第76話 ドンドン片付けよう!

 依頼の内容をおさらいしてみよう。

 まずは配達依頼。荷物は既に受け取り、後は目的の村まで運ぶだけだ。場所は他の依頼の目的地の途中にある。先に届けてしまおう。この依頼は"初級ルーキー"ランクだ


 それから採取依頼と討伐依頼。これらはすべてが同じ目的地では無い。依頼を受けた目的地は二ヶ所。


 一つは洞窟。資源として鉄と銅を手に入れるための鉱石の採取が目的の、"初級"ランクの依頼だ。また、その場所には当然のように魔物が出現するとの事で、数減らしのための討伐依頼がこの場所だけで4件入っている。


 そしてもう一ヶ所は標高700メートルほどの小さな山だ。

 頂上付近で採取できる3種類の薬草の採取が残りの採取依頼だ。標高が低いためか登山の練習に若い商人が訪れたりもするが、ここでも魔物や魔獣は出現する。

 そういった戦闘力を持たない者に被害が出ないよう魔物・魔獣を一定数排除するのが残りの依頼だ。

 麓にいるような弱い種類は2種類、どちらも"初級"ランクで、中腹以降の対象は"中級インター"ランクの討伐依頼だ。

 ごく稀に"上級ベテラン"が一行パーティで対応すべき魔物が頂上で確認されたという事例があるが、一々対応をしていたら時間がもったいなそうだ。今回は出会わない事を願うとしよう。


 それぞれの場所は街からは村、洞窟、山の順で遠く、ほぼ直線上の位置にあるので、その順に向かっていけば良いだろう。

 エリィもその辺りを考慮して依頼を斡旋してくれたようだ。優秀な娘だ。



 そんなわけで、早速村まで到着した。

 多くの人々が住まう都市ですら私の、と言うよりも竜人ドラグナムという人種は珍しかったのだ。

 村人達からは大層驚かれた。ちょっとした騒ぎになったぐらいだ。


 非常に珍しい訪問者だったためか、手厚いもてなしを受けそうになったが、この村には荷物を届けに来た以外には用は無く、他にも依頼を受注している事を伝えたら、割とすんなりと引き下がってくれた。


 では、次だ。ドンドン行こう。



 洞窟に辿り着くとその入り口には、街から派遣された見張りの兵士が二人配備されていた。

 私が洞窟の入り口に近づいたら非常に慌てた様子で、私が洞窟に入るのを止めようとしてきた。


 私の服装を見て冒険者とは判断できなかったのだろう。

 無理もない。ギルド証以外は何も持っていないからな。ギルド証を見せて冒険者である事を伝えたら非常に驚かれるとともに、苦言を呈されてしまった。


 「いくらなんでもその格好は無いんじゃないか?」

 「もう少し冒険者らしい格好をした方が良いと思いますよ?それと、荷物を何も持っていないようですが、本当にここに採取と討伐の依頼を受けてきたんですか?ここの魔物は"初級"が一人で何とかなるような相手ではありませんよ?」


 と、訝しられてしまったので『収納』の実演と、その辺に落ちている手のひらサイズの石を軽く握り潰す事で砂に変えて、ある程度の実力を知ってもらう事にした。


 しかし、やはり手ぶらの状態でギルド証を見せるとどうにも怪しまれてしまうな。普段は自分の身分を手っ取り早く伝えるために、ギルド証は紐に括って首から下げているのだが、あまり有用な手段では無いのかもしれない。


 昨日西門で会話をした門番は、あまり周りに見せない方が良いとは言っていたが、ギルド証も『収納』仕舞って、提示する時に相手に『収納』を見せてやった方が怪しまれないかもしれないな。


 「「ええぇ・・・・・・。」」

 「とまぁ、大体これぐらいの事は出来るのだけど、それでも不十分かな?勿論、これが全力では無いから、これ以上の事も出来るよ?」

 「あっ、はい・・・大丈夫です。失礼しました・・・・・・。」


 分かってくれたようでなによりだ。

 納得というよりもドン引きという反応だったが。最早ドン引きされる事にも慣れたものだ。

 彼等の反応を見ても、まぁ、そうだろうな、という感想しか湧かなくなっている。

 気を取り直して、洞窟に入って依頼をこなしていくとしよう。


 洞窟の内部は、洞窟と言うよりも坑道に近い構造をしていた。

 図書館で読んだ本によれば、何でもはるか昔に錬金術師でかつ優秀な魔術師だった偏屈な変わり者が、この洞窟の奥地に引きこり生活を始めたそうだ。

 で、その変わり者は絶えず鉱石を入手出来るようにするために魔力さえあれば半永久的に鉱石が生成され続けるという、錬金術師どころか鍛冶師にとっても夢のような人工鉱床を複数作り上げたらしい。


 変わり者が没して長く経つが、彼が亡き後も彼が作り上げた極めて強力な守護者ガーディアンは機能を保ったままで、洞窟に入れば容赦なく始末されていたとの事だ。

 それからしばらくして臨時で組まれた"一等星トップスター"による複数の一行によって討伐される事になった。


 調査をしてみれば、変わり者が作り上げた人工鉱床は機能を維持したままであり、これ以降、この場所は昨日私が行った森と同様、国によって管理される事となりティゼム王国にとって資源を得るための重要な土地となった。


 はて、ここで一つの疑問が浮き上がって来た。

 昨日向かった森と言い、この洞窟の人工鉱床と言い、このような場所があればそれだけで国を十分に潤わせる事が出来ると思うのだ。それにも関わらずこの国は"楽園"から得られる資源によって生計を立てていると認識されている。

 騎士の日記、資料室の本からもその情報は間違いない。


 確かに森で採取した素材と"楽園"で得られる素材とではあまりにも品質も性能も違い過ぎるのかもしれない。だが、だからと言って無価値という筈は無いのだ。


 少なくとも、様々な鉱石を半永久的に入手する事の出来るこの洞窟は、それだけで国の財産になるだろう。でなければ国で管理する事にもならない筈だ。


 私一人で考えても分かる事では無いな。国の事は国の者に聞けばいい。

 エリィは・・・彼女には大変失礼だが、あまり望んだ回答が得られない気がする。非常に身勝手だが、私の偏見だ。

 聞くのなら、エレノアか商業ギルドの窟人ドヴァークが良いだろう。


 考察はそのぐらいにして、引き続き依頼をこなすとしよう。この洞窟に造られた人工鉱床は、一つの鉱床から取れる鉱石が確定している。

 つまり、決まった場所の鉱床へ行けば目的の鉱石が得られると言う事だ。そこで得られた鉱石をギルドから渡された袋いっぱいに詰めて持ち帰れば良い。

 依頼のランクが"初級"なのはそのためだろう。


 ただし、危険がまったく無いわけでは無い。半永久的に鉱石を得るためにこの洞窟全体を強い魔力が循環し続けている。

 その影響で、この洞窟は絶えず魔物が生まれ続けているのだ。


 魔物と魔獣の違いは獣かそうでないか、というわけでは無い。

 魔獣は元は獣である。強力な獣が大量の魔力を浴びる事によって体内に魔力を生み出す器官が作られ、肉体が変質していった者が魔獣だ。その生まれのルーツ上、どの魔獣も魔力が非常に高い。


 それに対して魔物は高密度の魔力が実態を持ち、変質した者達の総称である。故に、一見魔獣に見えても魔物がルーツであるような者も存在はしている。

 驚くべき事に、この魔力から産まれた魔物、繁殖が可能である。しかも魔物によっては異種族間ですら繁殖が可能である、と図書館の本に書いてあった。


 何処かで聞いた事のある生命体だ。

 無から、正確には魔力から産まれて他の生命体と繁殖が可能な生物。


 そう、ルグナツァリオ達が最初に生み出した生命体。魔族の祖だ。

 ルグナツァリオはこの星が魔力を生み出せるように作り替えたと言っていた。

 ならば、魔物という生物は、この星が生み出した命では無いだろうか?もしかしたら、私も・・・?


 流石に確認のしようが無い。今度ルグナツァリオに会った時に魔物の事だけでも"答え合わせ"をさせてもらう事にしよう。


 さて、依頼の話に戻るとしようか。

 鉱床から鉱石を得るだけならば容易なのだが、決して安全というわけでは無い。

 先程も述べた通り、絶えず魔物が生み出され、洞窟内を徘徊しているのだ。

 ちなみに、魔力を生み出す大元の装置が洞窟の最奥にあるためか、奥へ行くほどに魔物の強さが上がっている。放置しておけばたちまち魔物の巣窟と化すだろう。


 この洞窟の鉱床には、錬金術師や鍛冶師が自分で採掘に来る者もいるのだが、そんな彼等が魔物達の餌食にならないために、そして魔物の巣窟化を防ぐためにも、この洞窟の討伐依頼は常に置いてあるとの事だ。

 中には"星付きスター"が適正ランクの依頼もあり、殆ど常設依頼に近い扱いで依頼が発注されている。


 私が入り口から最寄りの鉱床、鉄鉱石の鉱床がある場所まで歩いていると、早速魔物の群れが押し寄せてきた。

 総数は18体、種類は依頼の内容通りコウモリ、ムカデ、ミミズ、モグラである。

 どの魔物も、私が最初から所持していた知識の中にある者達よりも遥かに巨大だ。

 名前も実に安直で、種族名の頭にジャイアントだのラージだのビッグと言った巨大を示す言葉が付いただけのものだ。

 分かりやすくていいとは思うが、もう少し何とかならなかったのか?


 ちなみに、ミミズだけはロックイーターという、比較的魔物らしい名前だった。

 まぁ、出現の仕方を見れば、石を食べながら移動している事は一目瞭然なので、結局このミミズもそのまんまな名前なのだが。


 本来、"初級"の冒険者が手ぶらでこの状況に対面したら、間違いなくその命を散らしてしまうだろう。

 だからこそ、入り口にいた見張りも慌てて私を止めたのだ。だが、今回この場にいるのは私だ。


 それでは、早速討伐していくとしよう。尻尾カバーに"成形モーディング"を施し、魔力の剣を成形させる。

 魔物達と私までの距離はまだ20メートルほどあるが、今現在周囲に人の目も無い事だし、遠慮なく尻尾を伸ばさせてもらおう。

 図書館で読んだ魔物達の急所に相当する場所に、魔力の剣を素早く突き入れる。

 鰭剣きけんで物を切った時と同様、抵抗は全く感じなかった。


 討伐の証明なのだが、これがまた驚いた事に、ギルド証がカウントしてくれているようなのだ。

 つまり、討伐対象の部位などをギルドに提示しなくとも規定数対象を討伐討伐してギルド証を受付に提示すれば、それで依頼完了だ。


 つくづく便利な代物である。正直、今の私では何をどうやったらそんな事が出来るのか皆目見当もつかない。

 いずれ魔術具の専門家と友好な関係になったら、その時に教えてもらおう。


 討伐した魔物の部位だが、場所によっては貴重な素材となり、各ギルドで買い取ってくれるのだ。

 依頼達成回数には関係は無いが、奪った命は極力有効活用させてもらおう。

 死体を綺麗に解体して、本で読んだ素材になる部位を『我地也ガジヤ』で作製したガラスの容器にそれぞれ保存していく。

 素材にならないような部位は・・・うん、このまま『我地也』を使用して地中に埋めてしまおう。


 どの魔物も、規定数にはまだまだ足りない。だが、洞窟には入ったばかりだ。鉄鉱石と銅鉱石、それぞれの鉱床まで移動している間に十分な数と遭遇できるだろう。


 鉄鉱石の鉱床のある場所までたどり着いた。

 残念ながらまだ討伐数はどの魔物も依頼達成までの数を討伐できていない。

 後2回ほど魔物の群れに遭遇できれば依頼達成となるんだが、銅鉱石の鉱床に着くまでに遭遇できるだろうか?


 まぁ、方法が無いわけでは無い。討伐対象の魔力反応は既に把握している。

 向こうから来ないのであれば、此方から向かえばいいだけの話だ。鉱床までたどり着いたんだ。今は採掘に専念しよう。


 鉱床はドーム状の大きな空間に、イスティエスタの一般的な住居と同じぐらいの大きさの岩があり、その岩から枝が生えていくように所々から鉄鉱石が尖った状態で鉱床から突き出ている。

 明らかに本来の鉄鉱石の在り方じゃない。まぁ、これを作った変わり者が鉱石を半永久的に入手するために造ったんだ。自然と同じような環境じゃないのも当然だな。


 鉱石の回収は突き出ている鉱石をつるはしの類を用いて砕いてしまえばいいらしい。しかも放っておけばそれこそ芽が出るように再び同じ場所から鉱石が生えてくるというのだ。


 砕いて回収しても問題無いのだが、一々拾い上げるのが面倒臭いな。かと言って魔力の剣で鉱石を切り裂いた場合、私の魔力が鉱石に悪さをする可能性が高い。


 というわけで、鰭剣を使う事にしよう。尻尾カバーを取り外して、鉄鉱石の根元の部分を鉱床のスレスレの位置から鰭剣を滑らせる。

 やはりまるで抵抗を感じる事なく鉄鉱石の塊を切り取る事が出来た。久々に使った気がするが、相変わらずとんでもない切れ味だ。


 袋に鉄鉱石を入れようと思ったが、この綺麗な切断面を見せたら何か言われそうだと気付き、鉄鉱石の塊を手ごろなサイズに手で砕く事にした。

 こんな事なら手刀でも当てて、根本をへし折った方が良かったな。

 袋にはまだ余裕があるし、次からはそうしよう。鰭剣に尻尾カバーを被せ直した。


 鉄鉱石の採取が終わり、銅鉱石の鉱床へ向かう途中、魔物の群れに2回遭遇する事が出来た。


 そのおかげでコウモリ、ムカデ、ミミズは規定数討伐する事が出来たのだが、モグラの討伐数だけは一体足りなかった。

 仕方が無いので銅鉱石の採取が終わった後にでもモグラの魔力反応を辿って、一体だけ討伐させてもらう事にしよう。


 銅鉱石の鉱床も、外見的には鉄鉱石とほとんど変わらない。強いて言えば鉱床の色が灰から茶になったぐらいか。


 今度は最初から銅鉱石の塊を根元の近くを手刀でへし折り、袋へと詰めていく。

 塊のまま袋へと入れているため、かさばってしまい、手ごろなサイズに砕いた時よりも数が少ないと思い、一つ余分に銅鉱石の塊を『収納』に保存する事にした。


 銅鉱石の採取が終わってもモグラが近づいてくる気配が無かったので、此方からモグラの元まで向かい、少し離れた所から、尻尾で頭部を軽く叩き付けた。


 ギルド証を確認してみれば討伐完了となっていたので、斃したモグラをこちらまで手繰り寄せて解体して『収納』へと仕舞った。


 これで洞窟の依頼は完了だ。今度は山へ向かうとしよう。


 洞窟へ出た際に呼び止められて依頼の進捗を聞かれたのでギルド証を見せて討伐が終わった事を確認してもらった。

 相変わらずドン引きされたが、まぁ、"初級"冒険者がこの洞窟に入って短時間(体感時間で約20分)で複数の討伐依頼を終わらせて出てきたのだ。相手からすれば、さぞ訳が分からない事だろう。


 だが、私の実力は既に一部の者には"一等星"と同等と認められているのだ。この程度の事は隠す事でもないだろう。

 例えそれでドン引きされる事になったとしても素直に受け入れよう。


 洞窟から離れて、山までは軽く駆け足で向かう事にした。




 目的地に到着した。洞窟から山に到着するまでに掛かったのは大体一分ぐらいか。

 普通に歩いた場合、大体一時間ほどかかるといったところか。まぁ、いい。山での依頼を再度確認しよう。


 採取依頼の内容は頂上に生える三種類の薬草、それぞれ根を残した状態で10本ずつ採取する。薬草の効能は家庭用傷薬、解熱剤、滋養強壮剤の三つだ。


 これらの薬草は非常に生命力が強いらしく、8割ほど根が残っているならば、再び成長して瞬く間に茎を伸ばしていくらしい。

 ただ、その生命力と成長速度が原因で他の植物の栄養を奪う傾向があり、下手に栽培をしようとすると、辺り一面がこれらの薬草で埋まってしまうそうなのだ。


 あえて環境を厳しくする事で成長に制限を掛け、定期的に採取する事によって安定した薬を供給する事が可能になっているのだとか。


 この薬草の採取自体は非常に容易ではあるが、場所が"中級"の冒険者が対応するような魔物・魔獣の生息地な上、標高が低いとは言え、山の頂上まで昇る必要があるため、依頼のランクも"中級"扱いになっている。


 討伐依頼は中腹以降に生息している植物型の魔物と大鷲の魔物だ。


 植物型は周辺の樹木に擬態していて、獲物が近づくと蔦で対象の動きを封じた後、硬質化した枝で叩きつけて命を奪う、邪木鬼じゃぼっきという魔物だ。

 殺した命はそのまま自分の根元において養分にするらしい。

 話だけ聞けば恐ろしい魔物に感じるが、実は周囲の魔力反応とはまるで反応が異なり、魔力を感知する事が出来れば容易に見分けがつくのだ。

 そのうえ、樹木のためかどうしても火に弱い上に遠距離攻撃手段を持たないため、識別が出来れば討伐は比較的容易に討伐が可能だ。火矢でも打ち込めば一撃で斃せる、との事だ。

 それほどまでに燃え易く、それでいて長時間燃え続けるため、邪木鬼は薪として重宝され、寒冷地ではそこそこ高値で取引されるらしい。

 私の場合は討伐に火を使う必要は無いだろうから、存分に薪として回収させてもらおう。


 大鷲の魔物は、これまた安直にエビルイーグルと呼ばれる魔物だ。

 高所であるならば世界中のどこにでも生息しているらしく、大抵の場合は生息している土地、ないし国の名前、もしくはそれをもじった単語がこの魔獣の頭に着く。

 今回ならは"ティゼミアンエビルイーグル"がこの大鷲の正式名称だ。

 世界中に生息している事から、行動範囲も繁殖力も非常に高いと言われている。

 獲物の頭上を通る際に魔術によって影を操る事で獲物を拘束し、上空から風の魔術を確実に当てる戦法を得意としている。

 飛行速度も同じランクの魔獣の中ではかなり早い部類のため、移動中は動きを捉えるのが難しい魔獣だ。


 これだけ聞けば邪木鬼同様、厄介な相手に聞こえるが、実のところ遠距離攻撃手段を持ち、ある程度狙いを付けられるのであれば脅威度はかなり低い。

 何故ならば、エビルイーグルの放つ風の魔術は"中級"の冒険者が装備を整えれば十分に耐えられるほど威力が低いうえ、魔術で攻撃するときは相手が移動を制限されているのを良い事に、その場で停滞してしまうのだ。

 要するにお互い的になってしまっているのだ。仲間がいるのならば、自分を攻撃している最中に撃ち落としてもらえばいい。


 そんなエビルイーグルだが、巣がどこにあるのかは未だに判明していない。

 エビルイーグルの肉自体は、大きいうえに脂が良く乗っていて美味いらしいので、きっと卵も大きくて美味いだろう、と美食家達が想像を膨らませているそうだ。


 もしもエビルイーグルの卵を見つける事が出来れば確実にオークションに出され、最低でも数十枚の金貨が飛び交う事になるだろう、と図書館の本には書かれていた。

 そんなグルメ的にも金銭的にも旨そうなエビルイーグルの卵に興味が無いわけでは無いが、間違いなくこの辺りには卵はおろか巣も無いだろう。素直に規定数討伐する事にしよう。



 そんなわけで、現在は邪木鬼とエビルイーグルを討伐しながら山頂まであと少しと言ったところだ。どちらも規定数まで討伐は完了している。

 素材の買い取りは自由に選べるというので、一羽は宿の主人に提供して鶏肉の料理を作ってもらう事にしよう。ああ、夕食が楽しみだ。


 そんな風に、上機嫌で山頂のに到着すると、そこには、全長6メートルほどの巨躯を誇る、前足の代わりに翼を持った巨大な蜥蜴が鎮座していた。


 そう。ごく稀に確認されるという"上級"の冒険者が必ず一行で対応すべきと言われるほど危険度の高い魔物、翼竜・ワイバーンである。

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