ボッチのグルメ 前編
タコさんウインナー。
お弁当に入っていると何故かうれしい。そう、今日はお父さんが出張に行くついでに、お母さんがお弁当を作ってくれたのです。
閑話休題。
しかしお弁当、久しぶりのこの感じ。
いつもはパンやらで適当な昼ごはんだが、こうしてお弁当箱を前にするとなぜか緊張する。
家庭の色が垣間見えてしまうからか、それとも気恥ずかしさからか。いずれにせよ、私にとってお弁当とは特別なものなのである。
「ぶおーん、俺は人間火力発電機だー」
「うぉお!? ってメタ子かよ」
いつの間にか背後についてやがる。こいつ気配消すのだんだん上手くなってないか?
「うわーお弁当だね!」
「お、おう」
「ウインナータコさんだ! 卵焼き美味しそー」
「ちょっ、ちょっと静かに! 恥ずかしいなぁもう」
相変わらずクラスの視線を集めてくれるな。
「じゃあ任せて」
「え?」
「梨々香が食べて、私がモノローグを担当するから」
「え? いや、え?」
「いいからホラ、お箸持って!」
「…………」
「おほん!」
わざとらしい咳払いの後、スンッと表情をフラットにしたメタ子。
一体何が始まるのかとドキドキしていたが、私が箸を持った瞬間、メタ子の口からオジサンみたいな声が溢れた。
『そうそう、これこれ。こういうので良いんだよ』
(!?)
『タコさんウインナー。ふふ、俺、案外好きなんだよなー』
(まさか、これは!)
説明しよう。メタ子が演出しているこの謎のモノローグは知る人ぞ知るあの有名番組【孤独のグ◯メ】である。
私もボッチ故に孤独繋がりで好んで見ているが、メタ子は私のお弁当を食べる姿でそれを再現しようとしているのだ。
(コイツ、なんて無茶を)
こう見えて私はseason 1〜9までたまに見返すくらいにはヘビーな視聴者だ。
あの独特の間、そこから繰り出されるワードセンス。一朝一夕で身に付く様な甘いものではないぞ?
こうして、第一回【ボッチのグルメ】が幕を開けたのだ。
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