つかれた!

「わたしゃつかれたよ梨々香」

「へぇ、そりゃタイヘンだね。でもなんで日曜の夕方アニメみたいな喋り方なの?」


 トイレから帰ってくるとメタ子が寝ていた。

 おいおい、お前が覆い被さっている机は私のだ。私だけの聖域、ジャスティス、全てをそこに置いているんだ。

 おいそれと勝手に使わないでくれたまえ。


「どうしよう梨々香、つぅ〜かぁ〜れ〜たぁ〜のぉ〜」

「んじゃ帰れよ。もう放課後じゃん」


 クラスに残っているのは私とメタ子のみである。

 みんな部活やらで出払っており、私は帰る前に夕焼けを見ながらボーッとしてやろうとしていた。

 こんなんでも勉強は熱心にしている。授業中に寝れない反動は夕方に来るのだ。夕方が見せるカタルシスに惚ける。

 なんて私らしい過ごし方!


 閑話休題。


「うーん、でもなんか顔色も良くないな? 寝不足か?」

「ん〜、昨日はよく寝たよ? だから言ってるじゃん、つかれただけだって」

「寝たのに疲れが取れないとか不憫な奴め。私は寝たら元気いっぱいだ」

「ボッチなのに?」

「殴るぞてめぇこのヤロー」

「ううう〜」

「……わふあ」


 言ってる側から眠たくなる。コイツとの不毛なやり取りは眠気を助長させやがるぜ。


「……つか寒いね。メタ子、窓閉めてよ」

「窓なら閉まってるよ?」

「は? だって冷たい風が吹いてんじゃん」

「いやホラ」


 メタ子の指の先を見ると、確かに窓は閉まっていた。そりゃもうピッタリと、少しの風も許さないほどに。


「え……どゆこと?」

「だからずっと言ってんじゃん」

「?」


 視線を上げると、メタ子の背後がユラッと揺蕩う。


「……わぁお」


 次の土曜日、私は即行でメタ子をお祓いに連れてったとさ。

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