可能な限り魔物達の進行を遅らせるように奮闘しているのだと言う。無理をしていなければ良いのだが・・・。


 こうしてはいられない!急いで南門にて迎撃準備を勧めなくては!

 ええい、何故よりにもよって手練れの冒険者が軒並み"楽園"へ出向いている時に、こんな事態に陥るのだ!?

 文句を言っている場合では無いが、悪態の一つも言いたくなるというものだ!

 とにかく、まずは資材集めだ!



 迎撃準備が整う頃には結構な時間が過ぎていたが、何とか間に合ったようだ。魔物の姿はまだ見えない。足止めをしてくれていると言っていた"上級"冒険者達は無事だろうか?

 私が迎撃準備をしている最中に、ノアが冒険者ギルドに帰って来て、"初級"の冒険者と、報告のために帰還していた斥候を連れて、足止めをしている冒険者達の救助に向かったと聞いている。

 まさか、ノアがそこで魔物と戦っているのか?


 「ユージェンの旦那ァ!魔物共の姿はまだ確認出来ねぇんですかい!?」

 「ああ、『遠目』の魔術を使ってみても、魔物の姿は影もか〈ユージェン、今いいかな?〉っ!?!?」

 「だ、旦那ぁっ!?」


 ホンット勘弁してくれっ!!心臓が止まったらどうしてくれるっ!!思わず跳び上がって転んじまったじゃねぇかっ!?つーか、アンタ今どこにいるっ!?


 駆け寄ってきた顔見知りの冒険者に手を借りて起き上がる。驚いた拍子に解除されてしまった『遠目』の魔術をもう一度使用して辺りを見渡すと、かなり離れた位置からこちらを見つめているノアの姿を確認できた。

 ついでに足止めを行っていた"上級"冒険者達も同行して行った"初級ルーキー"冒険者達も全員無事だ。


 あんな距離からこっちの位置を正確に認識できるのかよ・・・。怖ぇよ!


 話を聞いてみれば、街に向かって進軍していた魔物達は一掃してきたとの事だ。

 何も告げずにいきなり姿を現したり、その場で告げても混乱するだけだと判断したらしく、私の姿を見つけたのを良い事に待機中の冒険者達への説明を頼まれてしまった。


 その判断は間違っていないがな、出来れば遠隔の連絡手段を持っている事それ自体を事前に教えてくれないか!?この年になってこんなにビビるなんて、夢にも思わんかったわっ!!


 だがまぁ、結果としては最良な結果に終わったんだ。当たり前のように魔物の死体も片付いているようだし、その点については素直に喜んでおこう。

 ついでだから今晩の対談の時間も知らせておこう。


 「みんなっ!ギルマスから連絡だっ!姐さんがやってくれたぞっ!魔物共は一掃されたっ!」

 「「「「「うおおおおっ!!流石姐さんだぜえええっ!!!」」」」」


 私の事がバレないように声色を変えて状況を伝えれば、冒険者達は皆して勝鬨を挙げていた。

 彼等は防衛依頼を受けた冒険者達だからな。既に報酬を受け取れる事は確定しているのだ。

 歓喜するのも当然だな。防衛依頼に出した報酬は受注者のランクよりも一段上のランク相当の額にしているのだ。労せずに大金が手に入れば喜ぶのは当然だろう。

 まぁ、こちらとしてもこういった時のために備えて溜めていた資金だ。それが何の被害も出さずにやり過ごす事が出来たとなれば、嬉しい気分になる。

 今夜は盛大に飲み明かすと良いだろう。私にはそんな余裕は無いがな!



 夕食を済ませて午後九時。ノアとの対談の時だ。果たして彼女は、冒険者達の衛生観念と識字率の改善に何らかの案を用意しているのだろうか?

 してそうなんだよなぁ・・・。それも結構突拍子もない奴を・・・。胃薬と頭痛薬飲んどこ・・・。



 ノアから提案された改善案は、こちらとしても一考の価値がある内容だった。


 最初に出された案については、世界中の冒険者ギルド全体に関わる事のため、私の一存で実行できるものでは無いが、識字率の悪さが冒険者の質を落としている要因の一つである事は間違いないのだ。時間を掛ければ将来的に昇級試験を取り入れる事が出来るかもしれない。


 感心したのは二つ目に出された案だ。よもや依頼を受ける側の冒険者ギルドの方から他の施設へ依頼して【冒険者に文字を勉強をさせる】依頼を発注してもらうとは・・・。

 冒険者と言う概念が頭に定着している我々ではなかなかできない発想だった。

 そしてその案はかなり有用だと私も思う。結局のところ、冒険者ギルドが金を払って冒険者達に文字を覚えさせるという事なのだが、そもそもギルド証というものはギルドがギルド証を持つ者の身分を保証するための物だ。

 ギルド証を持つ者達の面倒を見てやる義務と考えれば、納得も出来る。ギルド証を身分証として見ている割合が強いノアならではの発想だな。

 明日以降、早速行動に移すとしよう。明日も朝から忙しくなりそうだ。


 そして三つ目の案。私はこれが一番気に入った。なんと、冒険者ギルドの入り口に半永久的なトラップを仕掛けて条件に当てはまる者を施設の外へと弾き出すというものだった。条件と言うのは勿論、汚れている者であり、悪臭を放つ者だ。ギルドに入りたければ清潔にして来い、と言うわけだな。


 実に良いじゃないか!立場上出来るものでは無いが、是非あのものぐさ共がこの魔術によって弾き出されるところを直接見てみたいものだ!と言うか、この魔術、性能とは裏腹に構築陣はそれほど難しくない。私やミネアならば問題無く習得可能な魔術だ。しかも拡張性もある!私には出来そうも無いが、ミネアならば条件を変更して防犯用の魔術にすることも可能な筈だ!

 いきなりこんな魔術を作り出してしまう事には驚きを隠せないが、それとこれとは話は別だ。要件が終わったら早速入り口に施してもらうとしよう。


 やはり、ノアは友好的な関係を保つことが出来るのならば間違いなく有益な存在なのだ。絶対にこの関係は維持しなくてはな。



 それにしても、なんだかんだとノアはかなり面倒見がいい女性だ。正直なところ、冒険者達が彼女の事を"姐さん"などと呼ぶ理由も頷けてしまう。

 彼女にその事を伝えれば、少し困った表情をしながら小さく微笑んでいた。

 ノア、悪い事は言わないから、そういう表情はあまり人前で、特にダンダードみたいな女癖の悪い連中には見せないようにしてくれよ?大抵の連中はその表情を見せるだけで撃墜出来るだろうからな。

 まぁ、私はミネアがいるから通用しないがね。


 さて、要件も片付いたし、入り口に魔術を施してもらおうかと思ったのだが、ノアの方はまだ聞きたい事があるらしい。

 彼女の事だ。厄介な事を聞いてくるかもしれないから、あらかじめ機密になる様な事は答えられないと伝えておいた。


 正解だった。


 「本当に、この国は"楽園"からの資源で生計を立てているのかな?」


 またか!?また心臓が止まるかと思ったわ!


 アンタは一体どんだけ俺の心臓を驚愕で停止させようとするわけ!?そろそろマジで止まりかねないから、ホント勘弁してくれ・・・。

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